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1. 二人の未来のために
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「アリアを本当に連れていくのですか?」
「ああ、二人のためだ。君も納得しただろう?」
「そうですが、でも……」
悲しげに話をする男女二人の腕の中にはスヤスヤと赤ん坊が眠っている。男性が抱く赤ん坊に女性がそっと頬に触れると、小さな手を動かしてアクビをした。それを見てフフッと微笑むその女性の周りには、悲しさを押さえるため少しうつ向いている大勢の女性や男性達がいた
「この子には常に見張りを行う。君も影ながらいつでも会えるよ」
「それでも二人一緒に過ごした方が……」
女性の言葉に男性がゆっくりと首を横に振る。それを見て女性が赤ん坊の顔に触れていた手を離し顔を背けた
「運命って残酷ね……」
「仕方ないわ。お二人のためよ」
二人から少し離れた場所で女性二人がヒソヒソと話をする。その話につられるように、二人の側にいた女性がため息混じりに呟いた
「一人は強い魔力があり、もう一人は全く魔力がないなんて不運ね……」
「ですが、お二人に強い魔力があるよりかはまだ良かったのかもしれません」
「そうとも言えるわね。でも……」
赤ん坊を抱き家の入り口の方へと歩き出した男性を見ないように背を向けた女性の姿を見て、バタンと閉ざされた入り口の扉から女性達も顔を背けた
「アリア!今日お城に行くでしょ?一緒に行こう!」
数年後、アリアがいる部屋へと勢いよくバタバタと入ってきた女の子。不思議な色をした液体の入った透明のコップを睨むアリアの腕をグイグイと引っ張る
「えー、私はいいよ。ミオが一人で行ってきなよ」
「せっかく王妃様にも王女様にも会えるんだよ!嫌でも行かなきゃ!」
椅子から動かないアリアを引っ張り続け、ミオの長い髪が揺れ、コップの中に入ってしまった。それを見てアリアが、はぁ。とため息つきコップを持ちながら立ち上がった
「王妃様はいつでも見れるのに、なんでわざわざ……」
「いいからほら!」
窓の側にあるテーブルにコップを置き直したアリアの腕をつかみ直して引っ張り、そのままバタバタと勢いよく家を出ると、アリアの家から少し歩いた先にあるお城へと向かう大勢の人達が歩いていた。たくさんの人達を見て、げんなりしているアリアを横目にミオがアリアの手を引っ張ったまま、人々が向かうお城の方へと走り出した
「よし、ここなら見える!」
人混みの中を無理やりかき分け、お城のすぐ近くへと着いたアリアとミオ。ガヤガヤと騒がしくなっていく声と共にテンションが上がっていくミオに対し、アリアはぐったりとした顔でミオの体に少し体をもたれた
「つ、疲れた……」
「もー、今からイベントなのに大丈夫?」
「ううん、もう帰りたい……」
力ない声でアリアがミオに返事をすると、突然周りが更に騒がしくなった
「来た!」
「あの子が、アクア王女……」
「見ろ!あの杖も持っている!」
顔を少し布で隠した二人の女性が、お城にあるバルコニーから出てきた。人々は女性の隣にいる少し背の低い女の子を見て、指を指したり手を振ったりしている。すると、アクアと呼ばれた女の子が顔を隠した布に手を掛けゆっくりと取ると、騒がしかった周辺が更に騒がしくなった
「クリア王妃、あのう……」
アクアの隣にいるクリアにヒソヒソと話しかけてきた。それを聞いてクリアが慌てた様子でその女性の顔を見た
「アリアが?今日は来ないようにしていたはずでは?」
「それが、ご友人に誘われ断れず来たそうです」
「アリアはどこ?」
集まってきた人達を見渡して、アリアの姿を探すが見つからず、クリアが戸惑っていると報告に来た女性がまたヒソヒソと話しはじめた
「アクア様のすぐ近くにいると」
「ならば今すぐ中止を」
「いえ、それはもう時間的にも……」
二人が焦りながら話していると、アクアが杖をコツンと地面に鳴らし一歩踏み出した。アクアの顔が集まってきた人達にも更によく見えて拍手や喝采が増えた。身長で見えなかったアリアとミオにも顔が見えて、ミオがテンション高くアリアの肩を叩くと、アリアが見上げたまま動かない事に気づいて首をかしげながら声をかけた
「アリア、どうしたの?」
「あの子って私に似てない?」
アクアを指差しながらミオに問いかけると、アリアとアクアを何度も交互に見た
「名前は似ていると思うけど、顔も似ているかもしれないね」
と、ミオが言ったその時、アクアが杖を持っている方の手を上げ、すぐに杖を下ろした。ゴツンと杖の先の音が響き渡り、集まっていた人達が驚き目を閉じた。アリアとミオもぎゅっと目を閉じ、すぐに目を開ける。すると、すぐ隣にいたはずのミオやたくさんの人達の姿が居なくなっていた
「ミオ!どこに行ったの?」
辺りを見渡しながらミオの名前を呼ぶ。だが、誰もいる気配もなく、風がなびく音も聞こえず、不安になってきたその時、後ろからふわりとよそ風が吹いて少し風が吹いた方を振り向くと、ゆっくりとアクアが舞い降りてきた
「やっと見つけた……」
地面にコツンと靴の音をたてて降りたアクアが戸惑うアリアを見て微笑み言う。両手に杖を持ち見つめ合うアクアに、アリアが話しかけようとすると、それを遮るように、さっきよりも強い風が吹いて、アクアがクリアが居るバルコニーに戻るために浮かび、少し振り向いてまたフフッと笑い呟いた
