冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

文字の大きさ
94 / 439

第93話 MMRの魅力は読者投稿

しおりを挟む
「これが試作品か」

 俺はシルビアと一緒にギルド長に呼ばれて、執務室にいた。
 この前思い付いたスタングレネードっぽいマジックアイテムの試作品が完成したと謂うのだ。
 これを迷宮で試しに使ってみて、その効果を確認してほしいと言われた。
 言い出したのは自分なので、当然引き受ける。
 試作品は二個だ。
 リレーのバトン位のサイズの筒である。
 こいつに魔力を注ぎ込むと、5秒後に強い光と爆発音が出ると謂う。
 効果は一瞬だが、これなら光に強いモンスターも音で怯ませる事が出来るはずだ。

「すぐに使ってみたいわね」

 そう言うシルビアに俺は頷く。
 被害が減らせるかもしれないアイテムだ。
 早速使ってみることにした。
 使用はトレインの発生が多い地下10階層に決めた。
 ここで歯止め効果があるなら、販売に踏み切る事が出来る。
 シルビアと一緒にモンスターを集めて、トレイン状態にした。
 いよいよだな。

「対ショック・対閃光防御」
「何よ、それ」
「いや、なんとなく言わないといけない気がして」

 強烈な光を出す兵器を使うときのお約束だ。
 そして、魔力を注ぎ込んだ筒を足元に落とす。
 待つこと5秒
 耳を手で塞ぎ、音に備える。

 ――ズガガーン

 轟音が辺りに響き渡る。
 耳を塞いだ手の間からも、その音が侵入してきた。
 背後での閃光は、俺達の進行方向を強く照らした。
 俺達を追いかけてきた足音は、聞こえなくなる。
 振り返ってみれば、目をつぶり耳を手で押さえるゴブリンやオーク。
 虫系のモンスターもその場に立ち止まっていた。

「成功ね」
「これなら逃げる時間を稼げそうだな」

 シルビアと視線を交わして頷く。

「さて、あとはこいつらを片付けないとね」

 そう、このまま放置するのはよくないので、シルビアと二人で、残らず葬りさってやった。
 そうして、報告の為冒険者ギルドへと戻る。

「効果はかなりあります。ただ、使い方を間違うと自分達の目と耳も使い物にならなくなるので、十分な指導が必要ですね」

 ギルド長にはそう報告した。
 対策でポカヨケを新規で設置したり、今までに無かった作業を追加した場合、作業者の習熟が必要である。
 今回のマジックアイテムも、当然そうなってくる。
 使ったはいいが、自分達も動けなくなったのでは意味がないからな。
 必ず逃げながら使う必要がある。
 サングラスでも有れば事情は変わってくるが、そんなもんはない……
 いや、ホーマーが作ることができたかな?
 どちらにせよ、一般的ではないな。
 こうして、トレインを未然に防ぐマジックアイテムは「スタンフラッシュ」と謂う名前で発売された。

「これでひとつは問題が解決だな」

 俺はそう思っていたが、シルビアの表情は険しい。

「どうしたの?」
「本当にこれで終わりかしら」
「どういう事だよ、キバヤシ?!」
「キバヤシ?」

 つい、シルビアの事をキバヤシと呼んでしまったため、不思議そうな目で見られてしまった。
 このシチュエーションなら、一度はそう言わなければと謂う義務感に駆られた結果だな。

「トレインを作る遺伝子を持ったモンスターが作られていたとしたら?」

 険しい顔のシルビアが俺に言う。
 遺伝子って概念あるのかよ!

「これを見てください」

 いいタイミングで、手紙を持ったレオーネがやって来た。
 お前はタナカかっ!

「こ、これは……」

 その手紙には青いバラを発見したという冒険者の話が書いてあった。

「青いバラは自然界には存在しないの」
「それってどういう事だよ」
「遺伝子組み換え技術が確立されたっていう事よ!」
「な、何だってー!!」



「……起きなさい」
「ん?」
「起きなさいよ!」

 気がつくと俺はシルビアに肩を揺すられていた。

「次の事故対策を何にするか、冒険者からの手紙で考えようって自分で言ったのに、寝るなんて酷いわよ」
「そうですよ。お姉様と私だけでやりますから、出ていってください」

 そうだ、今はスタンフラッシュの成功で、次の対策に期待が集まっているので、冒険者から対策してもらいたい事故について、手紙をもらった中からどれにするかを選んでいる最中だった。
 文字を読んでいて眠くなって、寝てしまったようだな。
 あんな夢を見るとは、やはり迷宮事故対策調査班と謂う名前が悪い。

「次はこの迷宮盗賊対策ね」

 シルビアはそう言うと、一通の手紙を手で掴んだ。
 迷宮盗賊とはその名の通り、迷宮に巣くう盗賊だ。
 冒険者の戦利品を横取りしたり、時には冒険者を誘拐したりする厄介者だ。
 金で人質を解放してくれるので、重大事故にはならないのだが、いつか冒険者に大きな被害が出そうではある。
 ヒヤリハット対策の観点から、見過ごすことは出来ないな。

「次回『迷宮盗賊退治』、君は刻の涙を見る」
「アルト、何を言ってるの?」
「……はい」


※作者の独り言
MMR今読み返しても面白いよね。
是非とも半人半豚を登場させてみたい。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...