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第78話 衝突悪質労働者
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どこにでも問題児はいるもんですね。
ルールを守らないやつは即刻解雇して欲しい。
あと、喧嘩し始めるやつ。
それでは本編いってみましょう。
「プリオラのせいで怪我人が?」
「ええ、お父様の冒険者ギルドで喧嘩になっていますわ」
オーリスが相談窓口に来たのだが、そこでもたらされた情報では、遂に他の冒険者と喧嘩になってしまったそうだ。
今まではグレーゾーンだったので、相手も我慢していたのだが、今回は事情が違うらしい。
「プリオラ達が『助太刀』をしようとして、相手のパーティーの後衛と揉め始めたのに前衛が気を取られて、モンスターの攻撃を食らって怪我をしたと」
「はい。強引な『助太刀』は噂になっていて、そのパーティーの後衛も最初から喧嘩腰で対応したので、双方ヒートアップしてしまい、前衛もそれで注意が後ろに向いてしまったようですわ」
まあありがちだな。
作業をする際に、隣で喧嘩されてしまうとそのせいで気が散る。
というか、いつもと違う状況で作業するのは不良につながる。
「それはそれで前衛も未熟ね」
とシルビア。
まあそれもわかる。
監査時に緊張でいつもの作業ができなくなるのは新人に多い。
怪我をした前衛に実力がないのも事実だ。
そうはいっても、だから仕方がないでは済まされないが。
「今回の事でプリオラ達に処分を求める声が上がっていますが、直接争って怪我をさせた訳ではないのでどう処分したらよいのかお父様も悩んでおられます」
「迷宮に入れずに、街中でとっちめてやればいいのよ」
「確かに異常品は隔離しないとね」
そう、NGは赤箱に隔離だ。
それを人相手にどうするかっていうのはあるけど。
それと街中でとっちめると、色々と問題があるぞ。
しかし、問題社員の取り扱いとか懐かしいな。
兄貴が地元で有名な〇力団っていう社員がいたが、虎の威を借りる狐といった感じで、班長の言うことを聞かずに手を焼いたもんだ。
そいつが客先に不良を流出させても、真因の対策をできなかったのだ。
暴対法バンザーイ。
「それじゃあ、助太刀行為についての決まりを作って、それの違反の現場を押さえて処分でいこうか」
工程パトロールで異常作業を現行犯で捕まえる事にした。
暫くはプリオラ達が迷宮に潜る後をつけることになってしまうが、毎日の地道な活動が品質向上に繋がるのだ。
はて、この行動は冒険者ギルドの仕事なのだろうか。
カイロン伯爵の冒険者ギルドがやるべきことのような気もするが。
「早速お父様にお話して、助太刀についてのルールを作りますわ。助けられる側の同意なしに、助太刀することを禁じて、同意なしで助太刀した場合はドロップアイテムの所有権はないとすればよろしいかしら」
「そうだね」
「そうなればプリオラも稼げなくなるから、この街から出ていくでしょうね」
とシルビアは言った後に
「実力はあるのに楽をしようとして……」
と小声で口にした。
昔の仲間だし、特別な感情があるのかな。
そして、翌日にはカイロン男爵の冒険者ギルドで助太刀に関するルールが発表された。
これにより合意なき助太刀は無効となることになった。
これでプリオラも諦めるかと思ったが、
「どうするんだよプリオラ」
「はん、心配することはないよ。迷宮でのやり取りに証人なんていないんだから、水掛け論に持ち込んでしまえばいいだけさ」
