クローバーホリック

シャオえる

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51. 教えてくれない理由

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「つ、疲れた……」
 アルノが帰って、はぁ。とため息ついたユリ。ソファーに勢いよく座ると、隣にツバキもソファーに座った
「ご飯とおやつは美味しかったね」
「そうだね」
 楽しそうに話すユリとツバキ。そんな二人に対し、テーブルでは少し不穏な雰囲気が流れていた

「私……」
「サクラ、どうしたの?」
 うつ向き呟いたサクラの声に気づいたユリがサクラに声をかけ駆け寄っていく。ユリだけでなくミツバやツバキが心配そうに声をかけても、サクラはずっとうつ向いたまま。そんなサクラの姿に苛立ったナツメが突然立ち上がり、ミツバに手を差し出した
「ミツバ。本を貸して」
 語気を強めてミツバにお願いをするナツメ。ミツバを見つめる表情と声に少しうろたえていると、同じくそばでツバキも少しうろたえながら、ナツメに声をかけた
「ナツメ。なにするの?」
「ミツバの本を読むの」
「でも、ナツメ読めないでしょ?」
 アルノに返されてからテーブルに置かれたままのミツバの本を見て、ナツメの声は少しずつ大きくなっていく
「サクラが何も言う気がないなら、どうにかしてでも、調べなきゃ」
「でも、アルノさんは、特に何もって……」
「それでも、ミツバが少しでも思い出すきっかけになるかもしれないし」
 と、ナツメ達三人が話をしていると、突然サクラがうつ向いたまま立ち上がった
「……少し部屋で休んでくるね」
 と、か細い声で、ゆっくりとリビングから出ていった
「サクラさん……」
 心配で追いかけようと、慌てて椅子から立ち上がったミツバ。だが、ナツメがミツバの腕をガシッとつかんで追いかけようとしていたミツバの足を止めた

「ミツバ。本を開いて」
 目を見つめ、ぎゅっとつかんで離さないナツメのその声に、ゆっくりと頷き椅子に座り直し本を開いたミツバ。だが、相も変わらず不思議な文字が書かれている本にみんな、悩みはじめた
「やっぱり読めないね……」
「ミツバも読めない?」
「うん、さっぱり……これは、どこの国の文字なんですか?」
 ページをめくりながら聞くミツバ。本の半分ほど書かれている文字を不思議そうに見ている
「どこの国というよりも、この文字は、本を書いていたサクラの先祖代々の独特の文字だから、資料とかなくて読めないんだよね」
「そうそう。サクラとかアルノさんも、読み方教えてくれないし」
「でも、私達は本を書いているのに読めないって……」
 と、話をしてても読めそうなきっかけもなくただ時間が過ぎていく。進展のない様子に、ナツメがはぁ。と大きくため息をついた
「読めるようになるより、ミツバに思い出してもらう方が早いや」
 と言いながらソファーに座ってお菓子を食べはじめたナツメ。その姿に慌ててツバキも隣に座って一緒にお菓子を食べはじめた
「そういえば、アルノさんがサクラと何かしようとしてたって言ってたね」
 と、ユリがミツバの本を見ながら呟いた言葉が聞こえたのか、ナツメが突然ソファーから立ち上がった。驚いているツバキを置いて、ベランダの方に歩いていく

「みんな出るよ」
 振り向いてナツメを見ていたミツバ達に声をかけたナツメ。急に出ると言われて困ったように三人が顔を見合わせている
「少しでも、思い出させなきゃ。出掛けるよ」
「でも、サクラさんが……」
 とミツバがサクラのいる部屋の方に振り向くと、ナツメがまたミツバの腕をつかんで、一緒にベランダの方へと歩きだした
「少しだけ出掛けるし、サクラ一人でも大丈夫だよ。早く行ってすぐ帰ってこれば大丈夫だから、急いで出よう」
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