こねくとノイズ

19. 雨音の行方

「ふー。疲れたねー。もう一回お風呂入る？」
　サクラがいなくなり、大分時間が過ぎた頃、大雨に打たれびしょ濡れになったノイズとノオトが家に帰ってきた
「そうね、こんなに雨に打たれたんだから入ろうかな」
「じゃあ、サクラを起こして一緒に入ろうかなー」
「ダメよ。疲れているだろうから、ちゃんと休ませないと」
「えー、つまんないの……」
　メメに止められ不満そうに返事をして、お風呂場へと歩いていると、ノイズ達を見つけた家政婦達がバタバタと足音をたてて駆け寄ってきた
「ノイズ様！やっとお戻りに……！」
　慌てた様子で話しかける家政婦達に、驚きつつ足を止めたノイズ達。近くに来た家政婦達が息を切らしているのを見て、メメも一緒に三人顔を見合わせる
「どうしたの？なにかあった？」
「サクラさんとモモがいなくなったんです！」
　大声で伝える家政婦の言葉に、ノイズとノオトがまた顔を見合わせ、メメはノオトの肩に移動して座った
「私達が寝室に案内してすぐに何かあったみたいで、部屋の窓が開いて、部屋の中も雨でびしょ濡れで……」
「モモはどこに置いていたの？」
「ノイズ様の部屋で濡れていたのを乾かしていましたが、とつぜん消えたので、サクラさんの部屋に部屋に行ったのかと思い、訪ねてみたらサクラさんがいなくなっていて……」
　ノイズの部屋にいた家政婦が申し訳なさそうにそう報告をすると、ノイズがうーんと何やら考えるように腕を組んで黙りだし、メメが尻尾を振りノオトの背中に何度も当てながら、その家政婦に問いかけた
「隣の部屋だから何か物音とか聞こえなかったの？」
「はい、かなり雨が降っていたので……」
　その返事に納得したのかメメがノイズと同じく考えている様子のノオトの顔を見て、ふぅ。と一つため息をついていると、突然ノイズがサクラの部屋の方に向かって走り出した
「すぐ私達で探してみる。みなさんも家の中をくまなく探してて！」




「うーん、困ったわね……」
「なにかあったのかい？」
「怪我人が多くてね、ノイズとノオトに頼んでどうになったけど、今すぐまた暴れられたら困っちゃうなって」
「そうか、それは困ったな……」
　サクラが部屋から消えてすぐ、ノイズの家から大分離れた場所では、ノイズの父親が大きなテーブルに置いて分厚い本を呼んでいた体の細く少し背の高い女性に珈琲の入ったコップを渡し、二人で困った様子で珈琲を一口飲んでいた。女性が本の表紙に左手を乗せると、一瞬で本が消え、コップをテーブルに置いて、ふぅ。と一息ついたその時、二人のすぐ側でドスンと大きな物音が聞こえた
「なんの音？」
　女性がその音のする方へ駆け寄ると、入り口の前でびしょ濡れでモモを抱くサクラが床に倒れていた
「おや、君は……」
「あら、知り合い？」
　動かないサクラに女性が駆け寄り体を起こすと、サクラの顔を見たノイズの父親が少し驚いた顔でコップをテーブルに置いた
「ノイズが今日他の世界から連れてきた子だよ。しかし、どうしてここに？」
　二人が不思議そうに話していると、気がついたサクラがゆっくりと目を開け、少しボーッとしつつ辺りを見渡しはじめた。その様子に女性がホッと胸を撫で下ろしていると、サクラが持つ本を見て驚いた顔をした
「あら、これノイズの本ね」
　女性がそう言うとノイズの父親がサクラに近づき本を見た。そしてすぐ、サクラを倒さないようにしながら入り口を開けると、廊下にいた数名の人を呼び話をし、何度か言葉を交わすと、呼んだ数名がバタバタと廊下を走っていった。その様子を見届けた後、サクラに入り口の扉が当たらないようにと扉を開けたまま、まだ少しボーッとしているサクラにニコッと微笑み話しかけた
「パニックになっている所、申し訳ないが、君から色々話を聞かないといけない。ノイズが来る前に、色々話してくれるかい？」