こねくとノイズ

56. もう少し安らぎの時を

　ミクが部屋を出て少し後、家政婦達も休憩を取りに部屋を出た。残ったノオトが、ノイズの部屋から持ってきた本を読んでいると、モゾモゾと布団が動いて、サクラがゆっくりと体を起こした
「あれ？もう起きたの？」
　読んでいた本を閉じながらノオトがサクラに声をかけると、頭がまだ回らないのかボーッとした顔をしてサクラが振り向いた
「リディは無事で今はメメと寝てるよ」
　そうノオトが言うと、ゆっくりと頷くサクラ。体が動かないのか手元を見てまだボーッとしている
「ご飯食べる？それとも、もう少し眠る？」
「起きます……」
　小さな声で返事をすると、布団をゆっくりと動かした。その時、少し慌てた様子で枕の周りを見渡しはじめた
「ああ、モモはノイズの所にいるよ。今、どこにいるかは分かんないけどね」
　ノイズがサクラの様子を見て言うと、返事をするように、サクラがまたゆっくりと頷く
「軽食用意してもらうから、ちょっと待ってて」
　そう言うと本をテーブルに置き、部屋を出ていったノオト。パタンと静かに部屋の扉が閉まると、ふぅ。と一つ深呼吸をして、ベッドを見渡しポツリと呟いた

「なんだか、出られない気がするけど……」
「そうよ、よく分かったわね」
　サクラの呟きに誰もいないはずの部屋から突然声が聞こえ、驚き声がする方を見るとサクラのすぐ側でリリが大きなアクビをしていた
「ノオトの結界も中々のものね。大分成長しているのね」
　そう言うと、ふわりと浮かびサクラの前に立つと、サクラの顔を見てフフッと微笑む
「体調はどう？」
「えっと、悪いところはどこも……」
「そう。でも帰すのは本当に惜しいわね。このまま、この世界に住む？あなたならソナタの良い右腕になるわよ」
「あら、私はまだ右腕がいるほど衰えてはいないと思っているけど」
　と、リリの言葉を少し不満そうに返す声が聞こえサクラとリリが声のする方を見ると、部屋の入り口でニコニコと微笑むソナタがいた
「えっと、ノイズの……」
　ベッドに近づくソナタにサクラがペコリと頭を下げながら言うと、ソナタは
「おはよう、サクラちゃん。術の影響もなさそうでよかったわ」
　そう言うと、ソナタの右手にページが開かれた本が現れ、サクラがその本に目線を向けるとソナタが本をパタンと閉じた
「でも、ごめんだけどもう少し眠っててくれる？」
　そう言うと、バタンと横に倒れるように眠ってしまったサクラ。倒れた体や布団が独りでに動き、ベッドに眠り直されると、枕の上にいたリリがソナタの肩に移動した
「あらせっかく起きたのにどうして寝かすの？」
「ちょっとサクラちゃんが起きるとね、色々都合が悪いの。それより急いで施設に戻りましょ」