神様のあったかご飯。

古びた神社にひとり取り残された、記憶のないはぐれ妖怪の“僕”

ある日、あたたかな食事の匂いに惹かれ、小さなご飯処「花しげ」をのぞき込むようになる。人には見えないはずの自分に、店のおばあさんが優しく声をかけた。

「あの、お腹、空いていませんか?」

そのひと言で、僕は初めて“ご飯の味”と“誰かのぬくもり”を知る。店を営む老夫婦は、妖怪である僕を恐れず、まかないを振る舞い続けてくれた。

しかし、店は老夫婦の都合で今月限りで閉店するという。もう会えなくなる寂しさに胸が痛むが、引き止めることはできない。

忘れてしまったはずの“さみしい”という感情。

それでも「ありがとう」と伝えられるようになった僕は、確かに少しだけ、本来の姿に戻りつつあった。
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