魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。

にのまえ

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 なぜか私は小麦畑のなかを走る、馬車に揺られていた。

「すごく、長閑だなぁ~」

 シエル先輩の研究室で、先輩が描いた魔法陣に触れ、ハムスターになってしまった。そんな私を一人ここに置いていけないと言われて、先輩にくっ付いて馬車に揺られている。

 ーー私を探す"ルーチェ捜索隊"だそうだ。

 そう、反対側の席に2度と会いたくなかった、カロール王子殿下がどっかり座っている。彼は何も発すること無く、目を瞑り腕を組んでいた。

 殿下は少し痩せた? そんな気がした。



 +



 彼は婚約破棄をした私を探しているのだろうか? まだ馬車に乗るまえ、先輩の研究室で話を聞いた。

「ねぇ、先輩」
  
 声を出すとカタッと音が聞こえて、外にいる騎士に話が聞こえちゃうと。手で口元を押さえた。

「ルー、大丈夫。遮音の魔法で外の奴には聞こえなくしてあるから、普通に話しても平気だ」

「それなら安心ね。先輩、お腹すいていない?」

 作業机に置いたお弁当箱を指さした。ちなみにお弁当はひとり一個、先輩と弟さんと、子犬、私の分。

「なに、ルーの手作り弁当? 俺の分もあるのか?」
 
「うん、あるよ」

「卵焼きは?」
「もちろん、はいってる」

 作業机を少し片付けて、作ってきたお弁当を広げた。中身は今朝作った唐揚げ、照り焼きチキン、卵焼きをみて先輩は嬉しそう。


「「いただきます」」


 お弁当を食べながら、さっきのことを聞いた。殿下はさっき、シエル先輩の上にいる女性が私かもと嫉妬したように感じた。彼が私を探す理由はーー私を不敬罪にしたいのではなく、別の理由があるのかもと……考えた。

「うーん、あまりルーには言いたくないが。こうなったら、ルーにも知る権利があるな……」

「権利ですか?」

 先輩は頷き。

「殿下は学園が始まってから、ずっと隣にいた女性ーーリリーナ様の魅了魔法にかかっていたんだ」

「え、リリーナ様の魅了魔法?」

 ヒロインってそんな魔法が使えたんだ。

「そそ、いちおう対策とかしていたんだろうけど、殿下の魔力よりリリーナ様の方が魔力が強かった……それを舞踏会の日、偶然にもルーが解いちまったんだ」

 え?

「えぇ、私がリリーナ様がかけた魅了魔法を解いた? 魔力なしの私が?」

 コテンと、唐揚げを食べながら首を傾げた。

「だよな。でも、ルーのひと言――「お慕いしておりました」の言葉で確実に解けた。俺はその場にいなかったから、わからないけど"多分そうだろうって"その舞踏会の会場内にいた、魔導省の上司が言っていたよ」

 ーーあの言葉で?

「まさか、あのとき聞こえた何かが割れた音。それは、私が殿下にかかる魅了魔法を解いた音だった」

「そうなるな。上司の話だと、ルーが会場を去ったあと大変だったらしい。殿下はリリーナ様に「お前では無い!」とは言ったが……公の場、大勢の貴族の前でルーに婚約破棄といってしまった手前、撤回もできず。国王陛下の怒りもかい、リリーナ様を放り出すこともできず、離れに住まわせているらしい」

 ……城の離れ。

「離れって、側室が入る予定の離れですか?」

「そうだ」



 先輩の話は続く。カロールはリリーナを離れに入れただけで、会いにいく様子はない。

 あんなにリリーナを慕っていた親衛隊たちも、いつの間にか彼女から離れて、他の令嬢と婚約、結婚をしてしまったらしい。

(あんなに、リリーナ様を好きだ、愛していると言っていた、親衛隊も離れていった……)



「ところで、学園一位の魔力保持者として言われていた先輩は、カロール殿下が魅了にかかっていたことを、もしかして知っていた?」

 そう聞き返すと、先輩は凄く動揺してむせた。
 
「ゴホッ……いやっ、すまん知っていた」

「…………やっぱり」

 でも、私が知ってもどうにもできないし。

 いくら。ヒロインーーリリーナの魅了にかかっていたとはいえ、傷付け、酷いことをしたあの人達を私は許せない。突き飛ばされ、階段から落ちた恐怖……今更そんなことを聞いても、私の心はこれっぽっちも動かない。

「学園で、シエル先輩にはたくさん助けてもらったのか。先輩、ありがとう」

「ありがとう? 俺が知っていたことを怒らないのか?」

 "怒る"と聞いて、私はほっぺを膨らまして、小さな体を反転させて背を向けた。

「私は違う事では怒っていますよ。シエル先輩は私に隠し事をしていました」

「はあ? 俺が、ルーにかくしごと?」

「そう隠しごとです。私は先輩の髪色が黒だなんて知らなかった」

 それに、先輩は慌てた。

「いや、待て。俺のこの黒髪はこの国では不吉だと、呪われているだと言われている。だから、この国に来ることになって色を変えたんだ」

 黒髪が不吉だとは、聞いたことがあるけど、
 シエル先輩がこの国に来ることになった?

「えぇ、先輩はこの国の人じゃなかったの?」

 驚きの事実を知った。
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