と仲間に嘯うそぶいた。
何故俺がそれを知っているのかというと、斥候の作業標準書でプリオラ達を見張っていたからである。
「そういうわけで、止めるつもりはないみたいだね」
「実力で排除するしかないわね」
俺はシルビアに見てきたことを伝えたら、彼女はそう結論付けた。
「予定通り、迷宮でプリオラ達を尾行して現場を押さえるって事か」
「そうね。あんたと二人で暫くは迷宮ね」
「二人?」
「十分でしょ」
プリオラのパーティーは4人編成だ。
剣士のプリオラと、斥候、戦士、魔法使いとなっている。
本格的に冒険をするなら、回復役や弓手などの遠隔攻撃が出来るメンバーが欲しいところだ。
彼女達の編成だと、横殴りからの分け前折半が丁度いい。
だからそうなるのか。
いや、それでも俺とシルビアの二人で戦うことになったら危ないぞ。
「あなたは死なないわ。私が守るもの」
「あ、はい……」
そんなわけで、断りきれずにシルビアと一緒にプリオラの後を尾行する日々が始まった。
というか、直ぐに横殴りの現場に遭遇したので、一日で終了なのだが。
尾行初日早速迷宮内でプリオラ達が助太刀という名の横殴りをした。
彼我の距離は30メートルあり、隠密行動ができないシルビアは更に後ろからついて来てもらったので、プリオラに気が付かれることは無かった。
当の現場は地下5階層である。
他のパーティーが迷宮鮟鱇と戦っているのに割り込んだ。
迷宮鮟鱇とは、陸棲の鮟鱇で肝がとても美味しいやつだ。
高級食材として冒険者が狙っているが、海の鮟鱇と同じで鋭い牙をもっており、初心者だと危ないモンスターなのである。
そんなわけで、横取りしたくなるのも解る。
許せはしないが。
「助太刀するわ」
「いや、いい」
「了解!」
プリオラは冒険者に断られたのにも関わらず、どういうわけか了解と叫んで助太刀する。
おいおい。
「なにをする。やめろ」
冒険者の男が非難の声をあげた。
「『いい』っていわれたから助太刀しているのよ」
とプリオラ。
「結構です」というのが誉め言葉の意味だと思ったという押し売りさんみたいな論法だな。
こちらとしては、しっかりと現場を押さえたので、もういいだろう。
離れた場所にいるシルビアに合図をした。
いよいよ対決だ。
「そこまでよ」
そういって、近づくシルビア。
プリオラがこちらをちらりと見た。
「プリオラ、あんたの不正行為はこの記録の水晶にばっちり収められたわ。もう言い逃れは出来ないわよ」
と、水晶を掴んで体の前に突き出すシルビア。
記録の水晶とは、まあビデオカメラみたいなもんだ。
映像を記録して、好きな時に再生できる。
いつのまにそんなものを。
「そう、それなら仕方ないわね。シルビアもその他の目撃者もここでモンスターに殺された事になるわ」
プリオラはそう言うとこちらに向かって構えた。
迷宮鮟鱇はどうするんだ。
と思ったが、プリオラのパーティーの魔法使いの攻撃であっさり倒された。
中々やるな。
銀等級のシルビアの仲間だったというので、それなりの強さなのだろうとは思っていたが、迷宮鮟鱇を苦も無く倒すとは、銀等級相当で間違いないだろう。
それに対してこちらは俺とシルビアに加え、鉄等級の冒険者だ。
口封じされてしまう可能性が高い。
「アルト、あれを!」
シルビアが俺に指示を出した。
俺はカビーネから教えてもらった土壁の魔法で、プリオラ達を囲むように壁を作った。
「こんなもの」
単なる土壁と思って、戦士の女がウォーハンマーで壁を叩く。
バン!!!
