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ろくろ首古本屋でお勉強会をしよう①

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 午後四時から六時まで、本日も無事、第三治療院は閉院した。

「はぁ――腹減った。環、何か食べもんない?」
 
「お昼の残りのコロッケパンならあるけど、私もお腹空いてるから、半分しかあげないわよ」

「半分でもいい、コーヒーと食べようぜ」

 シンヤはあの日、豆から入れたコーヒーをえらく気に入った様子。
 環がいないとき、自分では数回やってみたらしいけど、上手くいかなかったのか。ただ単に面倒なのかはわからないけど、コーヒーは環の担当になった。

 いつものように豆をミルで擦り、ケトルでお湯を沸かして、ドリッパーと紙のフィルターで2人分のカップに、コーヒーをゆっくり回しいれる。

 休憩室に漂う、コーヒーの香りにほっこりする。

「はい、コーヒーはいったよ」

「んん、この香り……美味い。やっぱり、環の入れるコーヒーが1番美味い」

「……もう、口だけ上手いんだから、コロッケパン半分ね」

 あやかし横丁の西にある、河童ベーカリーのコロッケパンを半分にした。河童ベーカリーのパンはどのパンも大きい。
 今半分にしたコロッケパンも、普通のコロッケパンの二つ分くらいはある大きさで、挟んだコロッケもわらじ並の大きさだ。

 河童の夫婦があやかし横丁に住む、みんなを腹一杯にしたい、と始めたパン屋は大当たり。ここも早朝、行列ができる。

「くぅ、パンはふかふか、コロッケがうめぇ。このコロッケパン、中々食べれないよなぁ」

「うんうん、このコロッケパンはこの前のハンバーガーのお礼だって、ヒョウさんがたくさん買ってきてくれたんだ」

「羨ましい……」

 シンヤはコーヒーを一口飲み、考える素振りを見せる。
 何か思いついたらしく、反対側でコロッケパンに齧り付く環に視線を送り。

「なぁ、今度の休み、日曜にろくろ首の古本屋の二階で、勉強しないか?」

 突然のシンヤからのお誘い。ろくろ首の古本屋の二階は子供達が自由に集まって本を読んだり、勉強ができるスペースになっている。
 環も月曜の古典の小テストの勉強がしたかった、1人でするより誰かとやる方が捗ると、シンヤに頷く。

「いいよ、なん時に待ち合わせする?」
 
「そうだな、吹雪荘に早朝七時に迎えに行く。そこから河童ベーカリーでパンを買って、隣のイートインスペースで朝食を食べてから、ろくろ首古本屋の二階で勉強しようぜ」

「いいけど、さては出来立てパンが目当てかな?」

「それもあるけど、古典の小テストで悪い点取ると……一番上の兄貴に夕飯のおかず一品減らされる」

「ええ、一品も⁉︎ それは大変ね。分かった、古典をみっちり教えるから……次の週の数学と生物よろしくね」

「おお、それなら任せろ」
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