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第1章:エルフの国編
第22話 バギランド王国訪問に向けて
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大和のBチームリーダー就任から2週間後、バギランド王国の大使館からシャーリス王国外務省への連絡が入った。
その内容はもちろん、セーナとバギランド王国王女の会談の招待だった。
その内容はすぐにドズムに伝わり、予定通りセーナをバギランドに行かせることにした。
「というわけでケイト、訪問はちょうど2週間後だ。それまでにセーナの護衛の編成を考えておくように」
「はっ!」
ケイトは玉座の間でドズムに命令されると、王室特殊兵団本部へ戻り、隊長達に招集をかけた。
隊長たちが全て揃うと、いつもより人数が多いことにルイスが気づいた。
「あれ?なんで1、2、4番隊だけリーダーが来てるんです?」
ルイスがケイトに質問すると、ケイトは今回の護衛に関することなので、これから話すのことと一緒に話すことにした。
「これから話すことに関係するからそこで説明するよ」
「わかりました」
ルイスが返事をすると、ケイトは早速会議を始める。
「ここにいる者達はもう知ってると思うが、妖魔たちが動き出した。
約1時間前、バギランド王国からセーナ様とバギランド王国の王女様との会談の招待が届いた。
奴らの計画では、バギランド王国に呼び出したセーナ様を王国ごと亡き者にしもうとしている。
今回はそれを阻止すべく、こちらも護衛を兼ねて戦力を派遣する。
もう既に派遣する隊には事前に連絡してリーダー達まで連れてきてもらったので皆はわかっているかもしれないが、具体的な作戦をこれから伝える」
ケイトがそう言うと、会議室内にいるもの達の身が引き締まった。
「まず、今回派遣する隊はヴォルド達1番隊とマナカ達2番隊、そしてサユリ達4番隊だ。
そしてこの3つの隊の総隊長として1番隊隊長、ヴォルド・ハイツを任命する」
「任せてくれ、団長」
ヴォルドはそう言われると起立をし、ケイトに向かって敬礼をする。
ヴォルドの後ろに控えていた大和、リン、ギャットマンもヴォルドに続いて敬礼をする。
「ああ、頼んだよ。出来るだけバギランド王国に駐屯しているシャーリス軍と連携をとるようにしてくれ。
反乱軍を鎮圧する際の指揮系統も大事だからね」
「おう」
「それと、各隊の細かい任務内容だけど、1番隊は主にセーナ様の身辺警護だ。
そして2番隊と4番隊はバギランド王国内にひと足早く入国して警備の下見と密かに諜報活動を行なってくれ。
妖魔達は今回の計画に対してかなり前から準備していることだろう。
いくらのこちらが相手の目的をわかっていたとしても、情報が少ない分不利になる。
しかし目立った動きをすれば、あちらにこちらの動きが読まれてしまうおそれもある。
だから諜報活動はバギランド政府に内通者がいることを考えて国王と王宮大臣以外には伏せているからくれぐれも無理のない範囲で頼む。いいな?」
「「「了解!」」」
「国内に残る隊の任務の振り分けはまた後日伝える。
それでは会議は終了だ」
1、2、4番隊の隊長達が返事をすると、会議は終わった。
ヴォルド達バギランド派遣隊は、会議の後に任務の打ち合わせのために別の会議室を手配し、隊長、副隊長クラスが集まって会議を始めようとしていた。
□□□□□
大和は王室特殊兵団の会議が終わった後、これから約3時間程の休憩時間を使って図書館で魔法の研究をしよう思い、図書館に行こうとしていた。
