寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

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九十一

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 みんなの心は同じ。

 竜よ、片割れを探して! そのとつじょ……とてつもなく、聞いたことがない鳴き声があがる。

"ギャオォォォォーーーン"

「な、なんだこの鳴き声は?」
「耳が痛い!!」

 北門にきた騎士達はその鳴き声に驚き、お父様とナサ達は"バッ"と中央区を見つめた。その行動から中央区で何者かが今鳴いたのだ。

「やばい、竜の片割れは見つかったみたいだが、その片割れがキレたぞ!」

「まさか、レン達と一緒にいたからか?」

 アサトとナサの声に騎士団、わたし以外は頷く。レン達とは竜と一緒に中央区に言ったナサの友達。まさか、番ーー嫁が違う男といたから?

"ギャオォォォォーー!!"

 リヤとカヤは耳を塞ぎ、ロカは渋い顔を浮かべる。

「竜の片割れはご立腹のようです……ナサ、友を呼び戻したほうがいい」

「ロカ、わかった。……騎士団、ここはオレたち亜人隊に任せて中央区に戻り、人々を避難させろ!」

 亜人隊のくせに何故、貴様のいうことを聞かねばならないと言った表情を浮かべたが、中央区から緊急のベルが鳴る。そして通信係に連絡が入る……

 連絡を受けた騎士は、

「中央区にて、亜人が暴れている。北区に向かった第一部隊はすぐに戻られたし!!」

「かしこまりました!!」
「亜人隊、あとは任せた」

 騎士たちは急ぎ足で中央区に戻っていく、わたし達だけになる北門の外。隠れていたナサのお母様達も戻り、どうするか話し合う。

「なにがあったのか見にいくか?」

「それより、片割れと共にレン達をこっちに呼べばいいのでは?」

 リキさんの言葉にナサは頷く。

「そうだな、呼び戻せば片割れもこっちにくるな、そこで説明をするしかないな」

 ナサはレン達に"すぐに戻れ"の合図を送った。それにすぐ『いまそっちに向かっている』とルフから反応が返ってきた。

「もうすぐ着くそうだ!」


"ギャオォォォォン!!!"


 鳴き声の後に三人と、竜の片割れが北門の外に飛びでて、汗を拭い、ハアハアと息をあげている。

「ウヒョッ、コエェーー!! なんでアイツは俺たちを見て、すぐに怒ったんだぁ?」

「わかんねぇ、なんでだぁ?」
「さて、わかりませんね」

 息を整えながら首を捻る三人。お父様、ナサ、リキは"アーッ"と気付く。ナサの友の彼らは、まだ番のいない独身者。

 チーターのレンは移動のために"ズッと"竜の片割れをお姫様抱っこしながら走っていたのだ。そして、中央区にて嫁の魔力を感じた竜は何処からか会いにでて、レンに優しくお姫様抱っこされた嫁をみてしまい、ショックを受けたと考えた。

 ナサは汗を拭うレンに、

「多分、そのお姫様抱っこのせいじゃないか?」
「かもな、数百年ぶりに会うんだろ?」

 ナサとアサトはいい、ロカは。

「そうですね。私はかろうじて竜の言葉がわかったので、みなさんに伝えますーー

 一度目の鳴き声は『シャン(嫁)新しい番ができたのかぁ!!』で

 二度目は『いつか戻ると、余の帰りを待てと言っただろう!』

 三度目は『シャンはそいつがよくて、もう余を愛していないのか!』です」

 と、ロカは内容を語った。
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