ぱすてるランページ

シャオえる

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66. 気づいた時には、願ってもない事だらけ

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「もうじき朝か……」
 いつの間にか夜空が少し明るくなっていた頃、リコ達が話をしているのに気づいていないミクはまだ熟睡中。そんなミクを囲うように、のんびりとお茶を飲むリコ達。温かいお茶を飲んで、少し気持ちが落ち着いてきたリコが、レイにゆっくりと話しかけた
「あの……レイさん……」
「日が出る前に、元いた部屋に戻すように。居なくなったと気づかれると面倒だからな」
 話しかけたリコの言葉を止めるように話はじめたレイ。話に割り込まれ、何かを言おうとしていたが、黙ってしまったリコ。二人のやり取りでクルミとモモカも無言になり、部屋が更に静かになった

「あの……」
「うたの一族は、その名の通り、うたの力を持つ一族だ。うたを唄うことで、魔力が爆発的に上がり、強力な魔術が使えると言われている。だが、なぜうたで魔力が増えるかとは解明されていない、謎の一族と言われている」
「それも……」
「聞いたことがない。それはそうだ。元々少ない一族だったが、さっき言った本の争いに、本部が無理矢理巻き込んだからな」
「そんな……」
 リコの話を何度も止めるように、話をするレイ。全て聞きたいことを言い返されたリコ。レイから目を背け、うつ向いてしまった


「レイさん、ミクは……」
「本といい、うたの力といい。確実にその二つの一族の娘だな」
 クルミの話も遮って淡々と話すレイに、リコが目に涙をためて、詰め寄っていく
「レイさんは……。ミクのこと、うたや本のことを知っていたんですか?」
「ああ、知っていた」
「どうして、止めなかったんですか?危ないって分かってて、ミクの魔力を上げるなんてこともしたんですか!」
「そうだ」
「そうって……なんで……!」
 リコにも顔色変えず、淡々と話すレイに向かって泣き叫ぶリコ。その大声に慌ててクルミとモモカが、寝ているミクを見た。声に気づかず、ぐっすり寝ているミクを見て、ホッとため息ついたモモカがリコを後ろから抱きしめて、どうにかリコの気持ちを落ち着かせようとしている

「本を書かせるためだ。本部は何も書かれていない真っ白な本が欲しいんだ。一文字でも書けば、不必要と手放すだろうとな。だが、やはり本部にとっては、二つの一族の娘と言うのは魅力的らしい」
 レイもミクを見て、ため息混じりで話しをしていると、リコがモモカから離れて勢いよくソファーに座り、グスグスと泣きはじめた

「でも、こんな危ない本を……こんな小さいミクに……」
「元々この本自体は、誰でも何でも使える魔術の本という認識ではなく、さっきも言った通り、歴史を書いたり、見た未来を書いて、村や人々の平和を願っていたんだ。とても危険な本というわけではない」
「でも……それでも……」
「だったら、早くに歴史を書いたり、未来を書かせていたら……」
 納得がいかないクルミとモモカが、声を殺してそう呟いていると、二人の話が聞こえていたのか、ミクの本を取りながらレイが二人の呟きに答えるように、話はじめた

「何も書かれていない、真っ白な魔術の本が欲しい人々が、それで、納得すると思わなかったからな。目の前で魔術を書いてしまった。という事実が必要だったんだ」
 レイの説明を聞いても、まだ不満そうな表情をしているリコ達。そんな三人を横目に、レイがミクの本を二冊とも持ったまま、窓の方へと歩いていく
「そろそろ行くぞ。監禁されていた場所まで案内する。起こさないように気をつけてな」
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