隊長のヴォルドと副隊長のリンがバギランド派遣隊の打ち合わせに行き、大和ギャットマンと共に会議室から出ようとすると、大和は誰かに呼び止められた。
「大和、お疲れさん、この後は暇かい?」
「ジェイル隊長!お疲れ様です」
大和は声の方を振り返ると、声の主はジェイルだった。
「この後は3時間くらい休憩時間があるので図書館で1人で魔法の研究をしようと思ってます」
大和はとりあえずこの後の予定をジェイルに伝えた。
別にジェイルと関わりたくないわけではないが、特に大事な用でないなら出来るだけ邪魔しないでほしいという意味を少し込めてジェイルに伝える。
「図書館で研究かー。
それより俺と模擬戦しない?」
ジェイルは大和の予定をスルーして、模擬戦をやらないかと言い出した。
「模擬戦ですか?」
「うん、模擬戦は模擬戦で魔法の研究になると思うんだけど、どう?やらない?」
ジェイルは模擬戦がやりたくてうずうずしているようだ。
正直、大和は実戦で得られることも多いのは理解していたのでこの申し出を受けることにした。
「わかりました。やりましょう」
「じゃあ今から第5演習場に来てね。
俺は先に行ってるよー」
ジェイルは大和に場所を伝えると、大和とギャットマンを部屋に残し、一足先に演習場へ向かった。
大和は部屋を出て演習場に向かう。
ギャットマンは大和の隣を歩きながら大和に話かける。
「大和、よかったな」
「なにがですか?」
「ジェイル副団長は気に入った奴とは必ず模擬戦をやるんだよ」
「え?まじすか?」
「ああ。少なくても王室特殊兵団に入団した俺や俺の同期は模擬戦やってもらったぜ」
「そんなすごいことなんすね」
「団員たちはケイト団長やジェイル副団長に憧れてるからなー」
「じゃあこの機会を無駄にしないように頑張ってきますわ。
ギャットマンさんは任務頑張ってきてください」
「おう。頑張れよー」
大和はギャットマンを置いて走って演習場へ向かった。
□□□□□
大和が第5演習場に着くと、中ではジェイルと審判のために呼ばれたであろう非番の一般団員がいた。
「お、来た来た。じゃあ早速始めようか」
「いきなりですか・・・」
ジェイルがすぐに始めようとするのに対し、大和は内心諦めながら呟いた。
「準備はいいかい?」
「ええ、いいですよ」
ジェイルの思い通り、大和の到着早々に試合は始まろうとしている。
「ただいまより、王室特殊兵団副団長兼3番隊隊長ジェイル・フラスト対王室特殊兵団1番隊Bチームリーダーヤマト・ハナオカの模擬戦を行う。
ルールは双方共にあらゆる武器使用が可能。また、魔法は殺傷レベルの威力は出さないこととする。
そして、どちらかがダウンするか、降参した場合に勝敗は決まります。
なにか質問はございますか?」
審判が2人にルール説明をし、質問を問う。
「「ない!」」
審判の質問に対し、2人は勢いよく、そして闘志を燃やして返事をした。
「それでは双方構えて・・・始め!」
審判は合図と同時にその場を離れ、陰から2人の戦いを観戦する。
審判がその場を離れると、2人は戦闘を開始した。
戦闘が開始すると、2人は剣と剣をぶつけ合いながらお互いを探っえている。
一般団員では気絶してしまいそうな緊張感で斬り合いをしている中、最初に仕掛けたのは大和だ。
「抜刀術・吹雪斬!」
大和はまるで雪のような冷気を纏った剣でジェイルに斬り掛かる。
しかし、ジェイルは攻撃を避けようとせず、そのまま大和の攻撃は直撃した。
「なに!?」
大和はジェイルに確実に攻撃が当たっているのを確信しているし、現に直撃したのをこの目で今この瞬間見ている。
それなのに表情を何一つ変えずに棒立ちしているジェイルに大和は驚愕している。
「どうした?大和、君の実力はそんなものかい?
