26 / 99
二十五
しおりを挟む
ミリア亭が休みの朝、目覚めると九時過ぎていた。
「うわぁ、寝過ぎた……」
慌ててベッドを抜けだして、キッチンでパンと牛乳だけの朝食を取りお風呂を沸す。今日の休みの日はどうしても朝早く家を出たかった。中央区に行く道の途中、騎士団の宿舎と訓練場のそばを通るから。
みんなの訓練をする姿を見る、絶好のチャンスなのに朝寝坊をするなんて。さっと、お風呂で汗を流して薄くなってきたアザにナサから貰った傷薬を塗った。
(はぁ、ラベンダーのいい香り)
この香りに安らぎ、昨日から用意していた白いシャツとプリーツスカートに着替えて、あれから伸びてきた髪を結い上げた。家を出て早足でめざしたのは中央区の近くにある騎士団の訓練場だ。
(訓練場に着いたけど、誰もいない……もう訓練は終わってしまった?)
こっそりフェンス越しに覗くと、騎士団達とは別の場所で、ナサとアサトが訓練場に残っていた。
「ナサ、ボーッとするな! 行くぞ」
「ああ、全力で来い、アサト!」
そこには半獣ではなく、獣人の姿のままの二人がいた。アサトとナサは見合い、盾を構えたナサにアサトが勢い良く体当たりをした。
ガツッ!! とフェンス越しにぶつかる音が聞こえた。凄い二人の気迫、隠れてみようと思っていたのに勝手に足が動く。
「ナサ、もう一回行くぞ!」
「ああ、いつでも来い!」
二人の真剣な訓練をもっとそばで見たい、もっと、近くて見たい。また見合った、あのぶつかりが見られる。息を呑んだ瞬間に"バッ"と二人はこっちらを向いた。
「「リーヤ⁉︎」」
声が見事にハモり、フェンス越しのわたしの姿を見て驚く二人の姿。その後、ナサは盾を置き腹を抱えて笑った、アサトは困り顔でポリポリ頭をかいた。
「リーヤ、おはよう」
「シッシシ、珍しくオレたちの訓練を見る女の子がいると思ったらリーヤかよ。おはよう」
「アサトさん、ナサ、おはよう。訓練ご苦労さま」
両手でガッチリ、掴んでいたフェンスからソッと手を離して微笑んだ。
(……迫力がある、二人の訓練を食い入る様にみちゃってたわ)
アサトとナサは二人でなにかヒソヒソ話をして、アサトは『また、後で』と言い、わたしを振ると宿舎の中へ入って行き、ナサは盾を持ち近くに来てくれた。
「よっ、何処からかラベンダーの香りがして、まさかと思ったら案の定。フェンスを掴んで食い入る様に見るリーヤがいるんだもんな……シッシシ、その格好は今からどっか行くのか?」
「うん、今から中央区の人気のパン屋に行ってくる」
「中央区? そんな場所に行くのか……オレは着いて行けねぇ」
北区に住む獣人と亜人達は中央区には入れない、一歩でも入ると違反者となり捕まってしまう。
「人気のパンを買ったらすぐに戻るから、ミリア亭で待っててよ、ナサ」
「そうだな、昼寝でもして待ってるよ。気をつけて行けよ」
「わかってる、また後でね」
と去ろうとしたとき。
キャーッ!と騎士団側で女性達の黄色いの声上がる。そちらを見てみると、訓練を終えた騎士達がフェンス近くに集まっていた。その集まった騎士達に彼女達は何か手渡していた。なかにはメイドを連れた令嬢の姿もみえる。
「どこでも騎士は人気ね。……ねえ、ナサ。彼女達は騎士に何を渡しているの?」
「ん、なんだったかな? 自分で刺繍したハンカチとか、お守り、食べ物じゃなかったか?」
「ハンカチとお守り、食べ物か……」
それなら、わたしでも用意ができるわ。次の休みの日に、みんなに持ってきたら喜んでくれるかな。
「ナサ、朝礼が始まるぞ!」
宿舎から、ナサを呼ぶアサトの声が聞こえた。
「わかった、いま行く。リーヤ、じゃ、また後でな」
「うん、また後でね」
宿舎に戻っていく、ナサに手を振った。
「うわぁ、寝過ぎた……」
慌ててベッドを抜けだして、キッチンでパンと牛乳だけの朝食を取りお風呂を沸す。今日の休みの日はどうしても朝早く家を出たかった。中央区に行く道の途中、騎士団の宿舎と訓練場のそばを通るから。
みんなの訓練をする姿を見る、絶好のチャンスなのに朝寝坊をするなんて。さっと、お風呂で汗を流して薄くなってきたアザにナサから貰った傷薬を塗った。
(はぁ、ラベンダーのいい香り)
この香りに安らぎ、昨日から用意していた白いシャツとプリーツスカートに着替えて、あれから伸びてきた髪を結い上げた。家を出て早足でめざしたのは中央区の近くにある騎士団の訓練場だ。
(訓練場に着いたけど、誰もいない……もう訓練は終わってしまった?)
