三十歳、アレだと魔法使いになれるはずが、異世界転生したら"イケメンエルフ"になりました。

にのまえ

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空森島にやってきたモフモフ黒い鳥。

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 ――黒、落ち着け。

「余は、余はダメな魔王だ――滅びたほうがよい」
「ばーか、誰がそんなこと言ったのか?」

「いいや、みんなは新米魔王の余を大切にしてくれた……余もみんなが好きだった」

 魔王黒は魔力はたかいが、病魔に倒れる仲間を助けれなくて、なさけなくて、勇者に倒されようと自分の力を水晶玉に封じた。

「勇者に倒されたんだろ? 黒はなんで目を覚ました?」

 黒は首を振り。

「それがわからぬ。目を覚ました余は王座に座っておった。そして――余が力を封じた水晶が人間に悪さしておったのだ……すまぬ。壊そうとしたが、余では壊せなかった」

「壊せない? 今の黒って力は?」

「余の力? ――ここにいるみんなより弱い。みじんこじゃ」

「なぜ、ここにきた?」

「探しておったら、魔力が高い奴がいて水晶を壊してもらおうと思ってな――そうすれば攻撃も止む」

 なに、攻撃がやむ?
 この中で魔力が高いのは俺かな?

 サン先生と魔女先生、ヌヌ、エンも高いとはおもうけど、黒がいう水晶を壊してしまえば、王都を攻撃しなくなる。

 そうなれば俺は自由だ!

 他の亜人達も自由になる。
 まあ、王都を出れなかったら食堂でもやって、お金が貯まったら温泉付きの家を建てて、のんべんだらりと暮らす。

 いいな、ニシシ。

「ククッ、ローリス、顔がやばいぞ」
「え、マジ?」

 エンがいうには、そうとう、顔がにやけていたらしい。

 いやぁ、でも嬉しいよな。

 
 
 いままで黙って黒の話を聞いていたオッサン達は、口々に口を開く。

「黒の話はわかった、上の者と話してからだな」
「そうですね、人はまず話し合いからですからね」

「でもさ、魔王の攻撃がなくなっなら、ゆっくり休めるわね。ヌヌ、買い物し放題よ」

「魔女先生と洋服、コスメの買い物したいです」

 魔女先生とヌヌ――キャピキャピ話す女子の会話は可愛いなぁ。

「ありがとうじゃ――よろしく頼む」

「すぐに報告して、会議を開いてもらうな」
「結果がでたら、すぐに報告いたしますね」

 オッサンとサン先生、魔女先生は「明日、城に報告しに行く」といい下に帰っていった。

 残った俺とエン、黒、ヌヌ。
 エンは明日も休みだからお泊まりだ。

「エン、片付けが終わったら、ゆっくり露天風呂でもはいるか」
 
「いいな。はいりながら冷えたエールを飲もう」

「なんだ。まだ飲み足りないのか……つまみはソーセージ、ベーコンでも焼くか?」

「なぬ。ソーセージ、ベーコンだと、余も食べる」

 あれだけ食べたのに、まだ食べるという黒。

「ダメ。ここからは男同士の語り合いの時間だ。子供ははやく寝ろ!」

「ローリス、余は子供ではない。…………そうか、ローリス、エン。二人はそうなのかわかった、そうなら、二人の時間は邪魔せぬ」

「ちょっ、その言い方やめてぇ」
「フフ、俺はかまわん」
 
「エン!」

 俺の情けない声が島に響いた。
 
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