じゃあ次は俺の番だね!」
今度はジェイルが大和に攻撃を仕掛ける。
「シャーリス剣術・独岩流斬!!」
ジェイルは地面から岩を生やすように剣を抜き、下から大和を斬りつける。
「万物障壁!」
大和は緊急防御体勢に入り、何とか直撃を免れた。
そして大和はジェイルから距離をとると、ジェイルを冷静に分析する。
(さっき攻撃を止められた時に帝王眼でジェイルを見たが、やっぱ重力は確実に操作してるな。
でも重力を操作して物理的ダメージは防いでも属性ダメージは入るはずだよな?もしかしてそれも無効化しているとか?)
大和は自分の中である程度仮説を立ててみた。
(とりあえずもう少し様子を見てみるか)
大和はしばらく様子見で攻撃をしてみることにした。
「氷河凍結光線!!」
大和は剣先から氷点下の光線をジェイルに向けて放つ。
しかし、それもやはりジェイルには通じなかった。
大和はそれに動じるとこなく、次の攻撃に移る。
「聖光球放射!!」
大和が放った無数の光の球は、ジェイルに向かって飛んでいく。
だが、それもジェイルには通用しなかったが、大和は少し違和感を感じた。
(あれ?なんかさっきより処理速度早くないか?)
大和が攻撃で用いてきた氷属性魔法は当然のように無効化されてきたが、今回の光属性魔法は無効化までのスピードが氷属性に比べて早かった。
大和はこの違和感を解消すべく、引き続き攻撃を行う。
「抜刀術・炎天風衝斬!」
大和は火属性魔法を剣に纏わせ、ジェイルに向かって斬りつける。
やはり、大和の攻撃は通用しない。
「どうやらなにか試してるみたいだね。
気が済むまでやるといいよ」
ジェイルは余裕をもって大和に言った。
そして次はジェイルが大和に仕掛ける。
「シャーリス剣術・閃光華火」
ジェイルは光属性と火属性の混合魔法を剣に纏わせた。
それはまるで線香花火のように火花が散っている。
ジェイルはその剣で大和に斬りつける。
「流氷斬撃!!」
大和はジェイルの攻撃を剣で受け流し、カウンターを狙う。
ジェイルは咄嗟にその攻撃を避け、次の攻撃に余裕を持って備えた。
しかし大和は、連続して攻撃をすることはなかった。
(やっぱりそうか。
ジェイルさんは攻撃をしている時は無効化魔法は使えない。
だがそれは本人もわかっているだろうな。)
大和はジェイルの絶対防御の仕組みの一部を理解した。
そして、次の仮説さえ何とかすればジェイルに攻撃を与えることが出来るところまできている。
大和はそれを証明するために、剣を鞘に納め、攻撃態勢に入る。
「抜刀術・魔法物崩壊斬!!」
大和はジェイルに斬り掛かった。
次も無効化される・・・かのように思えた。
「なに!?」
どうやらジェイルは無効化に関する結界を自分の周りに張っていたようだ。
だがその結界は、パリン、と音と共に大和の攻撃によって破壊された。
「よし!これならいける!壊転冷脚!」
大和はそのままの勢いで攻撃を続けるのに対しジェイルは即座に迎撃に入る。
「大岩掌底!!」
ジェイルは岩のように硬い土属性の掌底を大和の回し蹴りに打ち込んだ。
2人の攻撃がぶつかり合った瞬間、ものすごい衝撃音と共に2人の周りに冷たい土埃が舞った。
大和は土埃の中でジェイルを見失い、帝王眼を発動させてジェイルを探そうとした。
「どこにいった!?」
「ここだよ」
土埃の中、ジェイルを探す大和の背後に突然人の気配が現れた。
その気配の正体はジェイルで、ジェイルら大和の頭に光属性魔法を纏わせた剣を突きつける。
その様子を見た審判は、2人に近づき判定を出す。
「勝負そこまで!この勝負、王室特殊兵団副団長兼3番隊隊ジェイル・フラストの勝ちとする!」
審判の声と共に大和とジェイルは剣を鞘に納め、お互いに握手する。
「いやー、ジェイル隊長は強かったですね。
完敗です」
「いやいや、大和もなかなかだよ。
組手をやった中で俺のあの結界を破ったのはグラントルと君だけだよ」
ジェイルは大和の実力を自分の体で感じることが出来て満足していた。
「恐縮です。まさか光属性変換の結界と光属性無効の結界を重ねて張るなんて思いもしなかったですよ」
大和は帝王眼で分析した結果が正解か不正解かを確かめるかのようにジェイルに話す。
「はは!まさか仕組みまでバレてたとはね!
