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第20話 限度見本とOKNGサンプルの違いご存知ですか?
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「すいません、相談に乗ってほしいのですが」
アンニュイな昼下がり、昼食を食べて満腹になった俺は、日課である睡魔との戦いの最中だったのだが、珍しく相談窓口に客が来た。
新人冒険者のスターレットだ。
「どんなことでしょうか?」
「ショートソードのメンテナンスのタイミングが知りたいんです」
「そりゃまたどうして」
「使っているショートソードを鍛冶屋のデボネアさんのところに持っていったら、『この程度の刃こぼれでもってくるな』とか『こんなになるまで使っているな』とか言われたんですよ。どのくらいでメンテナンスに出していいのかがわからなくて」
スターレットの話を聞いていて、思いついたことがある。
要は彼女はOKとNGの判断がついていないのだから、その見本を作ってあげればいいのだ。
可能であれば、限度見本がいい。
それが無理ならOKNGサンプルだな。
限度見本というのはその名の通り限度だ。
ここまで使っていい、或いはここからが駄目というものだ。
しかし、中々限度ギリギリのサンプルを作るのが難しい。
そこでOKNGサンプルというものがある。
良い見本と悪い見本だ。
前世ではこういうものを作業現場に掲示して、判断に悩む時に使用していたものだ。
スターレットだけではなく、他の初心者にもわかるように、冒険者ギルドの壁にでも掛けておきたい。
「ちょっと待ってて、適任者を連れてくるから」
俺はシルビアを呼びに行った。
彼女は今は仕事がなく、自分の机で昼寝をしていた。
俺が起こすと不機嫌そうだ。
楽しい夢でも見ていたかな?
「何よ、今いいところだったのに」
「夢の話か?」
「そうよ」
「仕事中だぞ」
「仕事がないからいいのよ」
ごもっともです。
いや、仕事が来たのだから起きてもらわないと。
シルビアに刃こぼれの限度見本を作りたいと話、それを了承してもらった。
これから迷宮に潜って刃こぼれの見本を作りに行く事になった。
訓練用のショートソードを沢山持っていくのが辛いなと思っていたら、運搬人のコンパーノが暇そうにしていたので、彼にショートソードを運搬してもらう事にした。
こうして、俺、シルビア、コンパーノ、スターレットの4人で迷宮に潜る。
今日はそんなに混んでいないようだったので、地下3階層で適当にモンスターを討伐することにした。
「刃の角度が悪い。そんなのじゃ折れちゃうわよ」
シルビアの指導に熱が入る。
傍目に見ている俺でも、スターレットの剣の腕が悪いのがわかるほどだ。
よく今まで死ななかったな。
そういえば作業標準書スキルを他人に使ったことがなかったな。
これでは意味がないので、スターレットに使ってみるか。
「スターレット、ちょっといいか」
俺は彼女を呼び寄せて、ショートソードの作業標準書を見せた。
「これは?」
「作業標準書と言って、上級者の動きを記した説明書だよ」
「読めない文字が多いわね」
「――そうか」
しまった、識字率が低いのだった。
それでもシルビアの指導のように、悪いところだけを指摘するくらいならと、俺が作業標準書に従ってスターレットを指導した。
その後はやや上達したようで、シルビアの指導回数が減った。
刃こぼれのサンプルもできたので、ここで引き返すことにした。
これ以上戦っちゃうと、折角のサンプルが更にダメージを受けちゃうからね。
「今日はありがとうございました」
お礼を言って別れようとするスターレットに
「明日また冒険者ギルドに来てね。その時サンプルの説明をするから」
と伝えた。
今日迷宮に潜った理由を忘れてないかい?
