大学の図書館で手に取った本が何故か異世界への扉でした

山下レ央

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第1章:エルフの国編

第7話 初めての食事

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 大和が宿屋でケイトとヴォルドが夕食を共にしている頃、王宮では玉座の間で話す2人の者がいた。
 玉座に座っているのは国王ドズム=シャーリスだ。
そして、ドズムに対し跪いている女性がいる。

「留学ご苦労だったな。セーナ」

「ありがとうございます父上。この度のスピリチアン精霊王国への留学で見聞を広めることが出来ました。このような機会を与えてくださったこと、感謝致します」

「うむ、今後も次期女王として相応しい者になるために励みたまえ。今日は下がって休むがよい」

「はい、ありがとうございます。ですが一つ、お聞きしたい事があるのですがご質問よろしいでしょうか?」

「ん?何だ、言ってみよ」

「先程マナカさんから聞いた話ですが、て帝王眼エンペラーアイをもった異世界人が現れて、最終的に滞在を認められたとか・・・」

「何だ、その事か。もしかしてお前も反対なのか?」

「いえ、父上が決めたことに異論は何一つございません。ただ、私は異世界人にとても興味が湧きました」

「では、明日会いに行くがよい。場所はケイトかヴォルドに聞くように」

「はい、ありがとうございます。では失礼致します」

「うむ」

 2人は会話を終え、セイナと呼ばれた女性は自室へと戻って行った。

□□□□□□□□□

 宿屋の食堂でケイトとヴォルドと食事をすることになった大和は、大きな壁に直面していた。

(なんか食べたいと思ってたけどよくよく考えたらこの世界の食べ物食べたことなかった!!)

「大和、どれ食べる?」

ケイトからメニューを渡されると、そこに載っていたのは見た事の無い食べ物ばかりだった。

(聖王豹せいおうひょうのシチューってなんだよ!いきなりやべーじゃねーか)

他にも色々みてみたが、絵も写真もないので大和には想像のできないものばかりだった。

(とりあえず1番まともそうなこれにするか・・・)

「じゃあ聖王豹のシチューにするわ」

「おー、じゃあ俺もそれ」

「俺とそれにしよ。すいませーん!聖王豹のシチュー3つで!」

 ケイトとヴォルドも大和と同じものにするらしい。 
 ケイトが注文を終えると、ヴォルドが話し始める。

「そういや、さっきセーナ様がご帰還なさったらしいぜ?」

「あー、そういえば今日が極秘の帰還日だったな。祝帰還パレードは明後日だっけか」

「セーナ様って誰ですか?」

大和はケイトに問う。

「セーナ様はドズム様のご息女で、この国の王女様だ。いずれドズム様の跡を継がれる方でもある」

「そして、ケイトの未来のお嫁さんだ」

「ヴォルド、何度も言うが俺はあくまでも数ある候補の1人にすぎない。それにお前だって候補者の1人のだろうに」

「まあそうかもしれんが、婚約戦でお前に勝てる奴はドズム様とセーナ様を除けば誰もおらんだろうからな」

(婚約戦って何だ?この国ではお姫様の結婚相手は戦って決めるのか?)

 大和がそんなことを考えていると、さっき注文した料理が運ばれてきた。
 ゲテモノが運ばれてくるものだと思っていたが、運ばれてきたものはビーフシチューのようなもの見た目をしていた。

「熱いのでお気をつけください」

「「「はーい」」」

 店員にそう言われると、3人は揃って返事をする。

 ケイトとヴォルドが先に食べ始めた。

「ん?大和、どうした?」

「いや、自分で注文したとはいえ異世界人の俺が食べても大丈夫なのか?」

「さあな?だがケイトと俺がついてるんだ。何かあっても大丈夫だろ。それとも食わずに餓死するのを待つか?」

「いや、餓死は御免だ。いただきます」

 ヴォルドに食べるように促されると、大和はしっかりといただきますを言って恐る恐るスプーンで肉をよそい、口に運んだ。
 そして思い切って噛んでみると・・・

(あれ?めちゃくちゃ美味い!!)

「どうだ?美味いか?」

「いままで食べたものの中で1番美味い!」

「だろ?聖王豹のシチューはエルフ族の民族料理なんだ。気に入ってもらって嬉しいぜ」

 ケイトら俺とヴォルドのやり取りを笑みを浮かべながら見ている。
そして、ケイトは大和ふと気になったに疑問をぶつける。

「食べる前のいただきますって何なんだい?」

 大和は特に考えずに当たり前のようにしていたことなので、そんな事気にするのかと思った。
 だが大和は、よく考えてみれば自分の世界、自分の国での常識がこの世界でも同じはずがないという事に気がついた。
 そして大和はケイトに丁寧に説明する。

「いただきますっていうのは、俺らは命の恵をたいただいている訳だからその命の恵への感謝の意味と食事を作ってくれた人とか、色々なものへの感謝の意味があるんだよ」

「へー、そうなのか」

「ちなみに食べ終わったらごちそうさまでしたって言うんだよ。これにも感謝の意味がある。まあ、どちらも俺がいた世界の話だから2人は気にしなくていいよ」

「「いただきます」」

ケイトとヴォルドは大和の真似をしてやってみた。
 大和はそれに対して自分がこの国に受け入れられたんだと感じて少し嬉しくなった。

「なんだよそれ」

「お前がこうするって言ったんだろ?」

「別に強要はしてないよ」

 大和が笑いながらツッコミを入れると、ヴォルドは嬉しそうに文句を言っていた。
 その後、3人は夕食を終えると、3人揃って

「「「ごちそうさまでした」」」

と言って食堂を出た。
 正直、周りからは変な目で見られていたが、悪い気はしなかった。

「じゃあとりあえず俺らは帰るわ」

「おう、ありがとな2人とも」

「いいってことよ」

「多分明日は俺は来れないだろうけど、ヴォルドが来るだろうから俺はまた今度な」

「おう」

「んじゃ、俺はまた明日だな」

 3人は別れの挨拶を済ませると、ケイトとヴォルドそれぞれの方向へ歩いていった。
 大和は宿屋の人に自分の部屋に案内してもらい、入浴を済ませ寝床に就くのだった。
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