冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

文字の大きさ
335 / 439

第334話 年上エリート女品管が僕の前だけで可愛い

しおりを挟む
「そこ、腕が上まで上がってないぞ」

 シルビアが新人をしご……、可愛がる様子を訓練所の端から眺めている。
 今日も相談がこないので、暇をつぶすために冒険者ギルドの中をうろついていたのだが、シルビアが新人教育をしていたので、それを見る事にしたというわけだ。
 数名の剣士の男の子がショートソードの素振りをしているのだが、そのうちの一人が疲れたのかショートソードを振りかぶるのが中途半端であり、それをシルビアが指摘したところだ。

「すいません、疲れて――」

「モンスターはお前の言い訳を聞いてくれないぞ!」

 言い訳をする男の子をシルビアが叱咤した。
 まるで、客先の品管にいた女性だなと俺は前世を思い出した。
 工場品管は殆ど男性で構成されているのだが、ごくまれに女性も配属される。
 花のようなという形容詞は似つかわしくない。
 女独眼鉄というのがピッタリだな。
 外見ではなく雰囲気がですよ、念のため。
 万針房で「品質とはなんぞや……!?良品とはなんぞや……!?返答せい!!」って聞いてきそうなんだよね。
 万針房は品管事務へと続く通路です。
 通りたくないんだけど、大豪院邪鬼じゃなかった、弊社の部品担当に呼び出されて客先の品管事務所に行かなければならないので、通るしかないんだよね。
 富樫みたいに相手の顔を蹴る事はしないけど。
 というか、実際には弊社を呼び出した担当よりも職位は上です。
 品管にいる女性はみんな優秀で出世するんですよね。
 測定も女性がやっているのをみますが、こちらはかなり若いスタッフですね。
 僕もそっちに行きたいです。
 新規の製品で測定方法の打ち合わせの時は、そっちに行けますけどね。

 そんな怖い女性品管の手料理が美味しいとか、車の中は人形だらけとかいう話を聞いても、全然ときめきません。
 中松警部が犬が好きってのと同じくらい信用出来ないですよね。
 そんな怖さを持った人を女性だからと舐めてかかる下請けもいて、官渡の戦いの顔良よろしく、見事に撃ち取られています。
 会社の偉い人は三国志とか戦国武将の話が好きなので、時々こうして織り混ぜようね。
 史実と演義の違いとか突っ込まれたら泣くけど。
 さて、話を戻すと、女性の品管ってどうも気が強くて毎回泣かされます。
 自分のところだけでしょうか?
 再発防止策の報告でも、一番ツッコミがきついです。
 まあ、優秀だからってのもあるのでしょうけどね。
 弊社の品管担当者はあまりの厳しさに逃げ出してしまい、その後自分が担当として引き継いだわけですが。
 あれ、転生前の設定と違っている?
 気にしない、気にしない。

 そんな厳しい品管の女性も、弊社のどうにもならない不具合について、一度助けてくれたことがありました。
 どれくらいどうにもならない状況だったかというと、曹操の前に縛った状態で連れてこられた呂布くらいの状況です。
 劉備、余計な事を言うんじゃない。
 おっと、三国志の話はいいか。
 あの時助けられた恩をいつか返そうと思っていましたが、今の妻がその時の彼女です。


 …………

 嘘です。
 ごめんなさい。

 そうそう、大学の工学部だと、工場と同じように女性が少なく、-1σくらいの女性が凄くチヤホヤされてたりするんだよね。
 外見ではなく、性格がですね。
 チヤホヤされるから、調子に乗るんでしょうね。
 作者の知る女性は容姿は普通でしたが、オタサーの姫かってくらいにあれな振る舞いをしてましたよ。
 当時はそんな言葉は無かったですが。
 それでも凄くオモテになってましたね。
 社会人になったらモテなくなりましたけど。

 大学時代は遠くからそれを見ていて、卵子に群がる精子ってあんな感じなんだろうなって思ったことがあります。
 男ってバカですね。
 そんな大学生とはうってかわって、品管の女性はチヤホヤされない。
 会社には仕事をしに来ているから当たり前か。
 プライベートとかは、極力会社の人とは関わらないようにする風潮もあり、女性として見ることも無いですけどね。
 仕事仲間止まり。
 というか、性格がキツいのでなるべく近寄りたくないですね。
 おっと、客先の品管って設定だったな。
 テヘペロ(・ωく)

「全くなってないわね」

 指導を終えたシルビアがこちらにやってきた。
 腰に手を当てて、プリプリと怒っている。

「新人の頃なんてあんなもんじゃないのかな」

 俺は苦笑いをした。
 工場勤務初日の作業者もあんな感じだったなと思い出す。

「あんまり厳しいと辞めちゃうんじゃないかな?」

「それでいいのよ。命がかかっているんだから、中途半端な気持ちで冒険に出るくらいなら、もっと他の道に進むべきよ」

 その言葉を聞いて、シルビアなりの優しさを理解した。
 命を落とされるくらいなら、別の生き方をすればいいんだよな。
 中々そう言ってくれる人はいないけど。
 だからこそ、シルビアの存在は貴重なのである。

「茶でもしばく?」

「そうね」

 シルビアと一緒に冒険者ギルドを抜け出し、ステラで最近人気のカフェで、ゆっくりとお茶を飲むことにした。
 前世でお世話になった、あの厳しい客先の品管の女性は、今でもティア2や車両メーカーと戦っているのだろうかと、ティーカップから上がる湯気を見ながら、前世の世界に想いを馳せた。


※作者の独り言
男女共同参画社会とやらがまだまだ押し寄せていない製造業の品管ですが、当然女性がゼロというわけではありません。
雑草ではありませんが、踏まれて強くなったのか、元から強かったのかは知りませんが、兎に角男女差を感じさせませんね。
女性の活躍している職場ですは嘘じゃないよ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...