「……はい」
どうやら本当に忘れていたようで、少し恥ずかしそうに返事をした。
顔が赤いぞ。
さて、彼女と別れた後に、冒険者ギルドに帰って、コンパーノからショートソードを受け取る。
コンパーノには報酬を渡して別れた。
シルビアと一緒にメンテナンスの限度に近いものを選び出す。
「これが一番近いわね。ここまで来たらもう使えないわ」
「ありがとう。それじゃあこれに油を塗って錆びないようにしておこうか。他のは研ぎなおししておくよ」
「できるの?」
「デボネアさんに教えてもらったから大丈夫だよ」
以前鍛冶を教えてもらったときに、研ぎ方もレクチャーを受けたのだ。
勿論作業標準書を作成してある。
「それなら明日までに研いでみてよ、腕前を確認してあげるから」
シルビアは俺の腕を疑っているようだ。
宜しい、度肝を抜いてやろうじゃないか。
まあ、刃を研ぐのはいいとして、限度見本だな。
限度見本にするショートソードは決まったので、後は表示用にラベルを作成だな。
刃こぼれの限度見本であることと、限度見本としての有効期限を明記しておく。
これをしておかないと、錆が出たら錆びの限度見本と勘違いされるし、時間が経つことで、サンプルとして使用できなくなっていることを確認するのだ。
とりあえずは1年くらいを期限としておこう。
どれくらい限度見本として使用できるのかわからないしな。
さて、後はギルド長に壁にこれを展示する許可を取らねば。
俺はギルド長の執務室に赴く。
「刃こぼれの限度見本かい。面白いことを考え付くね」
ギルド長は快く承諾してくれた。
壁には文字が読めない冒険者のためにも、ばつ印を赤で大きく書いてみた。
こんなもんでいいか。
翌日約束通りスターレットがやって来たので、限度見本の前に連れて行く。
「ここまで刃こぼれしたら研磨にだせばいいからね」
「これならわかりやすいですね」
「どうしても比較出来ないような刃こぼれが出た時はシルビアにでも相談するといいよ」
「はい」
噂をすればなんとやら。
シルビアがこちらに歩いてくる。
「アルト、これ何よ」
彼女の手には俺が昨夜研いだショートソードが握られていた。
「俺が研いだやつがどうかしたか?」
何か失敗したかな?
作業標準書通りに作業しているので、間違いはないと思うが。
「デボネアに研がせたでしょ」
「いや、自分で研いだんだけど」
「嘘よ。デボネアの腕と遜色ないじゃない」
「俺のスキルで同じ作業ができるんだよ」
それを聞いたスターレットが
「じゃあ、私のショートソードもアルトに研いで欲しい!」
と言った。
いや、俺のは商売じゃないんだけどな。
それに、デボネアさんの仕事を奪うことになるし。
――品質管理の経験値+350
ふむ、また経験値が入ったようだ。
さて、次は何のスキルを取得するかな。
またスキルポイントが余っているんだよな。
使いみちがよくわからないから、取得するスキルが決まらないのだ。
目の前でシルビアとスターレットが言い争いを始めたのを横目に、派生スキルを眺めて次のスキルを何にするか考えていた。
※作者の愚痴
お前の会社の品証が「限度見本は弊社と取り交わした物のみを指す言葉です」と言ったのに、工場品管が「自社で判断して限度見本を作成されないのですか」と言ってくるのはどういう事なのでしょうか。反論するのも面倒なので、2つの基準を自分の脳内で処理して限度見本を作成しているので、細かい監査を受けた時にどうしようかとビクビクしております。悪いのは俺じゃない。
アンニュイな昼下がり、昼食を食べて満腹になった俺は、日課である睡魔との戦いの最中だったのだが、珍しく相談窓口に客が来た。
新人冒険者のスターレットだ。
「どんなことでしょうか?」
「ショートソードのメンテナンスのタイミングが知りたいんです」
「そりゃまたどうして」
「使っているショートソードを鍛冶屋のデボネアさんのところに持っていったら、『この程度の刃こぼれでもってくるな』とか『こんなになるまで使っているな』とか言われたんですよ。どのくらいでメンテナンスに出していいのかがわからなくて」
スターレットの話を聞いていて、思いついたことがある。
要は彼女はOKとNGの判断がついていないのだから、その見本を作ってあげればいいのだ。
可能であれば、限度見本がいい。
それが無理ならOKNGサンプルだな。
限度見本というのはその名の通り限度だ。
ここまで使っていい、或いはここからが駄目というものだ。
しかし、中々限度ギリギリのサンプルを作るのが難しい。
そこでOKNGサンプルというものがある。
良い見本と悪い見本だ。
前世ではこういうものを作業現場に掲示して、判断に悩む時に使用していたものだ。
スターレットだけではなく、他の初心者にもわかるように、冒険者ギルドの壁にでも掛けておきたい。
「ちょっと待ってて、適任者を連れてくるから」
俺はシルビアを呼びに行った。
彼女は今は仕事がなく、自分の机で昼寝をしていた。
俺が起こすと不機嫌そうだ。
楽しい夢でも見ていたかな?
