シンフォニー・レイ

81. それぞれの思惑

「では、話を聞きたいのだが……」
　ゼフド達に一人、指令室へと案内されたシンク。重々しい雰囲気があるなか、シンクは落ち着いている
「私は、シキの事を聞きたいだけなの」
　ゼフドが話を聞く前に、ここに来た用件を話すシンク。話す声に、指令室で待っていた隊員達が、一斉に息を呑む

「我々は山ほど聞きたいことがあるが……」
　シンクからの予想通りの問いかけに、ゼフドがはぁ。とため息をつくと、静かになった指令室。重々しい雰囲気が消えないなか、少しずつ事の深刻さを強めていく
「ツミキちゃんを、私達のうちに招待しても良いかしら？」
　今度は微笑み問いかけるシンクに、ゼフドが少し近寄っていく
「君達はずっと、ツミキを狙っていた……なぜだ？」
「それは、お父様が願ったことだから」
「……そのお父様とは？」
　その質問に、うろたえる事なく微笑んだまま、隣まで来たゼフドの横を通りすぎ、指令室を見て回りだす
「それは、言えないわ。でも、お父様は優しいお方。ツミキちゃんに会いたいのも、多分きっとシキのお友達だから……」
　話ながら指令室にいる隊員に微笑み回るシンクに、戸惑う隊員達
「もちろん、カエデちゃんやミオリちゃんにも会いたいと思っているはず……」
「こちらとしては、三人をそう易々と、そのお父様に会わせるわけにはいかない」
「あら残念。それじゃあ交渉不成立かしら？」
　クスクスと笑い答えるシンクと、どうしようかと考え込むゼフド。二人の会話を見守る隊員の人達が、心配そうに様子を伺っている

「すまないが、こちらに少し時間をくれ。ツミキ君達を会わせるか話し合う。それにシキという子の事だが、力を失った原因を調べてい最中だ。今は、何も教えられる事はない」
「……そう」
　ゼフドの回答に、微笑んでいたシンクが悲しい顔になった。シンクが歩き回っていた足音が途切れ、また静かになった指令室に、今度はコツコツとゼフドが指令室にある自分の机の元へと歩く音が響く。一同がゼフドを見るなか、途中振り返り隊員やシンクの方を見回していく
「今日の話は一旦終わろう。続きはまた後で……。君も食堂で皆と食事をすると良い」