デスパレートレアス

シャオえる

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36. 無くしたものを見つけに

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 ツムギがキッチンでお茶を淹れているその頃、メルガと一緒に部屋に残ったララが、待てど暮らせど起きないレアスに痺れを切らし、ムッとした顔でペチペチと何度も頭や顔を叩き出した。ベッドの側で休んでいたメルガが叩く音に驚き飛び起きるとララを止められらず、あたふたと狼狽えていると、レアスがうっすらと目を開けた
「……なに?」
 ボソッと聞こえた小さな声が聞こえて、足を叩いていたララの手が止まった。レアスも叩かれていた足の方にゆっくりと顔を向けると、ララと目が合い二人とも不機嫌だったのが一気に笑顔になった
「ララ!」
 両手を広げてララを呼ぶレアスの胸元に飛び付くララ。メルガも尻尾を振りながらレアスの頬に頭を擦り寄せる
「よかった、元気そうで……」
 メルガの頭を撫でながら、そう呟き微笑んでいると、突然レアスの部屋の扉が開いた

「レアス!」
 お茶を持ってきたツムギが、ララとメルガに囲まれているレアスを見て、急いでお茶をテーブルに置くとレアスの所にニコニコと笑って駆け寄ってきた
「レアス、傷は大丈夫?どこか痛い?」
「いいえ。大丈夫よ。この子のお陰ね」
 そう言うとメルガの頭を撫でて微笑んでいると、傷を確認するためにツムギがレアスの体を見渡しはじめた。すると突然、メルガがレアスから離れて部屋の中をウロウロと歩きはじめた
「メルガ、どうしたの?」
 ツムギがメルガに声をかけると、部屋の一番大きな窓の前に立ち止まった
「窓、開けるの?」
 そう言うと、メルガか見つめる窓を開けると同時に、とても強い風が吹き荒れた。その強い風を近くに感じ、メルガの体を抱きしめ耐えるツムギとルト。レアスもララを抱きしめ目を閉じると、机に置かれていた本がバラバラとページがめくられていく。すると、風はすぐに止み、ツムギが恐る恐るメルガから手を離しそーっと目を開けた

「えっ?リン先生……」
 部屋の真ん中に突然現れたリンの姿に驚くツムギ。すると、側にいたメルガが嬉しそうにリンの所に駆け寄りだした
「メルガ、お疲れ」
 そう言いながら頭を撫でるリンに、頬を手に擦り寄せて離れないメルガ。二人の様子を戸惑いながら見ていたツムギとレアスに気づいたリンが、二人を見て、クスッと笑った
「みんな、ちゃんと疲れは取れたようだね」
「……はい。ルトもララもさっき起きて」
 と、ツムギが返事をしていると、机にページが開かれたままの本を見つけたリンが、はぁ。とため息ついて、レアスの方に振り向いた
「本は使わないようにと言ったはずだが……」
「本が足りなくて……それで」
 リンに顔を背けながら、そう返事をするとレアスの言葉を聞いて、ツムギが椅子に置いていたカバンの中を探りはじめた
「本?もしかして、この本探してるの?」
 と、カバンから本を取り出しレアスに見せると、驚いた顔をしてその本を指差した

「その本!どうしてあなたが……」
「私のカバンに入ってたの。入れた覚えはないんだけど……。ごめんなさい」
 本を持つ両手を前に伸ばし頭を下げて謝っていると、リンがツムギの持つ本を取ると、机にある本も取ってはぁ。とため息ついた
「こんなにボロボロになるほど使い込んで……」
 そう言うとメルガを呼び背中に本を乗せると、そのままリンが出てきた窓から外へと飛び出してしまった
「ちょっと!」
 慌ててベッドから降りてツムギの横を通りながら窓の方へと走り出すレアス。それと同時にリンも窓から飛び降りてメルガの背中に乗り、本を手に取ると、レアスが窓から手を伸ばし、リンの持つ本を取り返そうとするが届かず、本を持つリンを睨み付けた
「メルガでは本は直せないし、本棚に置いていたら君達が使うからね。この本はしばらく預かっておくよ。それまで君はもう少し休んでおくんだね」
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