寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

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八十七

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 みんなの視線はナサのお父様が指差しした、先を見ると、ガサッと茂みに隠れる影があった。今隠れた人が召喚士なの? 違う強制召喚をされれば、この場で戦わなくてはならないと、緊張とゴクッと喉がなる。

「リーヤ、オレから離れるな」
「う、うん」

 息をのみ、ジリジリと召喚士が隠れた茂みに近付くアサト、リキ、ナサ、わたし、後方でロカ、ミカは魔法を打つ構え。ナサのお兄様とわたしのお兄様、ランドル様、ユーシリン国の騎士にも緊張が走る。


『あ、いや、待ってくれぬか』


 私たちを止める声、この緊張した場を崩したのはナサのお父様。


「親父、なぜ止める? そこに隠れた奴は何度もガレーン国を襲おうとした者だろう?」


 ナサは何故、お父様が止めたのかわからないと、言った表情を浮かべた。それは周りのみんなも同じだ。

『そやつは人に連れて行かれた、自分の番を探している……ゆうに百年以上経つでいると言ったかな?』


「「「番を連れていかれただと!!」」」


 この場にいるみんなはお父様の言葉に驚いているし、中には胸を抑える者もいた。アサトはギリッと歯を食いしばり、ナサも怖い表情を浮かべていた。

「なんて、ヒデェ事をする」
「番は自分の片割れと言ってもいい存在、それを連れていかれたのか……」

 リキは刀を鞘にしまい、

「愛する者を奪われるとは……なんと、かなしい」

 みんなは口々に悲しいと言った。

 お兄様とランドルは周りの雰囲気に眉をひそめる。
 わたしはナサと結婚したのだから、大体のことはわかっているつもりだけど……まだ、この言い方は慣れない。わたしとナサは番、唯一無二の存在を奪われたということ。


 ナサがいなくなったらと思うだけで悲しくなり、そばにいるシャツを握ったら、大きな手で握られた。


『でてこい、いままで自分が侵した罪はあるが……皆に理由を言え、己の気持ちを伝えよ』


「はぁ、い……あ、あたし、ちゃんと、人に変幻できているかな? 変だったら、ごめんなさい」


 茂みから打つよな瞳の下にクマ、ボサボサな黒髪で細身、ボロボロなワンピース着てた青白い女性が現れたのだけど、お尻に隠せていない立派な鱗状の尻尾があった。

 近くにいたアサト、ナサ、リキは現れた彼女に圧倒されたのか、一歩、二歩後ろに下がる。ナサはいきなりわたしを抱きしめた。

「……リヤとカヤとは違う、立派な鱗状の尻尾だな」
「彼女は只者じゃない、力が違う」

「ヤベェ、戦ったらオレ達は負けるぞ!」

 
 お父様はウンウン頷き。

『そうだろうな。いまは数々の召喚術と変幻の術で力を削り、人の格好をしているが、北の土地を守る守護竜の片割れだ』


「「「北を守る守護竜!!!」」」


 ちょっと待って、守護竜って、書庫の本とかでしか読んだことがない伝説の竜だわ。
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