デスパレートレアス

23. 伝わるように思いを込めて

「レアス、来たよ。おはよう」
　朝早く、学園に行く前にレアスの家にやって来たツムギ。静かだったレアスの家が、急にドタバタと騒がしくなっていく
「勝手に入ってごめんね。いつもここの玄関って迷うんだよね。レアス、どんな魔術を……」
　来る前に、スーパーでたくさん買ってきた食材を、ルトとララと一緒にテーブルに出しながら一人話していると、レアスが家にいる気配がない事に気づいて、少し不安になりつつも、リビングやキッチンなどを見渡してく
「まだ寝てるのかな？ララ、レアスのお部屋どこ？」
　肩に乗っていたララに問いかけると、答えるように、ふわり浮かんで家の中を案内するララ。その後を追いかけてくと、二階にある部屋でララが止まった。その部屋の扉をコンコンと叩くと、そーっと音を立てないように扉を開けた

「レアス、おはよう……」
　恐る恐る声をかけながら部屋の中へ入っていくツムギ。広い部屋には誰もおらず、部屋の中を見渡しながら窓を開けて、外にいないかと周辺を見渡してみる
「お散歩してるのかな？」
　レアスの姿が見当たらず、はぁ。とため息ついてパタンと窓を閉じると、隣で不安そうな顔をしているルトとララに気づいて、ぎゅっと優しく抱きしめた
「朝ごはん、作って置いておこうかな。帰ってきたら食べるよね」





「どうにか……帰ってこれたけど……」
　ツムギがレアスの家から出ていった数時間後、身体中に出来た傷を抑えながらレアスが戻ってきた。足元がおぼつかず、倒れないように壁に体を支えながら、リビングへと着くと、テーブルに置かれているたくさんの食事に、すぐ目に入った
「ララ、来てたんだ……」
　ツムギ達が来ていた事に気づいてぎこちなく微笑むが、傷口が痛んですぐに表情が強ばり、リビングの入り口で座りこんでしまった
「……本、戻さなきゃ」
　震える手に持つ本を力強く抱きしめると、ゆっくりと立ち上がりリビングから出て行くと、時々倒れそうになりながらも、本棚のある部屋へと歩いていく。部屋の扉を力なく開け、本棚に体を寄せながら、本が置かれていた場所にゆっくりとまた歩きだす
「だから、止めるように言ったのに……」
　突然、レアスの後ろから、はぁ。とため息混じりに聞こえてきた声。その声の聞こえる方に、ゆっくりと振り向くとリンが呆れた顔をしてレアスを見ていた
「使い魔もいないのでは、魔法が上手く使えないだろう。君の行動は誉めたものではないかな」
　リンの言葉を聞いて、顔を背けゆっくりと歩きはじめたレアス。その様子を見たリンが、はぁ。とまたため息つくと、メルガを呼び出すと、レアスに向かって走り出した。その勢いにレアスがぎゅっと目を閉じると、抱きしめていた本を咥え奪い取った
「ちょっと！」
　慌てて止めるレアスの言葉も届かず、本を咥えたまま本棚を登り、元々置かれていた場所に本を置いてレアスに側に戻ってきた

「少しその本も休ませないと。だいぶ、本の力を借りただろう」
　そう話すリンの言葉を聞かないふりをしていると、メルガが、レアスの側に寝転びたした
「メルガに治癒能力がある。ご飯を食べている間、一緒にいるといい」
　その言葉に答えるように、立ち上がりレアスに背中に乗るように諭すメルガ。だが、乗ることに躊躇していふと、頬に顔を擦り寄せて甘えるメルガ。それに負けて、少し不本意ながらも、仕方なしにメルガの背中に乗ると、リンの横を通り、メルガと一緒にリビングへと向かっていった


「それにしても、この本の数……」
　一人本棚のある部屋に残ったリンが、部屋にある本の量に呆気に取られながら一通り見て周り、近くにあった本棚から一冊手に取ると、ページをめくり読みはじめた
「一人で守るというのには、無理な話だが……。まあ、仕方ないか」