神様のあったかご飯。

にのまえ

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美味しいご飯はあったかいと、来客。

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 カウンターには、シロウさんが作った炊き込みご飯、アスパラガスの肉巻き、豆腐とワカメの味噌汁、白菜の浅漬け。

 そこに、ミズキさんが買ってきた野沢菜の漬物が並んでいる。

「さぁ、できました。九さん、食べましょう」
「シロウさん、いただきます」
「これは……美味しそうだ」

 ここで食べるご飯は花シゲで食べた料理とは違う、シロウさんのあたたかな味。湯気の立つご飯のぬくもりが、じんわりと心を満たしていく。

 ――これは、彼の真心だ。

「美味しいです、シロウさん。とっても温かい味です」

「それはよかった。まだたくさんありますから、遠慮せず食べてください」

「ありがとうございます」
「おい、ミズキさんは少し遠慮しろ」
「ええ? シロウ君は九にだけ優しいね」

 じろりとミズキさんを睨み、シロウさんは「当たり前だ」と言って箸を進めた。
 騒がしいけれど、温かなご飯に心がほっこりする。

 食事も終わりかけた、そのとき。
 シロウさんの耳がピクリと動いた。入り口の方へ視線を向け、僕とミズキさんを振り返る。

「ここに人間が来る。お面を付けろ」
「人間? お面?」

「わかりました」

 さっと、二人は慣れた手つきでお面を付ける。
 初めての僕は少し手間取り、シロウさんに手を借りて、ようやく面を顔に収めた。

 店の中に並ぶのは、赤字で『神』と書かれた僕の面。

 青字で『狐』と記されたシロウさんの面。
 そして、何も書かれていない、真っ白なミズキさんの面。

  神の僕と、狐妖怪のシロウさん。
 そしてミズキさんは、そのどちらでもない存在だ。

 いま、僕たちが面をつけた理由。
 それは、この空間が俗世とは異なる場所だから。

 このままでは、僕たちの本当の姿は人間の目に映ってしまう。神も、妖怪も、人ならざる者の顔を、決して見せてはならない。

 僕たちの存在は、人間に知られてはいけない。少し前、神ラインで聞いて神の面を用意しておいて、本当によかったと思う。

 廃れ神だった頃の僕の顔は、どんよりとしていたらしい。花シゲのおじいさんとおばあさんも、もう僕の顔を覚えていないと大神様から聞いた。

 ――少し悲しいけど、それでいい。

 ⭐︎

「うわぁ、緊張する」
「九さん、大丈夫ですよ。何かあったら俺が守ります」

「これは心強いね」
「お前は守らない。守るのは九さんだけだ」

「はいはい、わかってるよ」

 面をつけるのは初めてで、胸がどきどきしていた。しばらくして、店の入り口の扉が静かに開く。

「いい匂いがするから変だと思ったけど、やっぱり店の鍵が空いてる? おばちゃん、この店売っちゃったの?」

 そこに現れたのは、若い女性だった。
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