11 / 64
辺境のお姫様
01. クロエと婚約者
『愛している、クロエ。
僕の光。僕の唯一。僕だけの愛しいお姫様。
クロエ=ノースフィールド嬢、あの日交わした約束通り、君が十八になる年にはどうか私、ルーカス=ヴェルナーと結婚してください』
「きゃあーーーーっ! きゃあ、きゃあ、きゃあーーーーっ!」
何度思い返してもあれが現実にあったことだなんて信じられない。
恥ずかしい。けど嬉しい。でも嬉しすぎてどうしていいのかわからない。
夢かもしれないと思う。
でもあれは夢なんかじゃない。
本気で本当にあった事だという証拠があるんだから夢であったはずがない。
私、クロエ=ノースフィールドは昨晩から何度目になるかもわからない奇声をあげた後、再度あの光景が夢でも妄想でもなかったことを確かめるべく左手の薬指を飾る美しい指輪を見つめた。
するとそこへ最近雇われたというメイドが慌てた様子でドアを開け、焦った顔で言った。
「どうかなさったんですか、お嬢様!」
「……大丈夫ですよ。今日のお嬢様は少しおかしいんです。だから気にせず貴女は仕事に戻りなさい」
そうメイドに声をかけたのは辺境の領地から王都の屋敷へついてきてくれた私付きの侍女のマリーだ。
「申し訳ございません、叫び声が聞こえてお嬢様の身に何かあったのではと思い勝手に扉を開けてしまいました。失礼いたします」
「いいのよ、驚かせてしまってごめんなさいね」
本当に申し訳ない。扉の外まで聞こえるくらいの大声を出した私が悪いのだ。
まだ年若いメイドが恐縮しながら出ていくとマリーが呆れた声で言った。
「お嬢様、王都育ちのおしゃべりなメイドたちが”うちのお嬢様は大丈夫なんだろうか? 辺境伯家の令嬢として、何れは公爵夫人になられるというのにあれでは先が心配だ”などと言い出さないうちに淑女らしい姿を取り戻してください。
王都は辺境とは違うんですよ。万が一にも、お嬢様の評判が落ちるようなことがあれば、わたくしもお側係としてお館様や奥方様はもとより嫁ぎ先の公爵家の方々にも申し訳が立ちません」
厳しい顔でマリー言った。
「ごめんね、マリー。でも、仕方ないと思うの。だって私、ルーカス様があんな……あんな……」
何度思い返しても、昨日のルーカス様はとても素敵でとても優しくてとてもとても恰好よかった。
また叫びださないように手元にあったクッションを抱きしめる私の姿にため息をつくマリー。
「お二人は何年も前から婚約しておいでで、毎週のように手紙のやり取りをし、お会いになった際にはいつも片時も離れずに過ごしてらしたじゃないですか。
今更なにをそんなに大騒ぎされる必要があるのです?」
マリーは心底わからないとばかりに首を傾げている。
「プロポーズよ! ルーカス様は昨日私にとても素敵なやり方でプロポーズしてくださったの!!
初めてルーカス様にお会いした公爵家の美しい庭園で、こうして跪いて私の手を取り、この美しい指輪を持って! これが騒がないでいられるわけないわ!」
力説する私に再度マリーがため息で答えた。
「……その話は昨日から何度も伺いましたけれど、だからと言ってそこまで……?」
「昨日のルーカス様はいつにもまして本当に素敵だったの。
まさかあんなふうに、物語に出てくる王子様のように結婚してほしいと言ってくださるなんて!
