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シャオえる

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45. 失っても残すべきもの

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 会議室の扉を開くと、険しい表情でこちらを見る上層部の老人達。全員の視線を苦笑いで受け流して、空いていた席に座り、一つため息ついた
「遅いな……もう会議はとっくに始まっているが……」
「すみません。バタバタしてたもので」
 隊員から資料を受けとり目を通すと、レイがミクの魔力を無理やり上げた時の詳細が書かれていた
「まあいい。では、話の続きを……」
 と、レイがまだ資料を読んでいると再び会議が始まり、若い隊員達に緊張感が走る

「本は、今はまだあの娘のなかにあると……」
 と、ちらりとレイを見ながら話をする。視線に気づいて、資料を机に置くと、話しかけてきたその人の方を見る
「ええ、本人も多分気づいているとは思いますが、無意識に見て見ぬふりをしている、という所でしょうか」
 レイの報告を聞いて、ヒソヒソと話はじめた上層部の老人達。話し声が聞こえず、若い隊員はうろたえ戸惑っている
「……では、気づかれる前に、急ぎ本を取らねばならないな」
「そうだな。我々が欲しいのは真っ白な本。書かれてしまっては何の無意味もない」
「それに、あの娘は本の一族の末裔。しかもうたを唄う一族の娘とも聞く。これ程の能力に満ちた子は他にない」
 とミクの話が続き、少し静まり返る会議室。すると、レイの向かいに座っていた老人が、会議の話しに興味無さそうに再び資料を読みはじめたレイに気づき、声をかけた

「……どう思うかね。レイ」
 と、急に意見を求められ、思わずフフッと笑ってしまう
「なぜ、私に聞きます?」
「あの娘は、君の姪ではないかと、かねがね本部内で噂になっているのでな」
 と、笑い話す老人に合わせるようにまた笑うレイ。二人の掛け合いに、若い隊員達が息を呑む

「まあ、本の一族自体、昔から身勝手で秘密主義な一族だからな。ここにいても何の不思議もない。それに……」
 と、呟くようにレイに話しかけると同時に、キィと椅子の音が鳴り、皆の視線が一斉に向かうと、持っていた資料をパサッと机に置いた
「もし、仮に君が本を持っているとしても興味はない。我々が欲しいのは、あの娘の持つ真っ白な本。ただそれだけだ」
「あんな本に、それほどの価値がありますかね?」
 と、レイが言った言葉に少しざわつき始める会議室。そのざわつきを止めるように、誰かがコホンと咳払いをした。再び静かになった会議室に、ずっとレイや隊員達のやり取りを黙って聞いていた部屋の一番奥に座る老人が、レイに向かって、不敵に微笑んだ
「もちろんだ。あの娘の命、失したとしても本だけは残さねばならない。この魔術本部と我々のために」
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