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第161話 レイアウト
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今日もグレイスとオッティがステラの街にやってきた。
いつもと違うのは新しい馬車である。
これはついにエアコンを装備した馬車の試作1号車である。
「エアコンサイクルを実現した世界初の馬車だ。コンプレッサーなしでも冷媒を循環できるように、新たな付与魔法を開発してもらっている。魔法で水流を作れるんだぞ」
得意げに語るオッティ。
だが、そのテクノロジーを使えば、馬車である必要はないんじゃなかろうか。
蒸気機関が完成しているのだし、馬いらないじゃんと思ったのだが、
「そんなことをしたら、内燃機関や外燃機関にスペースを取られるだろうが」
と言われてしまった。
「ねえ、意味が分からないんだけど」
話に入ってこられないグレイスが不満そうにしている。
「自動車の設計っていうのは、まずデザイナーが絵をかいて、その後エンジンを置く場所を決めるんだ。マフラーやエアコンなんていうのは、最後に余った空間を通すことになるんだ。だから、オッティはエンジンは車に搭載しないで、エアコン配管を自由に配置したいっていうことだよ」
「それって重要なの?」
「ああ、重要だ」
オッティの言い方に熱が入る。
「だいたい、後部座席へ風を送っている配管なんて、毎回一体成型にしたり、小分けにしたりと設計思想なんて欠片もない。単に組み立て時の工数を意識して、部品メーカーに負担を押し付けているだけだ。それに、エアコンの冷媒だって三年間で空になる設計なのは、無理な経路でOリングが増えているからだろ。Oリングの圧縮率はメーカーによってまちまちだが、結局漏れなんて防げないんだぞ。漏れを無くすには、継ぎ手を無くすしか無いんだ。それなのに、あんなレイアウトにしやがって!」
※個人の感想です
「マフラーだって安くしろというのに、あいているところを通すために、曲げ数が多くなって複雑な形状にして、部品の単価を上げているのは車両メーカーだろう。安くしたいなら直管マフラーにすればいいんだ。馬鹿なんじゃないの?」
※個人の感想です
「まあまあ。前世の愚痴はそれくらいにして、この馬車を説明してほしい」
このままだと収拾がつかなくなりそうだったので、オッティを落ち着かせるためにも話題を変えた。
「まずはエアコンユニットを床下に設置してある。これによって前後の長さを変える必要はなくなった。車重はユニット分重くなっているが、馬車馬の頭数を増やすほどでもない。ユニットは可能な限りアルミパイプにしかたから、重量もさほど増えてはいないぞ。一番は冷媒として使用している水の重量だな。それと馬車の剛性を上げるために、ビーム(梁)を追加した」
その言葉に俺が反応する。
「ビームって重要保安部品じゃないのか?規格はどうするんだよ」
「なあ、アルト。ここは異世界だぞ。ビームの強度なんて規格はないんだ。溶接不良で呼び出しを食らうことなんてないんだぞ。ビーム?平気だ。そう、ビーム平気なんだよ!」
オッティのくだらないギャグにつき合わされて損した。
グレイスはぽかんとしているので、説明してやるか。
「グレイス、ビームっていうのは自動車だと梁のことなんだ。ロボットの兵器の事じゃないぞ。ドアの内張りをはがせば、鉄パイプが補強として溶接されている。これは横からの衝撃から乗員を守るための部品なんだ。重要保安部品だから、管理がとてもうるさいんだ。それで不具合を何度も出して、俺もオッティもいい思い出がない。それで平気と兵器をかけたギャグを言いたかったわけだ。察してやってくれ」
グレイスの何とも言えないひきつった笑いが印象的だな。
「試作はしたが、冷却が弱くてな。ヒーターだけなら完成といってもいいのだが」
一通り説明が終わったオッティが課題を上げる。
「でも、全く冷えないわけじゃないから、賢者の学院と提携して、エアコン付き馬車を売り出すことにしたのよ。付与魔法の持続時間が短いから、貴族や大商人みたいにお金を持っている人しか買えないでしょうけどね」
そうか、もう商品化することが決まったのか。
しかし、何故馬車用のエアコンから販売するのだろうか。
「寒いときの室内暖房は、それなりに普及しているからな。冷却効率が良いエアコンが出来れば、室内用エアコンも売り出せるのだが、馬車の空間以上に広いと、今の技術じゃ無理なんだよ」
悔しそうにオッティがそういう。
そこで俺は思いついた。
「なあ、ファンをつけたジャケットがあっただろう。ああいうのを売り出せばいいんじゃないか?」
「あ、それはいいわね。でも、それだと賢者の学院が独自で開発できるから、うちの領にはメリットがないわ」
グレイスは顎に手を当て、なんとかそれを自分達の利益に結びつけようと考えている。
何やらぶつぶつ言い始めたので、俺は馬車に設置されたエアコン配管を見ることにした。
「無理なレイアウトがないし、これなら不良も発生しづらいよな。らせん二重管のレイアウト変更がいらないって利点を殺しにいってるけど」
そう思ったが、直ぐに頭を振る。
「どんなものでも、量産が始まれば不良は出るよな」
諦念ですわ。
尚、エアコン付き馬車は王族や大貴族、大商人からの注文で、かなりのバックオーダーを抱えることになった。
