神様のあったかご飯。

にのまえ

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僕たちのあったかご飯

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 あれから一年が経った。
 僕はもう、一人でお弁当を作れるくらいには、料理ができるようになった。たまに失敗もしちゃうけど、それも含めてだ。

 本日は一週間に一度、神様達に送るお弁当を作る日。僕は朝から店の厨房で、シロウとお弁当を作っていた。

「シロウ、鳥そぼろのお弁当が完成したよ」

「お、うまそうだな。こっちも焼き鳥ができたぞ」

 曲げわっぱの中には、醤油、砂糖、味醂、生姜で甘辛く味付けした鶏そぼろと、砂糖と酒、塩でふんわり仕上げた卵そぼろ。

 茹でたほうれん草のおひたしに、沢庵を添え、その上に香ばしい焼き鳥をのせた。そのお弁当を二十個分作り、布に包んであったかご飯が必要な神々のもとへと飛ばす。

「今回も、ちゃんとお弁当ができたね」

「ああ、できたな。……ところで、残った弁当は?」

 カウンターの上には、そぼろのお弁当が二つ、並んでいる。

「それは、僕とシロウのお弁当だよ。いまから、お豆腐と油揚げのお味噌汁を作るね」

「じゃあ、俺は残った肉を焼いて、きゅうりの塩揉みを作るか」

 二人並んでキッチンに立ち、味噌汁と鳥焼き、きゅうりの塩揉みを作る。この一年間、ずっとシロウと料理してきた楽しい時間が、今日も静かに流れていた。

 ⭐︎

 しばらくして、カウンターの上には赤だしの豆腐と油揚げの味噌汁、鳥焼き、きゅうりの塩揉みが並んだ。

「いただきます」
「いただきます」

 甘辛い鶏そぼろと、ふんわり仕上げた卵そぼろ。ほうれん草のおひたしに、歯触りのいい沢庵。どれも美味しい。

 もちろん、シロウが焼いた鳥焼きも最高だ。
 今ごろ、お弁当が届いた神様たちも喜んでくれているだろうか。明日、どんなお礼が返ってくるのか楽しみになる。

「シロウ、どんな花が届くかな?」

「そうだな……前はピンクのガーベラだったな。明日は、もっとたくさんの“ありがとう”の花が届くんじゃないか」

「ふふ、楽しみだね」

 鳥そぼろのお弁当に、味噌汁、きゅうりの塩揉み。どれも、静かに胸が満たされる味だった。

 ほっこりとお弁当を食べていると、店の扉が開く。そこに立っていたのは、いつも笑顔のミズキさんだった。きっと、お弁当がお目当てなのだろう。

「いい匂い。鶏そぼろのお弁当ですね。いいなぁ、食べたいなぁ」

「お前の分はない! 味噌汁、鳥焼きときゅうりでも食っておけ」

「ええ、鶏そぼろ食べたい」

 お弁当はほとんど食べていまっていて、あまり残っていない。

「僕の残りだけど、よかったら食べる?」
「食べる!」

 喜んでカウンターに座るミズキさんに僕は厨房へと戻り、残っていた鳥焼きときゅうりの塩揉み、味噌汁をあっためてだす。

「ありがとう。僕からはそこの回転のお寿司だよ」

 どーんと、三人前を置いた。

「お寿司? シロウ、久しぶりだね。ありがとう」

「ふん。おまえも、たまにはいいことするな」

「そうでしょう。さあ食べましょう」

 ⭐︎

 ふっと、あの日のことを思い出す。

「お腹、空いていませんか?」

 消えゆこうとしていた僕に、そう声をかけてくれたのが、シゲさんとお花さんだった。

 あの出会いが、僕自身が神であると気づくきっかけになり。大切な相棒、シロウと巡り合う、道をひらいてくれた。

 花シゲの店は閉まってしまったけれど。
 お孫さんが店を継いでくるみたいだから、きっと遠い空の下のどこかで、笑っているのだろう。

 あなたがくれた、あたたかいご飯を。
 そのぬくもりを、僕は忘れない。
 心から、感謝しています。
 


 お読みいただきありがとうございました。
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