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セバスの1日 (中)

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時刻は11時半。

(昼食を作る時間ですね)

「レオール様、昼食の料理に入ります」

「よろしく頼む」

「あと舞踏会、晩餐会の招待状が何通か来ておりました」


「招待状か……ありがとう」


来ていた招待状を渡した。それを受け取り浮かない顔を浮かべたレオール様。

(あの後から招待状が来ても、参加されていませんものね)

部屋を移動してエプロンを付け、冷やし庫から食材料を取り出す。調味料、調理器具を出して魔石に魔力を注ぎ込みコンロに火をつけた。

料理はスキルを持っているから滞りなく進む。鍋に4分の3の水、カブをコンソメ、塩胡椒で煮込んで。柔らかくなったカブをお玉で潰して、ベーコン、牛乳、バターを入れた。パンをオーブンで焼き、サラダを作り肉を焼いた。

(味は良し)

出来上がった料理をトレーに並べて、執務室で待つレオール様の元に運んだ。

「レオール様、昼食が出来ました」

「んっ、ありがとう」

いまだ、招待状を見ていたレオール様が顔を上げた。

(浮かない表情、参加するかを悩まれている様ですね)

「レオール様、何方で食べますか?」

「ソファーに移動するよ」

「かしこまりました」

テーブルにレオール様の昼食と自分のを置いた。ちなみに私の昼食はカットフルーツとサラダです。


「「いただきます」」


「美味いな。そうだ、報告会はどうだった?」

「いつもの報告会と変わりませんでした。下の兄弟は言い合いを始め、それを当主は楽しげに眺める。昨日は久々にクリス兄にもお会いいたしました」

「クリス? あぁ父上の側近か真面目な人だと聞いている。それと俺の弟と妹に着く側近とメイドの2人は言い争ってばかりか。ははっ、仲が良いのはいい事だ」

「はい」

「それで、セバス。執務の手が止まるほど気にしていたものはなんだ?」

「当主から頂いたものです

「ふぅん」


レオール様はステーキ肉を大きく切り、頬張り口元を緩ました。しっかり飲み込んでから話し出した。


「それが気になって、先程から、デスクの端を気にしていたのか」


「えっ」


(私が気にしていた……)


「レオール様、すみません」

「気にしなくていい。仕事はしっかりやってくれているんだ。ただ、いつもとは違う行動が気になっただけだ」

レオール様はご自分の皿からステーキ肉を切り分け私の皿に移した。早朝は騎士団との訓練をなさっているから、こちらで食べるときはがっつりしたものを用意している。しかし、私のお昼が少ないと言い分けてくれた。

「ありがとうございます、レオール様」

「んっ、パンも食べろ」

「はい、いただきます」

「でっ、セバスは何を貰ってきたんだ。食事の後でいいから俺に見せてくれ!」

「かしこまりました」

レオール様は1時間ほどで昼食を終えて急ぎがなければ、その後、1時間ほどご休憩される。その間に私は食器を洗い、洗濯物を取りに向かい、調理場にお茶の時間のケーキ、果物をもらいに行く。

「レオール様、戻りました」

「セバス、おかえり」

レオール様は本を読みながら、ソファーでくつろがれていた。果物とケーキをしまい、返信がないか紙をチェックするとリュートからの返信があった。

『リュート・セバス兄すみません、今起きました。』

(もう、お昼過ぎだと言うのに……ふぅ、弟殿下は絶倫だと言っていたからですかね? 寝坊するほど、濃厚な夜を過ごしているのですね)

「レオール様、すみません。弟からの返信が来ていましたので、返事を返すまでお待ちください」

「いや、待てない」

本を閉じてソファーから立ち上がった、レオール様は私のデスクを覗き込むと、紙を取り上げた。

「あっ」

その返信の内容を読んで眉をひそめた。

「いま起きただと、起きるのが遅くないか?」

「えぇ、その注意と、満月の夜のことも注意しようと思っております」

そう伝えるとレオール様は「あぁ、その事か」と言いった。

「レオール様もご存知だったのですね」

「兄弟だけの夕食時にミッシェルに聞いた……アーサーと側近が庭園の、それもミッシェルのバルコニーから見える位置で効接をしていたらしいな。アーサーには俺から注意をしておいた」