ウォーハンマーが当たった瞬間、土壁は爆発音と閃光をまき散らした。
そう、俺特製のピクリン酸配合の土壁だ。
衝撃を与えれば爆発する。
さらに、その爆風で他の壁が誘爆。
辺りは大惨事だ。
衝撃で魔法の土壁が消え去り、プリオラ達が倒れた姿で現れる。
「やったか?」
「不用意に近づくと危ないわよ」
シルビアが油断しないように、俺に注意をする。
「そうだね」
それもそうなので、ゲージ作成スキルで作った各種ゲージを相手の体の上にのせ、自由を奪ってやった。
これなら気絶した振りでも、身動きできないだろう。
シルビアが警戒しながら近づき、本当に気絶しているのを確認して全員を捕縛した。
というか、死んでいなくてよかった。
ピクリン酸の量を減らしておいたから大丈夫だろうとは思ったが。
「さて、ここからはこいつらの尋問ね」
シルビアは横殴りされていたパーティーに、鮟鱇を回収して街へ戻るように指示した。
この場の責任は自分達にあるからと、暗に伝えたのである。
冒険者同士の戦いの後、拷問とかになったら面倒なので、相手も理解して去ってくれた。
プリオラの意識の回復を待って、尋問が開始される。
尚、プリオラ達は縛られて地面に転がされている。
「どうしてまたここに戻って来たのよ」
「……」
シルビアが訊いても、プリオラは黙ったままだ。
「仕方が無いわね。アルト、そっちで転がっている奴の指を一本切り落として」
「おう」
シルビアが俺に指図する。
俺は出来る限り悪そうな笑みを浮かべて、倒れている戦士の手にショートソードを当てた。
「まってくれ」
プリオラはやっと口を開いた。
「話す気になった?」
そう聞かれて、無言で首肯する。
「ステラの迷宮で、昔みたいに横取りをして欲しいって頼まれたのよ。そうして冒険者ギルドを引っ掻き回してくれってね」
「誰に?」
「知らないわ。相手も馬鹿じゃないから本当の名前なんて名乗らないでしょ」
「嘘じゃないわよね」
「確かめようもないわ。ただ、オッティって名乗っていたわね」
「「オッティ!!」」
思わぬ名前に、俺とシルビアがハモッた。
まさか、本名で依頼したのか?
「場所は、依頼を受けた場所はどこだ?」
今度は俺が質問した。
「フォルテ公爵の領だったかな」
「あー」
多分本人だな。
俺の周囲の人物の過去を調べて、嫌がらせをできそうな事を探していたのだろう。
シルビアの昔の仲間が偶々領内にいたので、今回の事を思いついたんだろう。
「話せることはそれだけよ」
「聞きたいこともないしね」
「じゃあ、どうするの?証拠も撮られたんだから言い逃れもできないし、命も狙ったんだからそれ相応の報復は覚悟しているわ」
プリオラは観念したようだ。
「最期に言い残すことはある?」
シルビアが縛られて、地面に転がされているプリオラを睨む。
「こんな終わり方じゃなくて、もう一回あんたとどっちが強いか確かめたかったわ」
「――そう」
その言葉を聞いてシルビアが少し悲しそうな顔をした気がした。
俺のスキルであっという間に倒しちゃったからね。
やはり拳と拳で戦っていたら改心してたりしたのかな?
「今回は見逃してあげるわ。まじめにやる気があるならこの街に残ってもいいし、出ていくなら止めはしないわ」
「え、いいの?」
シルビアの思いがけない提案に、思わず俺が聞き返してしまった。
「記録の水晶なんて嘘よ。これはマジックアイテムじゃないただの水晶。証拠にはならないんだもの」
聞いてませんが。
俺も騙されていたってことだな。
そんなわけで、プリオラ達のパーティーは解散し、プリオラだけがステラに残ることになった。
今までの行いに対してお詫びしたことで、冒険者ギルドの出入り禁止を条件付きで解除された。
条件というのは、再び同じことをしたら即刻追放ということだ。
24時間以内にステラから退去しない場合は、犯罪奴隷となる厳しい条件である。
それでもいままでやった事を考えたら、寛大な処分だと思うけどね。
シルビアが色々と尽力したとかしないとか。
彼女はどうも、プリオラの改心を確信したようだった。
俺だったら、自然薯の長さで見極めるところだが、どうやら自然薯が判断基準ではなかったようである。
※作者の独り言
最近空気が乾燥してきて、出荷検査のため箱に手を入れると静電気が襲ってきますね。
ついでに、家のトイプードルもさわるとバチバチ来るようになりました。
お前は黄色と黒の電気出すアレか?
