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炊き込ご飯
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土鍋の中で、炊き込ご飯がことり、と音を立てて炊き上がっていく。立ちのぼる湯気とともに、出汁と具材の混ざった香りが台所に広がった。
その匂いに釣られて、他の料理に取りかかっているシロウさんの隣へと足が向く。
シロウさんは妖冷庫から取り出したアスパラガスに、手際よく豚肉を巻いていた。
「アスパラガスの豚肉巻きですか?」
「はい。よいアスパラガスが入っていたので。九さんは、こういうの好きですか?」
「はい、好きです。シロウさん、僕も手伝っていいですか?」
そう声をかけると、シロウさんは小さく頷き、作業台の隣をわずかに空けてくれた。僕は手を洗い、見よう見まねでアスパラガスに豚肉を巻いていく。
「俺はタレを作るので、残りを全部巻いてください」
「わかりました。頑張ります」
手際がいいとは言えないけれど、任せてもらえたのが嬉しくて、一本一本に気持ちを込めた。
しばらくして、巻き終えたアスパラガスの肉巻きが、皿の上にきれいに並ぶ。
「シロウさん、できました」
顔を上げると、彼はいつの間にか豆腐とワカメの味噌汁を仕上げていた。湯気と一緒に広がる味噌の香りに、さっき食べたはずなのに、思わずお腹がぐうっと鳴る。
その音が聞こえたのだろう。シロウさんは、ふっと笑って言った。
「すぐ出来るから、待っていてください」
そうしてフライパンに火を入れ、じゅう、と心地よい音を立てながら、アスパラガスの豚バラ巻きを焼き始めた。
本を読みながら、その様子をカウンター席で眺めていたミズキさんがふと思い出したようにカバンを開く。その中から取り出したのは、紙に包まれた野沢菜漬けだった。
「九さんへのお土産です。これも切って、食べませんか?」
「わぁ、野沢菜漬けですか? 僕、好きです」
その言葉に、シロウさんがちらりとこちらを見た。
「遅い。白菜の浅漬けは、もう仕込んだ。あるなら早く出せよ」
「すみません、忘れていました」
言葉遣いは相変わらず少し強めだけれど――
それでも、僕が好きだと言ったせいか、シロウさんは無言で野沢菜漬けを受け取ると、白菜の浅漬けの隣に並べて、手早く刻んでくれた。
その匂いに釣られて、他の料理に取りかかっているシロウさんの隣へと足が向く。
シロウさんは妖冷庫から取り出したアスパラガスに、手際よく豚肉を巻いていた。
「アスパラガスの豚肉巻きですか?」
「はい。よいアスパラガスが入っていたので。九さんは、こういうの好きですか?」
「はい、好きです。シロウさん、僕も手伝っていいですか?」
そう声をかけると、シロウさんは小さく頷き、作業台の隣をわずかに空けてくれた。僕は手を洗い、見よう見まねでアスパラガスに豚肉を巻いていく。
「俺はタレを作るので、残りを全部巻いてください」
「わかりました。頑張ります」
手際がいいとは言えないけれど、任せてもらえたのが嬉しくて、一本一本に気持ちを込めた。
しばらくして、巻き終えたアスパラガスの肉巻きが、皿の上にきれいに並ぶ。
「シロウさん、できました」
顔を上げると、彼はいつの間にか豆腐とワカメの味噌汁を仕上げていた。湯気と一緒に広がる味噌の香りに、さっき食べたはずなのに、思わずお腹がぐうっと鳴る。
その音が聞こえたのだろう。シロウさんは、ふっと笑って言った。
「すぐ出来るから、待っていてください」
そうしてフライパンに火を入れ、じゅう、と心地よい音を立てながら、アスパラガスの豚バラ巻きを焼き始めた。
本を読みながら、その様子をカウンター席で眺めていたミズキさんがふと思い出したようにカバンを開く。その中から取り出したのは、紙に包まれた野沢菜漬けだった。
「九さんへのお土産です。これも切って、食べませんか?」
「わぁ、野沢菜漬けですか? 僕、好きです」
その言葉に、シロウさんがちらりとこちらを見た。
「遅い。白菜の浅漬けは、もう仕込んだ。あるなら早く出せよ」
「すみません、忘れていました」
言葉遣いは相変わらず少し強めだけれど――
それでも、僕が好きだと言ったせいか、シロウさんは無言で野沢菜漬けを受け取ると、白菜の浅漬けの隣に並べて、手早く刻んでくれた。
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