毒に抗って九回巻き戻った令嬢は、十回目こそ幸せになりたい。

にのまえ

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5話

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 驚きを隠せない。それは、私自身が呪われているのではなく。私の前世のローデン王女の罪によって、婚約者に呪われたのだった。その呪いは王女ひとりに留まらず、彼女が生まれ変わるすべての命に「毒で死ぬ運命」を背負わせる呪い。

「そんな……」

 私がローデン王女の生まれ変わりだなんて、信じがたい。けれど、これまで起きた出来事を一つずつ並べてみれば、否定する方がずっと難しかった。

 では、私になる前の王女の生まれ変わりたちは、皆、毒で死んだということになる。その中でなぜ私だけが毒で死ぬたびに、七歳まで巻き戻るのだろうか。

(これは王女の呪いだけじゃ……説明がつかない。巻き戻りには、他のなにかしらの理由があるのかしら?)
 
 そう思った瞬間ふっと意識が浮かび上がり、目を覚ます気配を感じた。

「……ここは、私の部屋?」

 体を起こすと、見慣れた景色が視界に広がる。倒れたときと同じ、ソファの近くの絨毯の上。どうやら、気を失っていただけのようだった。

 だけど喉には、まだ焼けつくような痛みが残っている、これは毒の名残。

「いま見た夢がほんとうなら、困った。私、呪われていたなんて」

 はじめの人生で、私はローデン王女と同じ道を辿った。毒で殺され、毒で死んだ。そして、何かの力によって巻き戻された。

 ――怖い。

 私にかかる呪いの原因が、婚約者のカサロでなかったとしても、彼からは離れたい。だって何度も毒で殺された。

 その彼の毒に殺されないために。
 そして、彼以外の毒で死なないためにも……毒に少しずつ慣れた方がいいのかしら。

(それをする前、ほんと少しの毒でも死ぬか確かめないと)

 ⭐︎

 夕食後、部屋で読書をしていると、メイドのシャロンが紅茶を運んできた。

「ルルーナお嬢様、紅茶が入りました」
「ありがとう、シャロン。あとは自分でやるから、下がっていいわ」

 シャロンが部屋を出たのを確認してから、私は紅茶に乾燥させたスノーフレの花びらを小さくちぎって浮かべた。そのカップを口に運んだ瞬間、喉を焼くような刺激が走ったが……それだけで、私は死ななかった。

(少しの毒なら死なない…………)

 このまま少しずつ毒に耐性をつけていけば、呪いを打ち破れるかもしれない。今は、そう信じるしかなかった。

 とはいえ油断は禁物。私はテーブルに向かい木箱を開け、解毒薬になる乾燥させたニヤの花びらを取り出し、水に浮かべて一気に飲み干した。

 ⭐︎

 翌朝。いつものように庭へ散歩に出ると、ジロウじいがバラの手入れをしていた。その傍らにいるはずの見習い庭師の息子、ラマの姿はない。

「おはよう、ジロウじい。お忙しいところ悪いのだけど……。ジロウじぃに時間ができたら、植物のことを教えてくれる?」

「おはようございます、ルルーナお嬢様。ええ、もちろんですよ。ただ、少しお待たせしてしまいますが……それでもよろしいですか?」

「ええ、構わないわ。その間、テラスで見学しているから」

 ジロウじいの作業を見守りながら、私は庭全体へと視線を巡らせた。
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