エレキングだな。
ルールを守らないやつは即刻解雇して欲しい。
あと、喧嘩し始めるやつ。
それでは本編いってみましょう。
「プリオラのせいで怪我人が?」
「ええ、お父様の冒険者ギルドで喧嘩になっていますわ」
オーリスが相談窓口に来たのだが、そこでもたらされた情報では、遂に他の冒険者と喧嘩になってしまったそうだ。
今まではグレーゾーンだったので、相手も我慢していたのだが、今回は事情が違うらしい。
「プリオラ達が『助太刀』をしようとして、相手のパーティーの後衛と揉め始めたのに前衛が気を取られて、モンスターの攻撃を食らって怪我をしたと」
「はい。強引な『助太刀』は噂になっていて、そのパーティーの後衛も最初から喧嘩腰で対応したので、双方ヒートアップしてしまい、前衛もそれで注意が後ろに向いてしまったようですわ」
まあありがちだな。
作業をする際に、隣で喧嘩されてしまうとそのせいで気が散る。
というか、いつもと違う状況で作業するのは不良につながる。
「それはそれで前衛も未熟ね」
とシルビア。
まあそれもわかる。
監査時に緊張でいつもの作業ができなくなるのは新人に多い。
怪我をした前衛に実力がないのも事実だ。
そうはいっても、だから仕方がないでは済まされないが。
「今回の事でプリオラ達に処分を求める声が上がっていますが、直接争って怪我をさせた訳ではないのでどう処分したらよいのかお父様も悩んでおられます」
「迷宮に入れずに、街中でとっちめてやればいいのよ」
「確かに異常品は隔離しないとね」
そう、NGは赤箱に隔離だ。
それを人相手にどうするかっていうのはあるけど。
それと街中でとっちめると、色々と問題があるぞ。
しかし、問題社員の取り扱いとか懐かしいな。
兄貴が地元で有名な〇力団っていう社員がいたが、虎の威を借りる狐といった感じで、班長の言うことを聞かずに手を焼いたもんだ。
そいつが客先に不良を流出させても、真因の対策をできなかったのだ。
暴対法バンザーイ。
「それじゃあ、助太刀行為についての決まりを作って、それの違反の現場を押さえて処分でいこうか」
工程パトロールで異常作業を現行犯で捕まえる事にした。
暫くはプリオラ達が迷宮に潜る後をつけることになってしまうが、毎日の地道な活動が品質向上に繋がるのだ。
はて、この行動は冒険者ギルドの仕事なのだろうか。
カイロン伯爵の冒険者ギルドがやるべきことのような気もするが。
「早速お父様にお話して、助太刀についてのルールを作りますわ。助けられる側の同意なしに、助太刀することを禁じて、同意なしで助太刀した場合はドロップアイテムの所有権はないとすればよろしいかしら」
「そうだね」
「そうなればプリオラも稼げなくなるから、この街から出ていくでしょうね」
とシルビアは言った後に
「実力はあるのに楽をしようとして……」
と小声で口にした。
昔の仲間だし、特別な感情があるのかな。
そして、翌日にはカイロン男爵の冒険者ギルドで助太刀に関するルールが発表された。
これにより合意なき助太刀は無効となることになった。
これでプリオラも諦めるかと思ったが、
「どうするんだよプリオラ」
「はん、心配することはないよ。迷宮でのやり取りに証人なんていないんだから、水掛け論に持ち込んでしまえばいいだけさ」
と仲間に嘯うそぶいた。
何故俺がそれを知っているのかというと、斥候の作業標準書でプリオラ達を見張っていたからである。