「そうですか、リュートには私から注意いたします」

「あぁ、お願いするよ。弟と側近、2人で話し合い効接するのはいい、見える所では控える様に言っておいてくれ」

「はい、かしこまりました」

返信を書き始めてもレオール様は、この紙が珍しいらしくずっと見ていた。返事を書き終わり文字が消えると更に驚かれた。

「文字が消えた! その書いた文字はどこにいった?」

「文字は、弟が持つ紙に転送されました」

すぐに返信が来る『セバス兄・これから気をつけます。』と。私はハサハにもちゃんと言う様にと書き手紙のやり取りを終えた。

「その紙は凄いな、文字が送れて文字を受け取れる。俺も使ってみたい」


(レオール様は昔から魔法がお好きで、毎回、魔道具を使うとき、楽しそうですものね)


「俺にも一枚貰えないか? セバスと文字のやり取りをしたい。いまからするか?とか、やるぞ! なんて文字で誘うのも面白い」


(いいですね)


「レオール様、すみません。当主が言うにはまだ試作段階なので、私たちが1ヶ月使い改良するみたいです。しばら待てば、レオール様も使えるかもしれません」

「そうか、楽しみに待っているよ。セバス、疲れたから隣で仮眠する。30分だったら起こしてくれ」

「かしこまりました」

レオール様は着ていたジャケットを渡して、隣の部屋に消えていった。

(では、私は読書でもしましょうか)

アイテムボックスを開き、中から読みかけの本を取り出した。







ソファーで寛ぎながら本を読んでいた。部屋にかかる時計を確認すると。

(2時少し前……そろそろ、レオール様を起こす時間ですね)

本をアイテムボックスにしまい、仮眠室の扉をノックした。

「レオール様、お時間です」

「あぁ、わかった」

仮眠室から胸元のボタンを外して、気だるそうに出てきた、レオール様の髪には珍しく寝癖がついていた。

(ぐっすり、眠られていたのですね)

私はキッチンに移動して冷やし庫から、お昼の時に作ったレモンの果実水をお出しした。

「目覚めの果実水です」

「ん、ありがとう」


午後の執務が始まった。

時刻は3時前、ハサハから『セバス兄 ミッシェル様に頼まれて街まで本を買いに行くけど、何かいる。』と紙に文字が浮かんだ。

(街に、本をですか?)

それから、しばらくハサハとのやりとりが続いた。

『ハサハ・ある午後のひとときの下巻をお願いしたいです。』

『セバス兄・それなら私も買う予定だけど、貸す?。』

『ハサハ・ごめん、ハサハ、手元に置きたい本ですので買ってきて欲しいです、料金は後で支払いますので。』

『セバス兄・わかった、他に欲しい本ある。』

『ハサハ・ではもう一冊、禁断の束縛をお願いできますか?。』  

『セバス兄・禁断の束縛! それって過激なエロ小説じゃない、ミッシェル様も欲しがっていたわ、買った方がいいかな? でも、内容がね。』

『ハサハ・そんなに過激なんですか?。』

『セバス兄・うん、鞭、縄、媚薬を使った効接シーンは魅力的だけど、過激だったわ。』

(それは楽しみですね。ミッシェル王女も欲しいとは、王女もお好きですね。しかし王女は16歳)

『ハサハ・禁断の拘束は、ミッシェル王女にはまだ早いと思われます、花咲く頃の恋とかがオススメですよ。』

『セバス兄・花咲く頃の恋かぁ、わかった、ミッシェル様にはそれを買っていくわ。』

『ハサハ・ありがとう、気をつけて行くんですよ。』

『セバス兄・はーい、行ってくるね。』

ハサハとのやり取りを終えた。

(楽しみですね)

ある午後のひとときは、妻を亡くした公爵と若い執事の恋愛の本。穏やかにお互いの大切さがわかっていく、とても好きな本の一つです。

禁断の束縛は、王子と近衛騎士の恋愛の本、ハサハの言う通りだとかなり過激な内容ですね。


「くくっ、楽しそうだな」


「はっ、レ、レオール様、すみません」

リュートとのことを強く言えませんね。ハサハとの会話と本が楽しくて手が止まっていたのを、レオール様に前から見られていた。

「いいよ、その代わりに俺にもその激しい『禁断の束縛』の本貸して」

「えっ、激しいエロですが……よろしいのですか?」 

「エロ?」

(……焦って変なことを言ってしまった)

「ふぅん、セバスって激しいエロい本を読んでいるんだな」

と、私に笑ったレオール様に、ドキッとした。
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