もしかしたら次は俺が負けるかも」
大和の読みはどうやら正解だったようだ。
大和は帝王眼を少し使いこなせるようになって自分的には負けはしたものの満足していた。
だが、さすがに次はジェイルに絶対に勝てる自信まではなかった。
「いやいや、まだわかりませんよ。
ですがいい経験になりました。また機会があればお願いします」
「おう!」
大和にそう言われると、ジェイルは少し嬉しそうに返事を返した。
大和は今回の戦いで、結界魔法について興味を持ったので残った時間を使って図書館で調べることにした。
「では、俺は失礼します。ジェイル隊長はこれから任務ですか?」
「ああそうだよ。大和は図書館に行くんだろ?魔法の研究頑張れよ」
「ありがとうございます。ジェイル隊長も任務頑張ってください」
大和はジェイルにそう言うと演習場から走って出ていき、図書館へと向かった。
その内容はもちろん、セーナとバギランド王国王女の会談の招待だった。
その内容はすぐにドズムに伝わり、予定通りセーナをバギランドに行かせることにした。
「というわけでケイト、訪問はちょうど2週間後だ。それまでにセーナの護衛の編成を考えておくように」
「はっ!」
ケイトは玉座の間でドズムに命令されると、王室特殊兵団本部へ戻り、隊長達に招集をかけた。
隊長たちが全て揃うと、いつもより人数が多いことにルイスが気づいた。
「あれ?なんで1、2、4番隊だけリーダーが来てるんです?」
ルイスがケイトに質問すると、ケイトは今回の護衛に関することなので、これから話すのことと一緒に話すことにした。
「これから話すことに関係するからそこで説明するよ」
「わかりました」
ルイスが返事をすると、ケイトは早速会議を始める。
「ここにいる者達はもう知ってると思うが、妖魔たちが動き出した。
約1時間前、バギランド王国からセーナ様とバギランド王国の王女様との会談の招待が届いた。
奴らの計画では、バギランド王国に呼び出したセーナ様を王国ごと亡き者にしもうとしている。
今回はそれを阻止すべく、こちらも護衛を兼ねて戦力を派遣する。
もう既に派遣する隊には事前に連絡してリーダー達まで連れてきてもらったので皆はわかっているかもしれないが、具体的な作戦をこれから伝える」
ケイトがそう言うと、会議室内にいるもの達の身が引き締まった。
「まず、今回派遣する隊はヴォルド達1番隊とマナカ達2番隊、そしてサユリ達4番隊だ。
そしてこの3つの隊の総隊長として1番隊隊長、ヴォルド・ハイツを任命する」
「任せてくれ、団長」
ヴォルドはそう言われると起立をし、ケイトに向かって敬礼をする。
ヴォルドの後ろに控えていた大和、リン、ギャットマンもヴォルドに続いて敬礼をする。
「ああ、頼んだよ。出来るだけバギランド王国に駐屯しているシャーリス軍と連携をとるようにしてくれ。
反乱軍を鎮圧する際の指揮系統も大事だからね」
「おう」
「それと、各隊の細かい任務内容だけど、1番隊は主にセーナ様の身辺警護だ。
そして2番隊と4番隊はバギランド王国内にひと足早く入国して警備の下見と密かに諜報活動を行なってくれ。
妖魔達は今回の計画に対してかなり前から準備していることだろう。
いくらのこちらが相手の目的をわかっていたとしても、情報が少ない分不利になる。
しかし目立った動きをすれば、あちらにこちらの動きが読まれてしまうおそれもある。
だから諜報活動はバギランド政府に内通者がいることを考えて国王と王宮大臣以外には伏せているからくれぐれも無理のない範囲で頼む。いいな?」
「「「了解!」」」
「国内に残る隊の任務の振り分けはまた後日伝える。
それでは会議は終了だ」
1、2、4番隊の隊長達が返事をすると、会議は終わった。
ヴォルド達バギランド派遣隊は、会議の後に任務の打ち合わせのために別の会議室を手配し、隊長、副隊長クラスが集まって会議を始めようとしていた。
