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52. 優しさの恩返し
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「あの……もう少し、ゆっくり進んでくれませんか?」
ユリにおんぶされて空を飛ぶミツバ。怖さで震えつつ、どうにか伝えたミツバのお願いに、三人とも気にせず早い速度で飛び進めていく。落ちないようにユリにぎゅっと抱きついて震えているミツバを見てツバキがちょっとだけ呆れている
「ミツバって、本当空飛ぶの苦手だよね」
「記憶がなくなる前も、空飛ぶの苦手で、よくフラフラ飛んでたもんね」
と、ツバキに返事をしながら頷くユリ。ナツメも一緒に飛んでいた頃を思い出して、頷いている
「そうだね。落ちないかいつも心配してたね」
「……そうなんだ」
震える声で返事をするミツバ。落ちないようにナツメとツバキがユリをサポートしつつも、さっきより早い速度で何処かへ飛んでいくナツメ達。夕暮れになってきた頃、サクラやミツバの家から大分離れ、街からも外れた小さな公園にやって来た
「着いた……」
ユリのおんぶから降りて地面に足がつき、ホッと胸を撫で下ろすミツバ。ゆっくりと顔を上げ周りを見渡すと、初めて見る公園の広場に少し不安そうな表情になっていく
「あの……ここは?」
「ここは、私とツバキが初めてアルノさんと出会った場所なの」
と、ミツバの質問に答えるようにナツメがか細い声で話はじめた
「服も汚くて、話しかけても何にも言わない私達を、アルノさんは優しく受け入れてくれたの」
「ご飯やお風呂にも入れてくれて、サクラも最初は不思議そうな顔をしてたけど、何にも言わなかった。私達を家に呼ぶことは大変だったと思うけど、ずっと笑って、私達を見てくれた」
と、ナツメの手に今にも消えそうな本が一冊現れた。本を持つ手が透けて見える本を、どこか寂しそうに見つめページをめくるナツメ。ボロボロになっている本を持つユリと、ナツメと同じく消えそうな本を大事に抱えているツバキ。三人の様子を戸惑い、ただ見つめているミツバ。そんなミツバをよそにナツメの話が続く
「だから、私達は本を書くって決めたの。アルノさんが必要って言ってたから。でも、ミツバがいなくなってから、サクラが本を書くことも減ったし、私たちの本も壊れてしまった」
語気を強めて叫ぶナツメ。そのそばでは、本を見て泣きそうなツバキをユリがぎゅっと抱きしめている
「サクラと何をしたの?どうして、私たちの本がこんな風になっているの?ミツバは何か知っているんでしょ?」
「……知らない。私は何にも」
うつ向き大きく顔を横に振って、ナツメに言い返すミツバ。そのミツバの言葉とうつ向いている姿に苛立たナツメが起こった表情で歩き出したとき、どこらかともなくミツバやナツメ達とは違う声が聞こえてきた
「ミツバちゃんは、何も悪くない。全部、私が願ったことだから……」
ユリにおんぶされて空を飛ぶミツバ。怖さで震えつつ、どうにか伝えたミツバのお願いに、三人とも気にせず早い速度で飛び進めていく。落ちないようにユリにぎゅっと抱きついて震えているミツバを見てツバキがちょっとだけ呆れている
「ミツバって、本当空飛ぶの苦手だよね」
「記憶がなくなる前も、空飛ぶの苦手で、よくフラフラ飛んでたもんね」
と、ツバキに返事をしながら頷くユリ。ナツメも一緒に飛んでいた頃を思い出して、頷いている
「そうだね。落ちないかいつも心配してたね」
「……そうなんだ」
震える声で返事をするミツバ。落ちないようにナツメとツバキがユリをサポートしつつも、さっきより早い速度で何処かへ飛んでいくナツメ達。夕暮れになってきた頃、サクラやミツバの家から大分離れ、街からも外れた小さな公園にやって来た
「着いた……」
ユリのおんぶから降りて地面に足がつき、ホッと胸を撫で下ろすミツバ。ゆっくりと顔を上げ周りを見渡すと、初めて見る公園の広場に少し不安そうな表情になっていく
「あの……ここは?」
「ここは、私とツバキが初めてアルノさんと出会った場所なの」
と、ミツバの質問に答えるようにナツメがか細い声で話はじめた
「服も汚くて、話しかけても何にも言わない私達を、アルノさんは優しく受け入れてくれたの」
「ご飯やお風呂にも入れてくれて、サクラも最初は不思議そうな顔をしてたけど、何にも言わなかった。私達を家に呼ぶことは大変だったと思うけど、ずっと笑って、私達を見てくれた」
と、ナツメの手に今にも消えそうな本が一冊現れた。本を持つ手が透けて見える本を、どこか寂しそうに見つめページをめくるナツメ。ボロボロになっている本を持つユリと、ナツメと同じく消えそうな本を大事に抱えているツバキ。三人の様子を戸惑い、ただ見つめているミツバ。そんなミツバをよそにナツメの話が続く
「だから、私達は本を書くって決めたの。アルノさんが必要って言ってたから。でも、ミツバがいなくなってから、サクラが本を書くことも減ったし、私たちの本も壊れてしまった」
語気を強めて叫ぶナツメ。そのそばでは、本を見て泣きそうなツバキをユリがぎゅっと抱きしめている
「サクラと何をしたの?どうして、私たちの本がこんな風になっているの?ミツバは何か知っているんでしょ?」
「……知らない。私は何にも」
うつ向き大きく顔を横に振って、ナツメに言い返すミツバ。そのミツバの言葉とうつ向いている姿に苛立たナツメが起こった表情で歩き出したとき、どこらかともなくミツバやナツメ達とは違う声が聞こえてきた
「ミツバちゃんは、何も悪くない。全部、私が願ったことだから……」
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