「そういうわけで、止めるつもりはないみたいだね」
「実力で排除するしかないわね」
俺はシルビアに見てきたことを伝えたら、彼女はそう結論付けた。
「予定通り、迷宮でプリオラ達を尾行して現場を押さえるって事か」
「そうね。あんたと二人で暫くは迷宮ね」
「二人?」
「十分でしょ」
プリオラのパーティーは4人編成だ。
剣士のプリオラと、斥候、戦士、魔法使いとなっている。
本格的に冒険をするなら、回復役や弓手などの遠隔攻撃が出来るメンバーが欲しいところだ。
彼女達の編成だと、横殴りからの分け前折半が丁度いい。
だからそうなるのか。
いや、それでも俺とシルビアの二人で戦うことになったら危ないぞ。
「あなたは死なないわ。私が守るもの」
「あ、はい……」
そんなわけで、断りきれずにシルビアと一緒にプリオラの後を尾行する日々が始まった。
というか、直ぐに横殴りの現場に遭遇したので、一日で終了なのだが。
尾行初日早速迷宮内でプリオラ達が助太刀という名の横殴りをした。
彼我の距離は30メートルあり、隠密行動ができないシルビアは更に後ろからついて来てもらったので、プリオラに気が付かれることは無かった。
当の現場は地下5階層である。
他のパーティーが迷宮鮟鱇と戦っているのに割り込んだ。
迷宮鮟鱇とは、陸棲の鮟鱇で肝がとても美味しいやつだ。
高級食材として冒険者が狙っているが、海の鮟鱇と同じで鋭い牙をもっており、初心者だと危ないモンスターなのである。
そんなわけで、横取りしたくなるのも解る。
許せはしないが。
「助太刀するわ」
「いや、いい」
「了解!」
プリオラは冒険者に断られたのにも関わらず、どういうわけか了解と叫んで助太刀する。
おいおい。
「なにをする。やめろ」
冒険者の男が非難の声をあげた。
「『いい』っていわれたから助太刀しているのよ」
とプリオラ。
「結構です」というのが誉め言葉の意味だと思ったという押し売りさんみたいな論法だな。
こちらとしては、しっかりと現場を押さえたので、もういいだろう。
離れた場所にいるシルビアに合図をした。
いよいよ対決だ。
「そこまでよ」
そういって、近づくシルビア。
プリオラがこちらをちらりと見た。
「プリオラ、あんたの不正行為はこの記録の水晶にばっちり収められたわ。もう言い逃れは出来ないわよ」
と、水晶を掴んで体の前に突き出すシルビア。
記録の水晶とは、まあビデオカメラみたいなもんだ。
映像を記録して、好きな時に再生できる。
いつのまにそんなものを。
「そう、それなら仕方ないわね。シルビアもその他の目撃者もここでモンスターに殺された事になるわ」
プリオラはそう言うとこちらに向かって構えた。
迷宮鮟鱇はどうするんだ。
と思ったが、プリオラのパーティーの魔法使いの攻撃であっさり倒された。
中々やるな。
銀等級のシルビアの仲間だったというので、それなりの強さなのだろうとは思っていたが、迷宮鮟鱇を苦も無く倒すとは、銀等級相当で間違いないだろう。
それに対してこちらは俺とシルビアに加え、鉄等級の冒険者だ。
口封じされてしまう可能性が高い。
「アルト、あれを!」
シルビアが俺に指示を出した。
俺はカビーネから教えてもらった土壁の魔法で、プリオラ達を囲むように壁を作った。
「こんなもの」
単なる土壁と思って、戦士の女がウォーハンマーで壁を叩く。
バン!!!