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大和は王室特殊兵団の会議が終わった後、これから約3時間程の休憩時間を使って図書館で魔法の研究をしよう思い、図書館に行こうとしていた。
隊長のヴォルドと副隊長のリンがバギランド派遣隊の打ち合わせに行き、大和ギャットマンと共に会議室から出ようとすると、大和は誰かに呼び止められた。
「大和、お疲れさん、この後は暇かい?」
「ジェイル隊長!お疲れ様です」
大和は声の方を振り返ると、声の主はジェイルだった。
「この後は3時間くらい休憩時間があるので図書館で1人で魔法の研究をしようと思ってます」
大和はとりあえずこの後の予定をジェイルに伝えた。
別にジェイルと関わりたくないわけではないが、特に大事な用でないなら出来るだけ邪魔しないでほしいという意味を少し込めてジェイルに伝える。
「図書館で研究かー。
それより俺と模擬戦しない?」
ジェイルは大和の予定をスルーして、模擬戦をやらないかと言い出した。
「模擬戦ですか?」
「うん、模擬戦は模擬戦で魔法の研究になると思うんだけど、どう?やらない?」
ジェイルは模擬戦がやりたくてうずうずしているようだ。
正直、大和は実戦で得られることも多いのは理解していたのでこの申し出を受けることにした。
「わかりました。やりましょう」
「じゃあ今から第5演習場に来てね。
俺は先に行ってるよー」
ジェイルは大和に場所を伝えると、大和とギャットマンを部屋に残し、一足先に演習場へ向かった。
大和は部屋を出て演習場に向かう。
ギャットマンは大和の隣を歩きながら大和に話かける。
「大和、よかったな」
「なにがですか?」
「ジェイル副団長は気に入った奴とは必ず模擬戦をやるんだよ」
「え?まじすか?」
「ああ。少なくても王室特殊兵団に入団した俺や俺の同期は模擬戦やってもらったぜ」
「そんなすごいことなんすね」
「団員たちはケイト団長やジェイル副団長に憧れてるからなー」
「じゃあこの機会を無駄にしないように頑張ってきますわ。
ギャットマンさんは任務頑張ってきてください」
「おう。頑張れよー」
大和はギャットマンを置いて走って演習場へ向かった。
□□□□□
大和が第5演習場に着くと、中ではジェイルと審判のために呼ばれたであろう非番の一般団員がいた。
「お、来た来た。じゃあ早速始めようか」
「いきなりですか・・・」
ジェイルがすぐに始めようとするのに対し、大和は内心諦めながら呟いた。
「準備はいいかい?」
「ええ、いいですよ」
ジェイルの思い通り、大和の到着早々に試合は始まろうとしている。
「ただいまより、王室特殊兵団副団長兼3番隊隊長ジェイル・フラスト対王室特殊兵団1番隊Bチームリーダーヤマト・ハナオカの模擬戦を行う。
ルールは双方共にあらゆる武器使用が可能。また、魔法は殺傷レベルの威力は出さないこととする。
そして、どちらかがダウンするか、降参した場合に勝敗は決まります。
なにか質問はございますか?」
審判が2人にルール説明をし、質問を問う。
「「ない!」」
審判の質問に対し、2人は勢いよく、そして闘志を燃やして返事をした。
「それでは双方構えて・・・始め!」
審判は合図と同時にその場を離れ、陰から2人の戦いを観戦する。
審判がその場を離れると、2人は戦闘を開始した。
戦闘が開始すると、2人は剣と剣をぶつけ合いながらお互いを探っえている。
一般団員では気絶してしまいそうな緊張感で斬り合いをしている中、最初に仕掛けたのは大和だ。
「抜刀術・吹雪斬!」
大和はまるで雪のような冷気を纏った剣でジェイルに斬り掛かる。
しかし、ジェイルは攻撃を避けようとせず、そのまま大和の攻撃は直撃した。
「なに!?」
大和はジェイルに確実に攻撃が当たっているのを確信しているし、現に直撃したのをこの目で今この瞬間見ている。
それなのに表情を何一つ変えずに棒立ちしているジェイルに大和は驚愕している。
「どうした?大和、君の実力はそんなものかい?
