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空森島にやってきたモフモフ黒い鳥。

最終話 旅立ち

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 お互いにニヨニヨしながら串揚げ、天ぷらを食べている。

「ここに紅生姜が揚げないのが、さみしいな」
「わかります。紅生姜揚げは格別です」

「あれとビールがあればいい」
「ビール! ローリスさんもわかってますね」

 他のみんなは俺と皇太子の話に聞こ耳を立てるが、残念ながらみんなはわからない会話だ。

 ――ごめんね。

「その、紅生姜とはなんだ?」

 隣に座る、エンが聞いてくる。

「俺も簡単にしか作り方を知らないけど。たしか赤梅酢に生姜を漬けるんだったかな? それを串揚げ、天ぷらにすると美味いんだ」

「また、知らない食べ物だ。食べてみたいな」

「ちょっ、エン。期待するなって、赤梅酢の作り方を知らないんだ……違うの、だったら作るぞ」

 そうかと、少しガッカリしているみたいだ。
 あ、そうだと。空森島から掘り起こしてきた、ジャガイモでアレを作るかな。

「はい、俺も調理してもいいですか?」

  "どうぞ"といわれたので、マジックバッグからジャガイモとエプロンを取り出した。手とジャガイモを洗い、水気を切って、一ミリくらいに薄く切ったのと、短冊切り、くし形に切る。

 次に薄力粉はないから小麦粉を振り、油で揚げる。
 ジャガイモにくしが通り、きつね色に揚がってきたら、油を切って塩と黒胡椒をふる。

 ケチャップはお好みで。

「できた。ジャガイモのカリカリ揚げと、フライドポテト二種だ、熱いうちに食べてくれ!」

「「おお!」」

 みんなはカリカリ、ホクホクの揚げたてを食べて、エールを一気に流しこむ。

「ローリス、美味い!」
「ローリス君、最高のアテです!」

 ――そうだろ、そうだろ。

 ヌヌと黒も夢中に食べてる。
 エンはというと食べて口元が上がった、あれはうまい時にする顔だ。

 ――ニシシッ、フライドポテトとポテチはうまい。

「ローリス、うまい! ジャガイモにはこんな食べ方もあったのだな」

 エン、キラキラな笑顔だな。
 皇太子も久しぶりの、フライドポテトとポテチに感動しているようだ。



 満足のいく食事を堪能した後。
 俺たちは会議室へと皇太子に呼ばれた、そこでの話は魔王城の水晶を壊すか、封印する話だった。

「封印ですか?」

 と、オッサンは驚く。

「そうです。破壊が難しいのであれば、水晶自体を封印した方が早い。そうすれば王都も狙われなくなる。もし、狙われても勇者の力は僕に芽生えたので、どうにでもなりますが」

「私は良い案だと思います」

 サン先生は賛成した。

 俺とエン、ヌヌと黒は黙って話を聞いている。
 どちらにしても、魔王城にはいかなくてはならない。
 勇者がパーティを組んでいくのなら、俺が空森島にいて王都を守ればいい。
 他の者が行くのなら水晶を壊すか、封印できる者が行くのがいいだろう。

「はい!」

 黒がいきなり皇太子に向けて手をあげた。

「余はローリスがいいと思います。いまの勇者は王都を守れるが、水晶を壊すには力が足りない。彼なら水晶を壊せます、それは余が保証する」

「おい、黒!」

 ――保証してくれるのは嬉しいが。

「俺一人だと、一生つかないぞ! それに王都の外にはでれない」

「うむ。その首輪じゃろ? ……取って貰えばいい」

 な、黒め、簡単に言って。
 黒をかわきりに、みんなも意見をいろいろいいはじめる。勇者と俺はどちらにしろ別々になる。

 じっと、みんなの意見を聞いていた皇太子。
 スッと片手をあげて。

「では、僕の考えを言うね。僕が勇者パーティを組んで、森に潜むモンスターと戦いながら、魔王城にいこうと思っていたんだ。でも、黒ちゃんの言う通りで、僕に水晶を壊すことも封印も、あやういのなら。ローリス君に任せるかな」

「お、俺ですか?」

「うん、よろしくね」

「皇太子も簡単にいうよな――道中モンスターを倒していくんだろ?」

 コクリとうなずく。

「まだ、森のなかには、潜むモンスターがいるからね」

 外に出れるのは嬉しいが、モンスターと戦うとなったら話は別だ。俺はまだモンスターと戦ったことがないのだが。

「一人でいけとは言わない。エン、ヌヌ、黒は決まりで、あとはどうする?」

「はっ! タンクとして俺がついていきます!」

「オッサン、膝は?」 

 その怪我で、騎士団長を引退したのに。

「いつのまにか、治った……ローリスの飯を食ったからかな?」

 なに、そのファンタジーてきな感じは?
 いや待てよ、エンも深い傷が治ったとかいっていたな。俺の飯にそんな能力があるのか? あったら、あったでおもしろいな。

 ――みんなに、たくさん食べさせてやる。

 次にサン先生が手をあげる。

「私もいきます。魔法補助役、彼らの先生としてついていきたいです」

 おお、サン先生がついてきてくれるなら安心だな。
 俺よりも魔法に詳しいから助かる。

「パーティは決まった」と、皇太子は俺たちを見回した。

「ローリスさん、みなさん、よろしくお願いします」

「任せてください。俺には心強い仲間もいます、必ずや水晶を壊してきます。それで達成したら、みんなで美味しいものを食べましょう!」


 

 そして一週間後。
 俺たちの首輪は取られて、マジックバッグには旅に大切な必需品をたんまりいれたし、ローブも服も新調したし。みためが魔導師らしくなるように、鍛冶屋のシンに頼み杖を作ってもらった。

 そして、俺の迷子札も新しくなったんだ。

 今度のはサン先生が作ってくれたベルトにかけれる魔法札。みんなも同じ物を持っていて、俺が消えたら声をかけれる仕組み。

「よかった、前のじゃなくて……」
「ローリス君。前のがよかったら、いますぐにでも作りますが?」

「やめて、サン先生」

 エンが横に来て手を握った。

「大丈夫だ、ローリス。俺がずっと手をにぎる」
「私もサーチですぐに探します」

「余が頭の上に乗っていてやろう」

「エン、ヌヌ、黒、ありがとう」

「ガハハハッ! ローリス、楽しい旅になりそうだな」

 デカい盾を持ち、鎧を身につけたオッサン。

「そうだな。みんな魔王城まで行くぞ! 荷馬車に乗り込め!」

 オッサンがあやつる荷馬車は進み、王都が遠くなっていく。
 十歳からここにきて十年の月日が経った、最初はどうなるのか心配だったが、いい友に会えた。

 今度は――その、気の知れた友たちと旅にでる。
 もう、楽しいことしかないよなぁ。

 ああ、俺、異世界に転生してよかったぁ!
 
 
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