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65. 失われた過去と力
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「そうか、元気で帰ってきたのか。それは良かったじゃないか」
「まあ、そうなんですけど……」
寝ているミクを見て笑いながら話すレイに、リコがテンション低く返事をする。ミクが枕にしていたはずの本が、顔の側に移動されていた本を取ると、パラパラとページをめくり、一番目のページから数ページ程、たくさん書かれた文字や絵、数字等に目を止め、グッと歯を食いしばった。険しい表情で本を見ているレイに、リコ達が三人顔を見合わせている
「あの……この本って何なのですか?ミクに、うたの力もあるって言ってたけど……私、ミクの為に、本の事を知りたいんです!」
ソファーから立ち上がり、レイに向かって叫ぶリコ。叫び声を聞いて、一瞬リコを見るとパタンと本を閉じたレイ。その動きに、思わず一歩後ずさりするリコ。だが、本を見つめたまま何も言わず動きもしないレイ。三人も無言のままレイの様子を見つめている
「この本は、本を語り継ぐ一族の本だ。今となってはあまり存在しないが、昔はあちらこちらに、本を書くため各地で一族が人知れず、ひっそりと住んでいた」
と、本を見つめながら、ゆっくりと語りはじめたレイ。語りはじめた内容に、首をかしげ戸惑うリコ。クルミとモモカも、その内容に不思議そうな表情をしている
「この本は歴史や占いで見た未来、その地域にある特殊な魔術を書いたりと様々な本として、この魔術本部でも大変重宝されていたんだ」
「でも、こんな本は、古い書庫でも見たことないです」
「そうだな。大分昔に置いておくのは危険として、世界中にある本は、殆ど燃やされたからな」
クルミの疑問にそう答えると、また本を開きページをめくると、ため息をついた
「この本は、普通の本とは違う。誰でも魔術が使えるようになる本だ」
「この世界は誰でも魔術は使えますが……」
今度はモモカがレイの話に疑問を問いかけると、言い返すことなく、無言になったレイ。リコ達も、黙り込んでしまったレイを無言で見つめている。静かになった部屋には、ミクの寝息が聞こえている
「リコは水の魔術が得意だな。そして、火の魔術は使えないな。クルミはその逆であっているな」
「……はい。そうですが」
「仮にこの本が、火の魔術の本とする。リコが本の通りに、火の魔術を行えば、使えるようになる。もちろん、クルミが本の通りに水の魔術を行えば、使うことも可能になる」
「ありえません。相反する魔術を使うなど、聞いたことがないです」
レイの話に、食いぎみに反論するクルミ。リコとモモカがクルミの話を聞いて頷いている
「そう。だからこそ、みな一族の描く本を欲した」
「突如、各地で本の奪い合いが起きた。誰にでも、どんな魔術が使えるようになるこの本を。それは、本や一族とは関係のない人々さえも問わない世界を巻き込んだ争いを起こしてな。その争いで一族の殆どが行方不明になったんだよ」
淡々と話続けるレイに、リコ達がうろたえはじめた
「そんな話、聞いたことありません……」
「そうです!魔術学校でも、本部の授業でも聞いたことないです!」
モモカが戸惑いながら呟きリコもレイに語気を強め反論すると、レイがフッと笑って、リコの反論に答えた
「それはそうさ。最初に争いを起こしたのは、魔術本部だ。一族の歴史や、本部の指示通りに争いに参加した魔術学校の過ちを、抹消することなんて容易い。だからこそ、魔術本部が、今さらまた欲しいと思っても、昔を知る年寄り達は、迂闊に本に近寄れない。争いや本の力を知っているからな」
一通り答えると、話を聞いて呆然としているリコ達を見たレイがまた笑う。そのクスッと笑ったレイを見て、ハッと我に返ったリコがクルミとモモカを見た
「だから、私達の下っ端ばかりに、本を探させたんじゃ……」
「まって、ミクちゃんが街を知らないのも、魔術を使えなかったのも……」
「うたの力も、本とおなじ……」
三人がレイを聞いて、思い思いに呟いていると、レイがミクの眠るベッドの端に座り、話疲れたのか、ふぅ。とため息ついた。その側に、ミクの寝相で蹴飛ばされていた絵本を見つけて、読みはじめたレイ。ページをめくり物語が始まると、リコ達も物語の動物達や登場人物達が動き、始まった物語を見ていると、視線は絵本に向いたまま、レイがリコ達に話しかけた
