神様のあったかご飯。

にのまえ

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来訪者、旅狐のミズキ

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「げっ、おまえ……ここに何しに来やがった。いまは食事中だぞ」

 いつもは丁寧な言葉遣いのシロウさんの口調が、露骨に崩れる。細めの目つきもさらに鋭くなり、ミズキさんを睨みつけた。

 けれど当の本人は気にした様子もなく、にこりと笑って僕の隣に腰を下ろす。肩掛けカバンから四角い箱を取り出した。

「九、お土産。温泉まんじゅうだよ」
「ありがとう。ミズキさんも食べる? これ、僕が握ったおにぎり」

 ミズキさんは嬉しそうに笑い、少し形の崩れたおにぎりをひとつ取って口に運ぶ。そして、満足そうにうなずいた。

「おいしいね。それと、シロウ君……ごめんだけど、あのとき、いなかったのは君だよ。九はいつも寂しそうに君の帰りを待って、神社の境内に座っていた」

 チッと、シロウさんの舌打ちが聞こえた。

「ああ、わかってる。九を置いていった俺が悪い。……だが、おまえが唆さなければ、こんなことにはならなかった。俺は九と旅に出たかった」

「ごめん、そうだったんだね。私は自分のために九に頼んだんだ。でも九は、いいよって言ってくれた」

 僕の目の前で、僕だけが知らない話が進んでいく。首を傾げながら、二人の顔を交互に見つめた。

 シロウさんは苛立った様子で、おにぎりを次々と口に運び、あっという間に食べ切った。
 その様子を見て、僕は声をかける。

「シロウさん、おにぎり足りてる? もう二合、炊こうか?」

「おにぎりもいいですが……妖冷庫に入っていた鳥肉を使って、炊き込みご飯にしませんか?」

「炊き込みご飯? 食べたい。でも、詳しい作り方がわからないよ」

 醤油と出汁、調味料。
 鳥、油揚げ、ごぼう、しめじ、ニンジンを入れて炊く、風味豊かなご飯。

 シゲさんが作る炊き込みご飯は本当においしくて、毎回おかわりしていたことを思い出す。

「大丈夫です。作り方なら知っていますよ」

 そう言って、シロウさんは袖をまくり、キッチンへ入った。僕も作るところが見たくて、慌てて立ち上がる。

「食べたいです。僕もお手伝いしたい」
「いいですよ。一緒に作りましょう」
「私は不器用なので、ここで見ていますね」

 ミズキさんは僕のインスタントの味噌汁を、ゆっくりとすすった。

「あ、僕の」
「僕のを飲むな! おまえは帰れ!」
「嫌です、食べるまで帰りません」
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