ウォーハンマーが当たった瞬間、土壁は爆発音と閃光をまき散らした。
そう、俺特製のピクリン酸配合の土壁だ。
衝撃を与えれば爆発する。
さらに、その爆風で他の壁が誘爆。
辺りは大惨事だ。
衝撃で魔法の土壁が消え去り、プリオラ達が倒れた姿で現れる。
「やったか?」
「不用意に近づくと危ないわよ」
シルビアが油断しないように、俺に注意をする。
「そうだね」
それもそうなので、ゲージ作成スキルで作った各種ゲージを相手の体の上にのせ、自由を奪ってやった。
これなら気絶した振りでも、身動きできないだろう。
シルビアが警戒しながら近づき、本当に気絶しているのを確認して全員を捕縛した。
というか、死んでいなくてよかった。
ピクリン酸の量を減らしておいたから大丈夫だろうとは思ったが。
「さて、ここからはこいつらの尋問ね」
シルビアは横殴りされていたパーティーに、鮟鱇を回収して街へ戻るように指示した。
この場の責任は自分達にあるからと、暗に伝えたのである。
冒険者同士の戦いの後、拷問とかになったら面倒なので、相手も理解して去ってくれた。
プリオラの意識の回復を待って、尋問が開始される。
尚、プリオラ達は縛られて地面に転がされている。
「どうしてまたここに戻って来たのよ」
「……」
シルビアが訊いても、プリオラは黙ったままだ。
「仕方が無いわね。アルト、そっちで転がっている奴の指を一本切り落として」
「おう」
シルビアが俺に指図する。
俺は出来る限り悪そうな笑みを浮かべて、倒れている戦士の手にショートソードを当てた。
「まってくれ」
プリオラはやっと口を開いた。
「話す気になった?」
そう聞かれて、無言で首肯する。
「ステラの迷宮で、昔みたいに横取りをして欲しいって頼まれたのよ。そうして冒険者ギルドを引っ掻き回してくれってね」
「誰に?」
「知らないわ。相手も馬鹿じゃないから本当の名前なんて名乗らないでしょ」
「嘘じゃないわよね」
「確かめようもないわ。ただ、オッティって名乗っていたわね」
「「オッティ!!」」
思わぬ名前に、俺とシルビアがハモッた。
まさか、本名で依頼したのか?
「場所は、依頼を受けた場所はどこだ?」
今度は俺が質問した。
「フォルテ公爵の領だったかな」
「あー」
多分本人だな。
俺の周囲の人物の過去を調べて、嫌がらせをできそうな事を探していたのだろう。
シルビアの昔の仲間が偶々領内にいたので、今回の事を思いついたんだろう。
「話せることはそれだけよ」
「聞きたいこともないしね」
「じゃあ、どうするの?証拠も撮られたんだから言い逃れもできないし、命も狙ったんだからそれ相応の報復は覚悟しているわ」
プリオラは観念したようだ。
「最期に言い残すことはある?」
シルビアが縛られて、地面に転がされているプリオラを睨む。
「こんな終わり方じゃなくて、もう一回あんたとどっちが強いか確かめたかったわ」
「――そう」
その言葉を聞いてシルビアが少し悲しそうな顔をした気がした。
俺のスキルであっという間に倒しちゃったからね。
やはり拳と拳で戦っていたら改心してたりしたのかな?
「今回は見逃してあげるわ。まじめにやる気があるならこの街に残ってもいいし、出ていくなら止めはしないわ」
「え、いいの?」
シルビアの思いがけない提案に、思わず俺が聞き返してしまった。
「記録の水晶なんて嘘よ。これはマジックアイテムじゃないただの水晶。証拠にはならないんだもの」
聞いてませんが。
俺も騙されていたってことだな。
そんなわけで、プリオラ達のパーティーは解散し、プリオラだけがステラに残ることになった。
今までの行いに対してお詫びしたことで、冒険者ギルドの出入り禁止を条件付きで解除された。
条件というのは、再び同じことをしたら即刻追放ということだ。
24時間以内にステラから退去しない場合は、犯罪奴隷となる厳しい条件である。
それでもいままでやった事を考えたら、寛大な処分だと思うけどね。
シルビアが色々と尽力したとかしないとか。
彼女はどうも、プリオラの改心を確信したようだった。
俺だったら、自然薯の長さで見極めるところだが、どうやら自然薯が判断基準ではなかったようである。
※作者の独り言
最近空気が乾燥してきて、出荷検査のため箱に手を入れると静電気が襲ってきますね。
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お前は黄色と黒の電気出すアレか?
エレキングだな。
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これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。
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