入れ替わりのプリンセス

夜宮

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覚醒した悪役令嬢カレンの暗躍

10. そして世界は……

 カレンは上機嫌で数日後から始まる学園生活の準備をしていた。

 前世、憧れていた大学生活はたった一年ほどで終わってしまったようだったからもう一度、学生に戻れるのが嬉しかったのだ。

 それに、花蓮とカレンの性格が混じり合ったのか、今のカレンは花蓮ほど人見知りではないこともわかっていた。

 今世ではもう少し積極的になって色々なことに挑戦したり、様々な人と交流をもつのも良いかもしれない、とカレンは思っていた。

“私、少し図々しくなっているのかも”

 カレンは浮かれている自分を諫めた。

 首尾よくクロエを助けられたことやバーンスタイン侯爵との親子関係が良好であること、令嬢としての評価も悪くないことに加えて、カレンはもう物語の悪役令嬢ではないのだ。

 それらのことがカレンの気持を大きくさせていた。

 “でも私、頑張ったんだもん。
 少しくらい図々しくなってたっていいじゃない? 

 これからは、自分と大好きな父、そしてバーンスタイン侯爵家のことを考えて、貴族令嬢として恥じないように生きていこう”

 カレンは期待に胸躍らせて微笑んだ。

 カレンの気持の中では、既に物語とカレンの関係は切れているようなものだった。

 カレンがライアン王子の婚約者にならなかったこと、それに伴い別の令嬢がライアン王子の婚約者に決まったと聞いたこと、クロエが助かったことからみても、物語の強制力のようなものは発動していない。

 だから、カレンはこれから、バーンスタイン侯爵家の跡取り娘としてこの世界で生きていくのだと決意を新たにするとともに、密かな願望として前世でも経験したことのない両想いの関係、恋人を得ることを夢見てふわふわとした気持になっていた。

“同級生だった彼や半ば彼に見立てたノア。そして決して純粋なものではなかったかもしれないけれどカレンが感じた物語の中でのライアン王子への思い。

 彼らはまとめて私の片思いの相手、初恋だったみたいな気がする。

 でも、今となってはその気持は遠い思い出だ。

 次に私が恋をするとしたら、それはいったいどんな人なんだろう。

 その恋が幸せなものだったら嬉しいな”

 この時、カレンは本気で物語との関係を清算できたと思っていたのだ。

 ここからカレンの新しい人生が物語とは関係なく始まるのだと。

 だが、カレンにとっての世界が様変わりしているのは間違いなかったが、この世界を取り巻く環境が変わったわけではなかった。

 カレンの暗躍は筋書きを変えた。

 だから、世界はカレンが変えた部分を前提にして回り始めた。

 そしてカレンもまた、変化した世界と全く無関係のままではいられないのだった。

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