「アリアお姉ちゃん、これからよろしくね」
「ああ、二人のためだ。君も納得しただろう?」
「そうですが、でも……」
悲しげに話をする男女二人の腕の中にはスヤスヤと赤ん坊が眠っている。男性が抱く赤ん坊に女性がそっと頬に触れると、小さな手を動かしてアクビをした。それを見てフフッと微笑むその女性の周りには、悲しさを押さえるため少しうつ向いている大勢の女性や男性達がいた
「この子には常に見張りを行う。君も影ながらいつでも会えるよ」
「それでも二人一緒に過ごした方が……」
女性の言葉に男性がゆっくりと首を横に振る。それを見て女性が赤ん坊の顔に触れていた手を離し顔を背けた
「運命って残酷ね……」
「仕方ないわ。お二人のためよ」
二人から少し離れた場所で女性二人がヒソヒソと話をする。その話につられるように、二人の側にいた女性がため息混じりに呟いた
「一人は強い魔力があり、もう一人は全く魔力がないなんて不運ね……」
「ですが、お二人に強い魔力があるよりかはまだ良かったのかもしれません」
「そうとも言えるわね。でも……」
赤ん坊を抱き家の入り口の方へと歩き出した男性を見ないように背を向けた女性の姿を見て、バタンと閉ざされた入り口の扉から女性達も顔を背けた
「アリア!今日お城に行くでしょ?一緒に行こう!」
数年後、アリアがいる部屋へと勢いよくバタバタと入ってきた女の子。不思議な色をした液体の入った透明のコップを睨むアリアの腕をグイグイと引っ張る
「えー、私はいいよ。ミオが一人で行ってきなよ」
「せっかく王妃様にも王女様にも会えるんだよ!嫌でも行かなきゃ!」
椅子から動かないアリアを引っ張り続け、ミオの長い髪が揺れ、コップの中に入ってしまった。それを見てアリアが、はぁ。とため息つきコップを持ちながら立ち上がった
「王妃様はいつでも見れるのに、なんでわざわざ……」
「いいからほら!」
窓の側にあるテーブルにコップを置き直したアリアの腕をつかみ直して引っ張り、そのままバタバタと勢いよく家を出ると、アリアの家から少し歩いた先にあるお城へと向かう大勢の人達が歩いていた。たくさんの人達を見て、げんなりしているアリアを横目にミオがアリアの手を引っ張ったまま、人々が向かうお城の方へと走り出した
「よし、ここなら見える!」
人混みの中を無理やりかき分け、お城のすぐ近くへと着いたアリアとミオ。ガヤガヤと騒がしくなっていく声と共にテンションが上がっていくミオに対し、アリアはぐったりとした顔でミオの体に少し体をもたれた
「つ、疲れた……」
「もー、今からイベントなのに大丈夫?」
「ううん、もう帰りたい……」
力ない声でアリアがミオに返事をすると、突然周りが更に騒がしくなった
「来た!」
「あの子が、アクア王女……」
「見ろ!あの杖も持っている!」
顔を少し布で隠した二人の女性が、お城にあるバルコニーから出てきた。人々は女性の隣にいる少し背の低い女の子を見て、指を指したり手を振ったりしている。すると、アクアと呼ばれた女の子が顔を隠した布に手を掛けゆっくりと取ると、騒がしかった周辺が更に騒がしくなった
「クリア王妃、あのう……」
アクアの隣にいるクリアにヒソヒソと話しかけてきた。それを聞いてクリアが慌てた様子でその女性の顔を見た
「アリアが?今日は来ないようにしていたはずでは?」
「それが、ご友人に誘われ断れず来たそうです」
「アリアはどこ?」
集まってきた人達を見渡して、アリアの姿を探すが見つからず、クリアが戸惑っていると報告に来た女性がまたヒソヒソと話しはじめた
「アクア様のすぐ近くにいると」
「ならば今すぐ中止を」
「いえ、それはもう時間的にも……」
二人が焦りながら話していると、アクアが杖をコツンと地面に鳴らし一歩踏み出した。アクアの顔が集まってきた人達にも更によく見えて拍手や喝采が増えた。身長で見えなかったアリアとミオにも顔が見えて、ミオがテンション高くアリアの肩を叩くと、アリアが見上げたまま動かない事に気づいて首をかしげながら声をかけた
「アリア、どうしたの?」
「あの子って私に似てない?」
アクアを指差しながらミオに問いかけると、アリアとアクアを何度も交互に見た
「名前は似ていると思うけど、顔も似ているかもしれないね」
と、ミオが言ったその時、アクアが杖を持っている方の手を上げ、すぐに杖を下ろした。ゴツンと杖の先の音が響き渡り、集まっていた人達が驚き目を閉じた。アリアとミオもぎゅっと目を閉じ、すぐに目を開ける。すると、すぐ隣にいたはずのミオやたくさんの人達の姿が居なくなっていた
「ミオ!どこに行ったの?」
辺りを見渡しながらミオの名前を呼ぶ。だが、誰もいる気配もなく、風がなびく音も聞こえず、不安になってきたその時、後ろからふわりとよそ風が吹いて少し風が吹いた方を振り向くと、ゆっくりとアクアが舞い降りてきた
「やっと見つけた……」
地面にコツンと靴の音をたてて降りたアクアが戸惑うアリアを見て微笑み言う。両手に杖を持ち見つめ合うアクアに、アリアが話しかけようとすると、それを遮るように、さっきよりも強い風が吹いて、アクアがクリアが居るバルコニーに戻るために浮かび、少し振り向いてまたフフッと笑い呟いた
「アリアお姉ちゃん、これからよろしくね」
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