デスパレートレアス

シャオえる

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76. 見つけた本に願いを込めて

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「ルト、どうしたんだろ……」
 リンが出ていった後、残されたツムギがポツリ呟きながら、まだ目覚めないレアスをぎゅっと抱きしめながら辺りを見渡している。レアスの家の本棚の部屋よりも遥かに多い本の数に見入っていると、ふとリンが本棚に戻した本を見つけた
「リン先生が置いた本……」
 抱きしめていたレアスをそーっと腕から離し、床に置くと、足音を立てないようにゆっくりと本棚へと歩いていく
「あった。この本……」
 リンが置いた本を見つけ、無理矢理押し込んで入れたせいで、少し取りづらくなっているその本をツムギも無理矢理引っ張って取り出すと、ちょっと重たいその本の表紙を見て、ふぅ。と大きく深呼吸をした
「ルトに会えるかな……」
 そう呟くと、ゆっくりと本を開くツムギ。難しそうな魔術が書かれたその本に、ブツブツと呟きながら読んでいると、ツムギのいる場所から遠く離れた場所からガタンと大きな物音が聞こえて、驚き振り向くと、遠く離れた本棚がガタガタと大きく揺れて本が散らばり落ちていた








「えっ、手伝えない?」
 その頃、ツムギとレアスのいる本棚からある場所から少し離れた場所でミナモと合流したリンが、ミナモの話を聞いて、困った顔で返事をしていた
「ああ、雨が降るからな。本が濡れてしまうと……」
「それは困ったなぁ。メルガだけなら呼び戻せますが、二人の使い魔までは……」
 うーんと悩みだしたリン。ミナモも少し呆れたようにはぁ。とため息ついた
「それより、娘達はどうした?」
「呼び戻して、今ミナモの本棚にいると……」
 と、ミナモの本棚がある方に目を向けると、小さな光が微かに見えて、ミナモがまたはぁ。とため息をついた

「確かにそのようだな……。本棚に触るなと言わなかったのか」
「ええ、言わなかったです」
 ニコニコと笑って答えるリンに、少し苛立つミナモ。少し離れた木の小枝に座り休んでいたクロウを呼び、体をそっと擦りながらリンに話しかけた
「面倒なことになる前に戻るぞ。クロウ、先に行って本達を守ってくれ」
「まあ、あの本棚は無理に二人を傷つけたりはしないと思いますが……」
 ふわりと空を飛んで本棚に向かってくクロウを見ながら、クスッと笑ってミナモに答えていると、ミナモの本棚の方向から、ドンッと大きな音とリンとミナモの足元が少し揺れた
「どうやら本棚の気分は、そうでもないみたいだ。早く戻らなければ、本も本棚も傷ついてしまう。これ以上、雨が強くなる前に急ごうか」
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