ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
92 / 109

92. お互い思いが違うがゆえに

しおりを挟む
「でも、私、本なんて……」
 恐る恐るレグスに言い返すミク。その言葉にクルミの後ろにいるミクに向いたレグスが、少し言葉強めにミクに言い返した
「作れなさそうなのは分かっている。だからこそ、君の能力を知らねばならないし、本のことも、もっと知る必要がある」
 レグスの言葉に、何も言えず無言になったリコ達。レイも何も言い返さずにいると、話し合いが静かになってしまい、レグスがはぁ。とため息ついた

「しかし、残念ながら本部の年寄り達は、昔のことや本のことをあまり語りたがらない。……なあ、レイ」
「そうですね。昔はとても、大変だったそうなので、嫌なことは隠しておきたいのでしょう」 
「そう。だが昔のことは、人々の弱さがそうさせただけだ。相反する魔術を使うという魅力に負けたのだ」
「それは、貴方も同じ。魅力に負け本を求めているのでは?」
 と、レグスの話に反論するレイ。楽しそうな話していたレグスの表情が段々と強張ってくる
「魔力とともに魔術本部の副本部長としても力が足りぬのは重々承知。だからこそ……」
「本のことに関しては、勝手に動いて本部長に怒られますよ」
「あの人はもうお飾りだ。過去の栄光や現状ばかり見て、未来の為とは動かない。それでは、本部のため、人々のためにならないと思わないかね?」
 少しずつ声も大きなっていく二人の会話。その様子を何も言い返せず、ハラハラと見ているリコ達。クルミの後ろに隠れて顔を見ないように会話を聞いているリコも、聞きなれない話し合いの声に怯えて、クルミの服をつかむ手も強く震えている。会議室に不穏な雰囲気が流れる中、突然パンパンと手を叩く音が聞こえてきた

「喧嘩はやめろ。怯えているじゃないか」
 部屋の入り口に呆れた様子で、レイとレグスに注意をするカフカ。少し驚きつつも、止めに入ってくれたカフカが来てくれたことにホッとするリコ達。その一方、知らない人が会議室に来たことに怯えて、クルミの服をつかんでたミクの手が更に強くなった
「それに、本部内の魔術使用は基本禁止だ。いくらレグスといえど、無意味な使用は処分に値するぞ」
 会議室に入りながら、レグスの手元に目を向けるカフカ。無意識にグッと力を込めていた右手をそっと開いた
「そうだった。それは失礼……」
 カフカにクスッと笑って謝るレグス。ずっとクルミの後ろに隠れたまま、姿が見えないミクにも微笑むと、カフカの横を通り、会議室の入り口で立ち止まると、少し振り返りミクとリコ達を見た
「では、今回の話し合いは終わりとしよう。今度は新たな本と共にあるように願っているよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...