私たちの婚約は既に家同士が認めた正式なもので婚約式の時にも結婚の意思を確認しあってるんだから、あんなふうに言葉と態度で改めて結婚しようと言ってくださるなんて思ってもみない出来事だったから嬉しくて」
「さようですか」
そうなの。ルーカス様はとっても素敵だった。学園に入学するために王都にやってきてからというもの毎日のように会っていたけれど、昨日は本当に特別な日になった。
だからね、思い出すたびにうわーーーってなるのは仕方ないことなのよ。
だって私はルーカス様が本当に大好きなんだから。
僕の光。僕の唯一。僕だけの愛しいお姫様。
クロエ=ノースフィールド嬢、あの日交わした約束通り、君が十八になる年にはどうか私、ルーカス=ヴェルナーと結婚してください』
「きゃあーーーーっ! きゃあ、きゃあ、きゃあーーーーっ!」
何度思い返してもあれが現実にあったことだなんて信じられない。
恥ずかしい。けど嬉しい。でも嬉しすぎてどうしていいのかわからない。
夢かもしれないと思う。
でもあれは夢なんかじゃない。
本気で本当にあった事だという証拠があるんだから夢であったはずがない。
私、クロエ=ノースフィールドは昨晩から何度目になるかもわからない奇声をあげた後、再度あの光景が夢でも妄想でもなかったことを確かめるべく左手の薬指を飾る美しい指輪を見つめた。
するとそこへ最近雇われたというメイドが慌てた様子でドアを開け、焦った顔で言った。
「どうかなさったんですか、お嬢様!」
「……大丈夫ですよ。今日のお嬢様は少しおかしいんです。だから気にせず貴女は仕事に戻りなさい」
そうメイドに声をかけたのは辺境の領地から王都の屋敷へついてきてくれた私付きの侍女のマリーだ。
「申し訳ございません、叫び声が聞こえてお嬢様の身に何かあったのではと思い勝手に扉を開けてしまいました。失礼いたします」
「いいのよ、驚かせてしまってごめんなさいね」
本当に申し訳ない。扉の外まで聞こえるくらいの大声を出した私が悪いのだ。
まだ年若いメイドが恐縮しながら出ていくとマリーが呆れた声で言った。
「お嬢様、王都育ちのおしゃべりなメイドたちが”うちのお嬢様は大丈夫なんだろうか? 辺境伯家の令嬢として、何れは公爵夫人になられるというのにあれでは先が心配だ”などと言い出さないうちに淑女らしい姿を取り戻してください。
王都は辺境とは違うんですよ。万が一にも、お嬢様の評判が落ちるようなことがあれば、わたくしもお側係としてお館様や奥方様はもとより嫁ぎ先の公爵家の方々にも申し訳が立ちません」
厳しい顔でマリー言った。
「ごめんね、マリー。でも、仕方ないと思うの。だって私、ルーカス様があんな……あんな……」
何度思い返しても、昨日のルーカス様はとても素敵でとても優しくてとてもとても恰好よかった。
また叫びださないように手元にあったクッションを抱きしめる私の姿にため息をつくマリー。
「お二人は何年も前から婚約しておいでで、毎週のように手紙のやり取りをし、お会いになった際にはいつも片時も離れずに過ごしてらしたじゃないですか。
今更なにをそんなに大騒ぎされる必要があるのです?」
マリーは心底わからないとばかりに首を傾げている。
「プロポーズよ! ルーカス様は昨日私にとても素敵なやり方でプロポーズしてくださったの!!
初めてルーカス様にお会いした公爵家の美しい庭園で、こうして跪いて私の手を取り、この美しい指輪を持って! これが騒がないでいられるわけないわ!」
力説する私に再度マリーがため息で答えた。
「……その話は昨日から何度も伺いましたけれど、だからと言ってそこまで……?」
「昨日のルーカス様はいつにもまして本当に素敵だったの。
まさかあんなふうに、物語に出てくる王子様のように結婚してほしいと言ってくださるなんて!
私たちの婚約は既に家同士が認めた正式なもので婚約式の時にも結婚の意思を確認しあってるんだから、あんなふうに言葉と態度で改めて結婚しようと言ってくださるなんて思ってもみない出来事だったから嬉しくて」
「さようですか」
そうなの。ルーカス様はとっても素敵だった。学園に入学するために王都にやってきてからというもの毎日のように会っていたけれど、昨日は本当に特別な日になった。
だからね、思い出すたびにうわーーーってなるのは仕方ないことなのよ。
だって私はルーカス様が本当に大好きなんだから。
あなたにおすすめの小説
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた
nionea
恋愛
ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、
死んだ
と、思ったら目が覚めて、
悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。
ぽっちゃり(控えめな表現です)
うっかり (婉曲的な表現です)
マイペース(モノはいいようです)
略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、
「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」
と、落ち込んでばかりもいられない。
今後の人生がかかっている。
果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。
※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。
’20.3.17 追記
更新ミスがありました。
3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。
本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。
大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。