ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
91 / 109

91. 本当は嫌で駄目だけど

しおりを挟む
「失礼します。朝早くから、すみません。皆さん、レグスさんが呼んでいます。申し訳ありませんが、今から会議室に来てください」
 朝も早くからの隊員の呼び出しに、寝惚けつつ話を聞くリコ。クルミとモモカが少しボーッとしながら、ソファーに座ってリコの様子を見ている
「みんなって、ミクも?」
 リコに名前を呼ばれて、一瞬ビクッと反応するミク。不安から布団に潜って隠れてたミクに、モモカがそっと寄り添う
「はい。もちろん、本も持ってくるようにと」
「わかった。でも、ミクも今起きたばかりだから、もう少ししたら行くよ」
「了解しました」
 一通り話を終え、隊員がお辞儀をするとゆっくりと扉を閉じたリコ。扉から背を向け、ふぅ。とため息ついて、モモカに抱きついていたミクの隣に座った
「ミク。レグスさんと会っても大丈夫?」
「大丈夫です。皆さんも一緒ですから」
 リコの質問に、小さく頷き答えるミク。モモカを抱きしめていた手を離し、リコと見つめあう
「でも、書庫に行ったことは内緒ね。もし聞かれても内緒」
「はい。頑張って秘密にします」
 ミクも笑顔で返事をすると、返事を聞いてリコがミクの頭を優しく撫でた
「ありがとう。それじゃあもう少し休んでから行こうか」




「おはよう。ご機嫌はいかがかね」
 会議室に着くと、前回、魔術練習場に呼ばれた時と同じように、機嫌の良さそうなレグスと機嫌の悪そうなレイがいた
「おはようございます。機嫌はいいです」
 レグスに元気よく返事をすると、ミクの笑顔を見てレグスがクスッと笑う
「それは良かった。昨日は体調が悪いと聞いていたが、無事で何よりだ」
 ミクに気遣う言葉を、無言で聞くレイ。雰囲気の違う二人の様子に戸惑うリコ達。少しずつ部屋の雰囲気が変わっていくのを感じたミクが戸惑いはじめた時、レグスが一つため息ついた

「さて、早速だが……」
 さっきまでの機嫌の良さそうな声から一変し、重々しい雰囲気で話はじめたレグス。声を聞いて、一歩後ろに下がると、後ろにいたモモカに背中が当たった
「今、魔術本部は、本の力を欲している」
 リコ達の不安をよそに、レグスはミクの持つ本を見つめ、話はじめた
「そう、君の持つ本。その本の何も書かれていない真っ白な本が欲しいんだ……」
「あの……」
 楽しそうにレグスが話していると、リコが突然話に割って入ってきた。全員の視線を浴びながら、恐る恐るレグスに問いかけた
「どうして、何も書かれていない真っ白な本が欲しいんですか?」

「ダメだけど……これはミクの大切な本だから、この本だってダメだけど、けど、本が欲しいならこれでも……」
 リコの質問を聞いたレグス。返事を言わず、リコにフッと笑うと、黙って聞いていたレイの方を向いた
「だそうだが、レイ。君はどう思う?」
 と、レグスに声をかけられたレイ。不安そうにこちらを見ているリコ達を一瞬見た後、ため息まじりにレグスの問いかけに答えた
「そうですね。瞬間的に移動するという魔術は、本部の上級魔術師でも使える者は限られています。なので、リコの言う通り、その本でも、十分かと……」
 レイの答えを聞いて、ミクが大事そうに抱えている本ち目を向けたレグス。その視線に気づいたミクがクルミの後ろに隠れた。ミクの慌てる姿を見ていたレグス。ミクの気持ちを知る目に、ゆっくりと近づいてくる
「そうか。だが、私の本来の願いとは違う。やはり君の作り出す本を貰わなければならないんだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...