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12話

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 いくら言っても改善されない。私をなにが何でも悪者にしたいミミリア……積りに積もったストレスを今日も、今日とて、私は学園の旧校舎の旧庭園に行き愚痴をこぼす。

「あの子、いい加減にしてほしい! 私とあなたは接点がなに一つもないことに、気付きなさい!」

 私は何もしていないのに、初めて会う人に嫌われている。学園内を歩けば陰口をたたかれる。

 悪役令嬢だって1人の女性!
 辛く当たられたら、悲しくなる。
 強い女じゃないの、涙だって出るの!

「……っ、胃が痛い。クソ、ミミリア」

 この人気のない所で、言葉悪く叫び泣くのだ。

 ハァ……それで1番厄介なのは、この私の気持ち。
 実は私、お会いしたときからスザーリン殿下が好き。まあ前世の推しだからというのもあるが、一目見で彼に恋へ落ちてしまった。

 となりにミミリアがいるけど、推しが動いている。
 また、ミミリアがいるけど、声が可愛いわ。

 だけど私は悪役令嬢……心にもない憎まれ口を叩く。
 ほんとうは胸が苦しくて、悲しくて、どうして私を見てくれないのだと。だけど彼はミミリアしか見ていない。

 既に攻略されてしまった、彼の心はミミリアのもの。

「こんな厄介な恋、消えてくれれば楽になるのに……彼に会うだけで好きがいっぱいになる。もう、憎まれ口を叩くのもしんどい」

 婚約者になる前は、彼に会わずにいれば楽だった。
 学園に入学して、彼と同じ教室にいるだけで……このトキメク心が消えない。呪いにかかっているかのように、悪役令嬢ベロニカは彼の事が好き過ぎる。

「……ハァ、つらい」

「また、泣いてるのか?」
「え? だ、誰?」
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