クローバーホリック

シャオえる

文字の大きさ
4 / 67

4. もう、悲しい思いはさせないように

しおりを挟む
「どうしようかなぁ……」
 学校が休日のお昼過ぎ、大分寝過ごし一人で街中を歩くミツバ。一段と騒がしく人通りも多い中をキョロキョロと周りを見渡しながら歩いていく
「サクラさんに会えると思って、出てきたけど……連絡先も知らないしなぁ……」
 と呟きながら、特に宛もなく歩き続けていると、行きつけのお店に着くと休日のため、混雑しているお店の中。少し並んで新商品のアイスを買い、また街の中を歩いていく。少しアイスが溶けてきた頃、少し街から外れた公園に着いてベンチに座って、携帯に来ていたサヤカとマホからの連絡を返しながら、アイスを頬張っていく
「そっか。みんなも出掛けてるんだ……」
 はぁ。とため息ついて、公園の遊具で遊ぶ子供たちの姿を見ながらアイスを食べ終えると、ふと顔を上げて空を見た
「サクラさんって、夢の中以外でも、どこかで会ったことある気がするんだけどなぁ。でも、どこで……」
 サクラのことを思い出して空に向かって呟くミツバ。すると、強い風が吹き荒れて、近くにあった木々たちがガサガサと音をたて大きく揺れた

「……あれ?」
 しばらくすると強い風が収まり、ふと前を見ると、楽しそうにはしゃいでいた子供達や公園を歩いていた大人たちの姿が居なくなり、静かな公園にミツバ一人だけがいた
「あんなに人がいたのに……」
 ベンチから立ち上がり、辺りを見渡すミツバ。すると、遠くからミツバの方に歩いてくる人影を見つけた。その近づいてくる人を見つつも、他にも人がいないかと少し目をそらす。だが、人がいそうな雰囲気も話し声も聞こえず、怖くなって少しずつ後退りしながら、さっきよりも大分近くなってきた人影を凝視する
「この本には、私が知らなかった事を書き留めたいの……」
 と、呟く人影の声が聞こえたミツバ。少しずつ後ろに歩いていた足を止め、息を飲んだ
「でも、もう書くことに飽きてきたから、どうしようかなって……」
 と言うと、ニコッと笑う人影。声と髪の長い可愛らしい容姿を見て、同じくらいの年齢の女の子と気づいて、少しホッと安堵した
「ねえ……。ミツバ、どう思う?」
「えっ?どうして私の名前……」
 初めて会うその女の子に名前を言われて、戸惑うミツバ。まだ近づいてくる女の子から、少しずつ離れて逃げようとした時、二人の間に突然影が現れた。大きくなっていく影の上に、空からサクラがふわりと降りてきた

「サクラ……やっぱり来たの」
 突然現れたサクラの姿に驚く様子もなく微笑む女の子。一方、ミツバはサクラの後ろ姿に驚き呆然としている
「ミツバちゃん!逃げて!」
「えっ?……でも」
「早く!ここは私がどうにかするから!」
 と、少し振り向きミツバに叫ぶサクラの姿に、一度頷いて
走り出したミツバ。サクラの後ろから見える走っていくミツバの後ろ姿を見て、女の子が、はぁ。とため息ついた
「ちょっとサクラ。ミツバを逃がしたらダメじゃない」
 女の子に声をかけられサクラの表情がキッと睨むような目で女の子を見た
「ミツバちゃんにはもう、本は使わせないって決めたの。だから、ツバキちゃんも……」
「そう簡単に、この本から逃げられると思う?それに、サクラだって……」
 サクラの返事に呆れつつ側に近づいてくるツバキ。サクラの手に現れた二冊の本を見て、ツバキもまた本を取り出し、サクラと睨みあう
「逃げられない……。だからこそ、ミツバちゃんには、二度と使わせない。悲しいことは全て私が受け止めるんだから!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...