クローバーホリック

シャオえる

文字の大きさ
13 / 67

13. 面影が寂しい朝

しおりを挟む
「……おはよう」
 翌日の朝、トボトボと歩いて教室に入ってきたミツバ。もう来ていたサヤカとマホが、ミツバに気づいて手を振って声をかけてきた
「おはよう。今日は早いね」
「うん、たまにはね……」
 机に鞄を置きながら、前の席を見た。まだサクラが来てないのか、
「サクラはまだ来てないよ。今日はサクラが遅刻かもね」
 と、マホがミツバに話しかけると、チャイムが鳴りバタバタと騒がしくなる教室。まだ来る気配のないサクラを心配していると、担任の先生が教室に入ってきた

「今日から、サクラさんは引っ越しの手続きなどをするそうで、しばらくお休みするそうです」
 と教壇について早々、サクラの報告をすると、今日の予定を話しはじめた先生。報告を聞いたミツバが、空いている前の席を見ると少し寂しさを感じて、机に手を置いてうつ伏せになりながら、まだ続いている先生の話に耳を傾けた



「あんな連絡で大丈夫?」
「大丈夫だよ。どうせ……」
 ミツバがサクラの休みの報告を聞く少し前、学校に連絡を終えたサクラが携帯を持って、立ったまま少しうつ向いていた
「ちょっと緊張してる?」
 ソファーで電話をしている様子を見ていたユリが心配そうに声をかけると、苦笑いでユリの隣に座った
「まあ……会うの久しぶりだからね……」
「そっか。私も会うの久しぶりだからなぁ……」
 ふと、二人に会話が止まって、携帯を握ったまま元気のないサクラをユリがぎゅっと抱きしめた
「大丈夫。一緒に行んだから、ねっ」
 ユリの言葉を聞いて、サクラが小さく頷くと抱きしめていた体をそっと離してサクラの顔を見るとクスッと笑った
「ナツメとツバキも来るって言ってたよ」
「……本当に?」
「サクラが心配ってさ。何だかんだ言っても二人とも優しいね」
「……うん」
 ナツメとツバキの二人も来てくれることに、嬉しさで微笑むサクラ。その笑顔を見たユリが、もう一度サクラを抱きしめた
「ミツバの事、言えそう?無理なら私が代わりに……」
「ありがとう。大丈夫、言えるよ」
「そっか……。じゃあ、サクラの気持ちが変わる前に、行こうっか」
 と言うと、サクラを抱きしめていた手を離したユリ。ソファーから立ち上がると、背伸びをして出掛ける準備をするため、洗面所へと歩いていくユリ。その後ろ姿を見ていたサクラ。テーブルに置いている二冊の本に目を向けると、そっと本を手に取りミツバの本を開き、中をパラパラとめくると、ふぅ。とため息ついた
「ミツバちゃんの本は、私が使いきるから……大丈夫……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...