「うたについては、少しお茶でも飲んで話そうか。すまないが、お茶を持ってきてくれ」
「まあ、そうなんですけど……」
寝ているミクを見て笑いながら話すレイに、リコがテンション低く返事をする。ミクが枕にしていたはずの本が、顔の側に移動されていた本を取ると、パラパラとページをめくり、一番目のページから数ページ程、たくさん書かれた文字や絵、数字等に目を止め、グッと歯を食いしばった。険しい表情で本を見ているレイに、リコ達が三人顔を見合わせている
「あの……この本って何なのですか?ミクに、うたの力もあるって言ってたけど……私、ミクの為に、本の事を知りたいんです!」
ソファーから立ち上がり、レイに向かって叫ぶリコ。叫び声を聞いて、一瞬リコを見るとパタンと本を閉じたレイ。その動きに、思わず一歩後ずさりするリコ。だが、本を見つめたまま何も言わず動きもしないレイ。三人も無言のままレイの様子を見つめている
「この本は、本を語り継ぐ一族の本だ。今となってはあまり存在しないが、昔はあちらこちらに、本を書くため各地で一族が人知れず、ひっそりと住んでいた」
と、本を見つめながら、ゆっくりと語りはじめたレイ。語りはじめた内容に、首をかしげ戸惑うリコ。クルミとモモカも、その内容に不思議そうな表情をしている
「この本は歴史や占いで見た未来、その地域にある特殊な魔術を書いたりと様々な本として、この魔術本部でも大変重宝されていたんだ」
「でも、こんな本は、古い書庫でも見たことないです」
「そうだな。大分昔に置いておくのは危険として、世界中にある本は、殆ど燃やされたからな」
クルミの疑問にそう答えると、また本を開きページをめくると、ため息をついた
「この本は、普通の本とは違う。誰でも魔術が使えるようになる本だ」
「この世界は誰でも魔術は使えますが……」
今度はモモカがレイの話に疑問を問いかけると、言い返すことなく、無言になったレイ。リコ達も、黙り込んでしまったレイを無言で見つめている。静かになった部屋には、ミクの寝息が聞こえている
「リコは水の魔術が得意だな。そして、火の魔術は使えないな。クルミはその逆であっているな」
「……はい。そうですが」
「仮にこの本が、火の魔術の本とする。リコが本の通りに、火の魔術を行えば、使えるようになる。もちろん、クルミが本の通りに水の魔術を行えば、使うことも可能になる」
「ありえません。相反する魔術を使うなど、聞いたことがないです」
レイの話に、食いぎみに反論するクルミ。リコとモモカがクルミの話を聞いて頷いている
「そう。だからこそ、みな一族の描く本を欲した」
「突如、各地で本の奪い合いが起きた。誰にでも、どんな魔術が使えるようになるこの本を。それは、本や一族とは関係のない人々さえも問わない世界を巻き込んだ争いを起こしてな。その争いで一族の殆どが行方不明になったんだよ」
淡々と話続けるレイに、リコ達がうろたえはじめた
「そんな話、聞いたことありません……」
「そうです!魔術学校でも、本部の授業でも聞いたことないです!」
モモカが戸惑いながら呟きリコもレイに語気を強め反論すると、レイがフッと笑って、リコの反論に答えた
「それはそうさ。最初に争いを起こしたのは、魔術本部だ。一族の歴史や、本部の指示通りに争いに参加した魔術学校の過ちを、抹消することなんて容易い。だからこそ、魔術本部が、今さらまた欲しいと思っても、昔を知る年寄り達は、迂闊に本に近寄れない。争いや本の力を知っているからな」
一通り答えると、話を聞いて呆然としているリコ達を見たレイがまた笑う。そのクスッと笑ったレイを見て、ハッと我に返ったリコがクルミとモモカを見た
「だから、私達の下っ端ばかりに、本を探させたんじゃ……」
「まって、ミクちゃんが街を知らないのも、魔術を使えなかったのも……」
「うたの力も、本とおなじ……」
三人がレイを聞いて、思い思いに呟いていると、レイがミクの眠るベッドの端に座り、話疲れたのか、ふぅ。とため息ついた。その側に、ミクの寝相で蹴飛ばされていた絵本を見つけて、読みはじめたレイ。ページをめくり物語が始まると、リコ達も物語の動物達や登場人物達が動き、始まった物語を見ていると、視線は絵本に向いたまま、レイがリコ達に話しかけた
「うたについては、少しお茶でも飲んで話そうか。すまないが、お茶を持ってきてくれ」
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