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寝不足と女天狗と肉厚ハンバーガー(後)

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 女天狗のサラが第三治療院に訪れてから二日後。
 目の下のクマがなくなり、治療院に来た時より血行が良くなった、サラが大きは袋を持ってやって来た。

「環ちゃん、シンヤ君、ありがとう」

 サラは日光浴と食事、ホットアイマスクでよく眠れる様になったと、次の仕事を決めて来たと笑顔で話した。だけど彼女は働いて稼いだお金を、あやかし横丁をおさめる長老古狸に寄付しているそうだ。
 環は驚いて『なんで?』と聞いた。サラはあっけらかんと、あやかし横丁の発展と自分を治してくれる、治療院が長く続いてくれるためだと答えた。

「働く事も好きだからね。これはお礼とハンバーガー食べて」

 気に入ったのか、ホットアイマスクを箱買いしたのをたくさんと、肉厚ハンバーガーが店で売っている全種類入っていた。

「ご馳走様です、サラさん」
「悪いな、また何かあっなら遠慮せず来いよ」

「ええ、何がなくてもお茶飲みに来るわ」

 手を振り、笑顔で帰っていった。
 サラを見送った後、シンヤと環は互いに見あう。

「環、どのハンバーガー持って行く?」

「どれでもいいけど、ヒョウさんと吹雪荘に住む、みんなに貰っていってもいい?」

「いいぞ、俺も兄弟分もらうな」

 ハンバーガーは十種ある。大家のヒョウとアパートに住む二人で環は三つ、シンヤは兄弟三人分を取った。残りは二つずつ分けた。

「いい香り、あったかいうちに一つ食べて帰ろうかな? シンヤはどうする?」

「俺も食べて帰ろっと」

「コーヒー、お茶どっち?」
「コーヒーがいいな」

 環は微笑み、棚からケトルを取り出し水を入れて、コンロにかけた。
 学生カバンから百均で見つけたコーヒーミルと豆を取り出し、豆を測り、ゴリゴリ豆を擦った。次にドリッパーと紙フィルターを用意した。

「随分と、本格的だな」
「フフ、これで入れると美味しいから、治療院用に買って来たわ。私がいないとき使ってね」

「いいの? サンキュ」

 ゆっくり、美味しいコーヒーを入れ、環とシンヤはサラに貰った肉厚ハンバーガーにかぶりつく。肉厚のバンズと野菜、ソースとチーズが美味い。

「お肉をしっかり食べてる感じ、野菜も美味しい」

「環、知ってるか狐ハンバーガーの店主、修行に人気のハンバーガー屋に行ったんだって」

「だから、こんなに美味しいのね」

 アボカドハンバーガー、香り高いトリュフバターでソテーしたマッシュルームが乗ったハンバーガー、チキンサラダバーガーなど変わったものが多い。

「一つで、十分だな量だな」
「ほんとうね、値段が高いハンバーガーって、まだ食べたことがなかったから、幸せ」

 帰り際に、ホットアイマスクは半分ずつにした。
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