「何よ、今いいところだったのに」
「夢の話か?」
「そうよ」
「仕事中だぞ」
「仕事がないからいいのよ」
ごもっともです。
いや、仕事が来たのだから起きてもらわないと。
シルビアに刃こぼれの限度見本を作りたいと話、それを了承してもらった。
これから迷宮に潜って刃こぼれの見本を作りに行く事になった。
訓練用のショートソードを沢山持っていくのが辛いなと思っていたら、運搬人のコンパーノが暇そうにしていたので、彼にショートソードを運搬してもらう事にした。
こうして、俺、シルビア、コンパーノ、スターレットの4人で迷宮に潜る。
今日はそんなに混んでいないようだったので、地下3階層で適当にモンスターを討伐することにした。
「刃の角度が悪い。そんなのじゃ折れちゃうわよ」
シルビアの指導に熱が入る。
傍目に見ている俺でも、スターレットの剣の腕が悪いのがわかるほどだ。
よく今まで死ななかったな。
そういえば作業標準書スキルを他人に使ったことがなかったな。
これでは意味がないので、スターレットに使ってみるか。
「スターレット、ちょっといいか」
俺は彼女を呼び寄せて、ショートソードの作業標準書を見せた。
「これは?」
「作業標準書と言って、上級者の動きを記した説明書だよ」
「読めない文字が多いわね」
「――そうか」
しまった、識字率が低いのだった。
それでもシルビアの指導のように、悪いところだけを指摘するくらいならと、俺が作業標準書に従ってスターレットを指導した。
その後はやや上達したようで、シルビアの指導回数が減った。
刃こぼれのサンプルもできたので、ここで引き返すことにした。
これ以上戦っちゃうと、折角のサンプルが更にダメージを受けちゃうからね。
「今日はありがとうございました」
お礼を言って別れようとするスターレットに
「明日また冒険者ギルドに来てね。その時サンプルの説明をするから」
と伝えた。
今日迷宮に潜った理由を忘れてないかい?
「……はい」
どうやら本当に忘れていたようで、少し恥ずかしそうに返事をした。
顔が赤いぞ。
さて、彼女と別れた後に、冒険者ギルドに帰って、コンパーノからショートソードを受け取る。
コンパーノには報酬を渡して別れた。
シルビアと一緒にメンテナンスの限度に近いものを選び出す。
「これが一番近いわね。ここまで来たらもう使えないわ」
「ありがとう。それじゃあこれに油を塗って錆びないようにしておこうか。他のは研ぎなおししておくよ」
「できるの?」
「デボネアさんに教えてもらったから大丈夫だよ」
以前鍛冶を教えてもらったときに、研ぎ方もレクチャーを受けたのだ。
勿論作業標準書を作成してある。
「それなら明日までに研いでみてよ、腕前を確認してあげるから」
シルビアは俺の腕を疑っているようだ。
宜しい、度肝を抜いてやろうじゃないか。
まあ、刃を研ぐのはいいとして、限度見本だな。
限度見本にするショートソードは決まったので、後は表示用にラベルを作成だな。
刃こぼれの限度見本であることと、限度見本としての有効期限を明記しておく。
これをしておかないと、錆が出たら錆びの限度見本と勘違いされるし、時間が経つことで、サンプルとして使用できなくなっていることを確認するのだ。
とりあえずは1年くらいを期限としておこう。
どれくらい限度見本として使用できるのかわからないしな。
さて、後はギルド長に壁にこれを展示する許可を取らねば。
俺はギルド長の執務室に赴く。
「刃こぼれの限度見本かい。面白いことを考え付くね」
ギルド長は快く承諾してくれた。
壁には文字が読めない冒険者のためにも、ばつ印を赤で大きく書いてみた。
こんなもんでいいか。
翌日約束通りスターレットがやって来たので、限度見本の前に連れて行く。
「ここまで刃こぼれしたら研磨にだせばいいからね」
「これならわかりやすいですね」
「どうしても比較出来ないような刃こぼれが出た時はシルビアにでも相談するといいよ」
「はい」
噂をすればなんとやら。
シルビアがこちらに歩いてくる。
「アルト、これ何よ」
彼女の手には俺が昨夜研いだショートソードが握られていた。
「俺が研いだやつがどうかしたか?」
何か失敗したかな?
作業標準書通りに作業しているので、間違いはないと思うが。
「デボネアに研がせたでしょ」
「いや、自分で研いだんだけど」
「嘘よ。デボネアの腕と遜色ないじゃない」
「俺のスキルで同じ作業ができるんだよ」
それを聞いたスターレットが
「じゃあ、私のショートソードもアルトに研いで欲しい!」
と言った。
いや、俺のは商売じゃないんだけどな。
それに、デボネアさんの仕事を奪うことになるし。
――品質管理の経験値+350
ふむ、また経験値が入ったようだ。
さて、次は何のスキルを取得するかな。
またスキルポイントが余っているんだよな。
使いみちがよくわからないから、取得するスキルが決まらないのだ。
目の前でシルビアとスターレットが言い争いを始めたのを横目に、派生スキルを眺めて次のスキルを何にするか考えていた。
※作者の愚痴
お前の会社の品証が「限度見本は弊社と取り交わした物のみを指す言葉です」と言ったのに、工場品管が「自社で判断して限度見本を作成されないのですか」と言ってくるのはどういう事なのでしょうか。反論するのも面倒なので、2つの基準を自分の脳内で処理して限度見本を作成しているので、細かい監査を受けた時にどうしようかとビクビクしております。悪いのは俺じゃない。
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