こっそりフェンス越しに覗くと、騎士団達とは別の場所で、ナサとアサトが訓練場に残っていた。
「ナサ、ボーッとするな! 行くぞ」
「ああ、全力で来い、アサト!」
そこには半獣ではなく、獣人の姿のままの二人がいた。アサトとナサは見合い、盾を構えたナサにアサトが勢い良く体当たりをした。
ガツッ!! とフェンス越しにぶつかる音が聞こえた。凄い二人の気迫、隠れてみようと思っていたのに勝手に足が動く。
「ナサ、もう一回行くぞ!」
「ああ、いつでも来い!」
二人の真剣な訓練をもっとそばで見たい、もっと、近くて見たい。また見合った、あのぶつかりが見られる。息を呑んだ瞬間に"バッ"と二人はこっちらを向いた。
「「リーヤ⁉︎」」
声が見事にハモり、フェンス越しのわたしの姿を見て驚く二人の姿。その後、ナサは盾を置き腹を抱えて笑った、アサトは困り顔でポリポリ頭をかいた。
「リーヤ、おはよう」
「シッシシ、珍しくオレたちの訓練を見る女の子がいると思ったらリーヤかよ。おはよう」
「アサトさん、ナサ、おはよう。訓練ご苦労さま」
両手でガッチリ、掴んでいたフェンスからソッと手を離して微笑んだ。
(……迫力がある、二人の訓練を食い入る様にみちゃってたわ)
アサトとナサは二人でなにかヒソヒソ話をして、アサトは『また、後で』と言い、わたしを振ると宿舎の中へ入って行き、ナサは盾を持ち近くに来てくれた。
「よっ、何処からかラベンダーの香りがして、まさかと思ったら案の定。フェンスを掴んで食い入る様に見るリーヤがいるんだもんな……シッシシ、その格好は今からどっか行くのか?」
「うん、今から中央区の人気のパン屋に行ってくる」
「中央区? そんな場所に行くのか……オレは着いて行けねぇ」
北区に住む獣人と亜人達は中央区には入れない、一歩でも入ると違反者となり捕まってしまう。
「人気のパンを買ったらすぐに戻るから、ミリア亭で待っててよ、ナサ」
「そうだな、昼寝でもして待ってるよ。気をつけて行けよ」
「わかってる、また後でね」
と去ろうとしたとき。
キャーッ!と騎士団側で女性達の黄色いの声上がる。そちらを見てみると、訓練を終えた騎士達がフェンス近くに集まっていた。その集まった騎士達に彼女達は何か手渡していた。なかにはメイドを連れた令嬢の姿もみえる。
「どこでも騎士は人気ね。……ねえ、ナサ。彼女達は騎士に何を渡しているの?」
「ん、なんだったかな? 自分で刺繍したハンカチとか、お守り、食べ物じゃなかったか?」
「ハンカチとお守り、食べ物か……」
それなら、わたしでも用意ができるわ。次の休みの日に、みんなに持ってきたら喜んでくれるかな。
「ナサ、朝礼が始まるぞ!」
宿舎から、ナサを呼ぶアサトの声が聞こえた。
「わかった、いま行く。リーヤ、じゃ、また後でな」
「うん、また後でね」
宿舎に戻っていく、ナサに手を振った。
335
あなたにおすすめの小説
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる