婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました

マーサ

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1.婚約破棄を宣告する第1王子

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 ベアトリクス王国の国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールが1人の令嬢に向けて指を突きつけながら大きな声をあげた。
 肩にかかる位で揃えられた金髪に切れ長の目がクールさを強調する整った顔立ち。ただし、見た目と中身が必ずしも一致するものではないのは世の常。アルベールは残念ながら一致していない方だった。
 国外からも来賓を招いた祝賀の場で大声を張り上げる品位に欠ける行為に招待客たちは一様に眉をひそめる。

「オルタンス・クラヴェル! 君には心から失望した。婚約は破棄させてもらう!」

 人の事を勝手に「失望した」と言っておきながら自身が『人を指さす』という行為を行っている矛盾には気がついていない。それがマナー違反である事は社交界デビュー前の子供でも学んでいる事なのだが。

 オルタンス・クラヴェル侯爵令嬢は鼻筋が通った上品な顔立ち、腰まで届く銀髪が夜の月明かりに照らされると幻想的な美しさで見る者を虜にする。本人の知らないところで「銀の月の女神」として崇拝する地下教団が有るとか無いとか。
 学園での成績も良く父親の領地経営も手伝うなど才女として有名だが、それでも突然の事に驚いて声をあげられないでいる。
 普段済ました姿しか見られないオルタンスの戸惑った姿を見て悦に入ったアルベールが話しを続ける。

「君はここに居るリュシエンヌ・ラングロワ男爵令嬢に学園でひどいイジメをしていたようだな。話しはすべて聞いている。暴言の数々、教科書は破り捨て制服も切り裂く! 噴水に突き飛ばすだけで飽き足らず階段から突き落とすなど言語道断だ!」
 オルタンスは罪状を並べられるにしたがって冷静さを取り戻していく。

 (すべて心当たりはないですし、そもそもリュシエンヌというご令嬢も面識はありませんが…)

 リュシエンヌ・ラングロワ男爵令嬢はアルベール、オルタンスと共に王立学園に通う生徒でもあるがクラスは全員が異なっており、オルタンスは面識が無い。
 淡い栗色の髪をツインテールにまとめている。小柄で目はクリッとして小動物のような可愛らしい感じだ。男性の庇護欲をかき立てる容姿である。

「いえ、」と話し始めるもすぐ遮られる。
「バレていないと思ったか!? お前のような悪女が将来の国母となるなど有ってはならない事だ。国外追放を申しつける! そして、婚約者はこのリュシエンヌとする!」

「え!?」

 リュシエンヌは勝ち誇った笑顔をオルタンスに向けている。

 この時、国王と王妃は会場を回り周辺諸国の王族達と談笑していたため事態を把握できていない。
「何だ、何が起こったのだ?」
 広間の中央に歩み寄ろうとした時、「あはは!」と聴衆の中から少々わざとらしい高笑いが響いた。

「いや~、アルベール殿! なかなか楽しませてくれますな」
 留学生である隣国の王太子フェルナンドが拍手をしながら前に出てきた。
母国はベアトリクス王国の南方に位置し、南国特有の彫りの深い顔立ちに短めの黒髪。ややダサい丸眼鏡をかけている。これはあまりの美貌ゆえに同年代の令嬢のみならず既婚のご婦人方からも言い寄られる事に辟易したために試したのだが、世の女性にとっては知的な魅力が増すアイテムにしかなっておらず逆効果だった。
 南国の風土もあって陽気で飾らない性格だからか、思った事をすぐ言葉にしてしまうため口は少々悪い。

 この場の主役は自分だと雰囲気に酔っているアルベールは、良い場面を邪魔されて不機嫌になる。
「フェルナンド殿、これは僕とオルタンスとの個人的な問題だ。貴方の出る幕では無い」

 フェルナンドは「フッ」と鼻で笑いながら答える。
「アルベール殿、個人的な問題であればこのようなパーティの場ではなく、どこかの一室で行うべきでは?」

「なっ!?」
 それが正論だと理解できたのかは不明だが、咄嗟に反論できない。

「わざわざこのような場で話しを出したのは、自分が舞台の主役のように注目してほしいからかい?」
「……フェルナンド殿、いくら隣国の王太子とは言え今は単なる留学生、我が国の法に則り不敬罪とする事もできるのだぞ」

 その程度の脅しが通用すると思っている時点でアルベールの負けであっただろう。
「不敬罪とはどういう…? あぁ、なるほど! 君は【どこを敬えば良いのか不明】ということかい?」

「おのれ! 愚弄するのか!!」

「あぁ、訳を間違えたかな? ベアトリクス語は勉強中なんだが中々難しくてね。間違えていたら申し訳ない」
フェルナンドは流暢なベアトリクス語で謝罪する。


(なんでフェルナンド様がアルベール様に喧嘩を売ってるのかしら……。そして私はこの状況で一体どうすれば……)
オルタンスは2人のやり取りに割って入り言葉を発するタイミングを見つけられずに困っていた。
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