こねくとノイズ

20. 気になる微笑み

「えっ、どういうこと？」
「施設にサクラさんが来たそうなので、ノオト様と一緒に今すぐ迎えに来るようにと……」
　着替えもせず濡れたまま自分の部屋のクローゼットを開けてサクラを探していると、家政婦からサクラの情報を聞いて、動きが止まったノイズ。同じくノイズの部屋で窓を開けベランダを見ていたノオトも情報を聞いて、家政婦達の方に振り向いた
「サクラが？どうやって？」
「それが分からないと。突然、ソナタ様の側に現れたそうで……」
　ノイズが不思議そうに首をかしげながら問いかけると、家政婦も少し首をかしげ答える。すると、ベッドで寝ていたメメが背伸びをして、ノイズの肩にふわりと飛び乗った
「モモが連れていったのかもね」
「ああ……。じゃあやっぱり何かあったのかな」
「そうかもね、それよりも今、色々考えるより早く着替えて迎えに行かないと」
　メメに言われてまたクローゼットの中を開け、服を取り出すと、ノオトもノイズの隣に来て着替えの服を探しだした


「でも、モモがあの施設に入れるのかしら」
　服を着るために、ノイズにベッドに移動させられたモモが不満そうに問いかけると、それを聞いてノイズがうーんと悩みながら、服を着た
「うーん、持って行ったことはあるから、モモに宿した必要最低限の魔力で行くことは可能だけど、あの場所に入るのは無理だとは思うんだけど……」
「サクラの力でしょ。それしか考えられない」
　ノオトも服を着なからそう言うと、驚いた顔をしたノイズがズボンを着ながらノオトを見た
「えー、モモの使い方をちゃんと教えてないし、練習もなしではムリだよ」
「でも、入れたのならそういうことでしょ」
　ノオトの返事に納得しつつも浮かない顔のノイズに、メメが着替え終えたノオトの肩に飛び乗りノイズを見てクスッと笑った
「大変な子を連れてきたのね」
「そうなのかもね、まあ好都合だから結果よしなのかも」




「あら、まだ落ち着かない？」
　ノイズ達が着替えを終えたその頃、とある施設の一室でソナタと二人になったサクラは、ソワソワと落ち着きなく部屋の中をずっと見渡していた
「あの本は大分濡れてて危険だからこちらで対処しているの。だから、一人にさせてごめんね」
「いえ……」
　ソナタの言葉に小声で返事をすると目の前に置かれた温かい紅茶入りのコップをそっと手に取り、火傷しないように、そーっと一口飲んだ
「それにしても字も滲んでいるし、ページも濡れて紙同士が引っ付いているのに、よくここまで来れたわね」
　ソナタがサクラを見ながら少し呆れた様子で呟いていると、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえた
「あのー、ノイズ様とノオト様が来られましたが……」
　恐る恐るソナタに伝える体の細い男性。その言葉を聞いてサクラが一瞬、体をビクッとさせた
「あら、意外と早いのね。悪いけど、ここに連れてきてくれる？」
「はい、すぐに」
　ニコッと微笑み返事をするソナタに、男性もぎこちない笑顔で返事をすると、すぐ部屋の扉を閉めて、部屋にまで聞こえるほどの早足で去っていった。その音とソナタの様子にサクラが戸惑っていると、視線に気づいたソナタがサクラのを見てまたニコッと微笑んだ
「二人が来た後、あなたからもたくさん話を聞く思うから、覚悟してね」