賢者の学院は熱交換に関する研究費の増額に成功し、本格的な生活向上魔法の研究に踏み出すこととなった。
そういうのは予算がつきやすいよね。
いつもと違うのは新しい馬車である。
これはついにエアコンを装備した馬車の試作1号車である。
「エアコンサイクルを実現した世界初の馬車だ。コンプレッサーなしでも冷媒を循環できるように、新たな付与魔法を開発してもらっている。魔法で水流を作れるんだぞ」
得意げに語るオッティ。
だが、そのテクノロジーを使えば、馬車である必要はないんじゃなかろうか。
蒸気機関が完成しているのだし、馬いらないじゃんと思ったのだが、
「そんなことをしたら、内燃機関や外燃機関にスペースを取られるだろうが」
と言われてしまった。
「ねえ、意味が分からないんだけど」
話に入ってこられないグレイスが不満そうにしている。
「自動車の設計っていうのは、まずデザイナーが絵をかいて、その後エンジンを置く場所を決めるんだ。マフラーやエアコンなんていうのは、最後に余った空間を通すことになるんだ。だから、オッティはエンジンは車に搭載しないで、エアコン配管を自由に配置したいっていうことだよ」
「それって重要なの?」
「ああ、重要だ」
オッティの言い方に熱が入る。
「だいたい、後部座席へ風を送っている配管なんて、毎回一体成型にしたり、小分けにしたりと設計思想なんて欠片もない。単に組み立て時の工数を意識して、部品メーカーに負担を押し付けているだけだ。それに、エアコンの冷媒だって三年間で空になる設計なのは、無理な経路でOリングが増えているからだろ。Oリングの圧縮率はメーカーによってまちまちだが、結局漏れなんて防げないんだぞ。漏れを無くすには、継ぎ手を無くすしか無いんだ。それなのに、あんなレイアウトにしやがって!」
※個人の感想です
「マフラーだって安くしろというのに、あいているところを通すために、曲げ数が多くなって複雑な形状にして、部品の単価を上げているのは車両メーカーだろう。安くしたいなら直管マフラーにすればいいんだ。馬鹿なんじゃないの?」
※個人の感想です
「まあまあ。前世の愚痴はそれくらいにして、この馬車を説明してほしい」
このままだと収拾がつかなくなりそうだったので、オッティを落ち着かせるためにも話題を変えた。
「まずはエアコンユニットを床下に設置してある。これによって前後の長さを変える必要はなくなった。車重はユニット分重くなっているが、馬車馬の頭数を増やすほどでもない。ユニットは可能な限りアルミパイプにしかたから、重量もさほど増えてはいないぞ。一番は冷媒として使用している水の重量だな。それと馬車の剛性を上げるために、ビーム(梁)を追加した」
その言葉に俺が反応する。
「ビームって重要保安部品じゃないのか?規格はどうするんだよ」
「なあ、アルト。ここは異世界だぞ。ビームの強度なんて規格はないんだ。溶接不良で呼び出しを食らうことなんてないんだぞ。ビーム?平気だ。そう、ビーム平気なんだよ!」
オッティのくだらないギャグにつき合わされて損した。
グレイスはぽかんとしているので、説明してやるか。
「グレイス、ビームっていうのは自動車だと梁のことなんだ。ロボットの兵器の事じゃないぞ。ドアの内張りをはがせば、鉄パイプが補強として溶接されている。これは横からの衝撃から乗員を守るための部品なんだ。重要保安部品だから、管理がとてもうるさいんだ。それで不具合を何度も出して、俺もオッティもいい思い出がない。それで平気と兵器をかけたギャグを言いたかったわけだ。察してやってくれ」
グレイスの何とも言えないひきつった笑いが印象的だな。
「試作はしたが、冷却が弱くてな。ヒーターだけなら完成といってもいいのだが」
一通り説明が終わったオッティが課題を上げる。
「でも、全く冷えないわけじゃないから、賢者の学院と提携して、エアコン付き馬車を売り出すことにしたのよ。付与魔法の持続時間が短いから、貴族や大商人みたいにお金を持っている人しか買えないでしょうけどね」
そうか、もう商品化することが決まったのか。
しかし、何故馬車用のエアコンから販売するのだろうか。
「寒いときの室内暖房は、それなりに普及しているからな。冷却効率が良いエアコンが出来れば、室内用エアコンも売り出せるのだが、馬車の空間以上に広いと、今の技術じゃ無理なんだよ」
悔しそうにオッティがそういう。
そこで俺は思いついた。
「なあ、ファンをつけたジャケットがあっただろう。ああいうのを売り出せばいいんじゃないか?」
「あ、それはいいわね。でも、それだと賢者の学院が独自で開発できるから、うちの領にはメリットがないわ」
グレイスは顎に手を当て、なんとかそれを自分達の利益に結びつけようと考えている。
何やらぶつぶつ言い始めたので、俺は馬車に設置されたエアコン配管を見ることにした。
「無理なレイアウトがないし、これなら不良も発生しづらいよな。らせん二重管のレイアウト変更がいらないって利点を殺しにいってるけど」
そう思ったが、直ぐに頭を振る。
「どんなものでも、量産が始まれば不良は出るよな」
諦念ですわ。
尚、エアコン付き馬車は王族や大貴族、大商人からの注文で、かなりのバックオーダーを抱えることになった。
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そういうのは予算がつきやすいよね。
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