じゃあ次は俺の番だね!」
今度はジェイルが大和に攻撃を仕掛ける。
「シャーリス剣術・独岩流斬!!」
ジェイルは地面から岩を生やすように剣を抜き、下から大和を斬りつける。
「万物障壁!」
大和は緊急防御体勢に入り、何とか直撃を免れた。
そして大和はジェイルから距離をとると、ジェイルを冷静に分析する。
(さっき攻撃を止められた時に帝王眼でジェイルを見たが、やっぱ重力は確実に操作してるな。
でも重力を操作して物理的ダメージは防いでも属性ダメージは入るはずだよな?もしかしてそれも無効化しているとか?)
大和は自分の中である程度仮説を立ててみた。
(とりあえずもう少し様子を見てみるか)
大和はしばらく様子見で攻撃をしてみることにした。
「氷河凍結光線!!」
大和は剣先から氷点下の光線をジェイルに向けて放つ。
しかし、それもやはりジェイルには通じなかった。
大和はそれに動じるとこなく、次の攻撃に移る。
「聖光球放射!!」
大和が放った無数の光の球は、ジェイルに向かって飛んでいく。
だが、それもジェイルには通用しなかったが、大和は少し違和感を感じた。
(あれ?なんかさっきより処理速度早くないか?)
大和が攻撃で用いてきた氷属性魔法は当然のように無効化されてきたが、今回の光属性魔法は無効化までのスピードが氷属性に比べて早かった。
大和はこの違和感を解消すべく、引き続き攻撃を行う。
「抜刀術・炎天風衝斬!」
大和は火属性魔法を剣に纏わせ、ジェイルに向かって斬りつける。
やはり、大和の攻撃は通用しない。
「どうやらなにか試してるみたいだね。
気が済むまでやるといいよ」
ジェイルは余裕をもって大和に言った。
そして次はジェイルが大和に仕掛ける。
「シャーリス剣術・閃光華火」
ジェイルは光属性と火属性の混合魔法を剣に纏わせた。
それはまるで線香花火のように火花が散っている。
ジェイルはその剣で大和に斬りつける。
「流氷斬撃!!」
大和はジェイルの攻撃を剣で受け流し、カウンターを狙う。
ジェイルは咄嗟にその攻撃を避け、次の攻撃に余裕を持って備えた。
しかし大和は、連続して攻撃をすることはなかった。
(やっぱりそうか。
ジェイルさんは攻撃をしている時は無効化魔法は使えない。
だがそれは本人もわかっているだろうな。)
大和はジェイルの絶対防御の仕組みの一部を理解した。
そして、次の仮説さえ何とかすればジェイルに攻撃を与えることが出来るところまできている。
大和はそれを証明するために、剣を鞘に納め、攻撃態勢に入る。
「抜刀術・魔法物崩壊斬!!」
大和はジェイルに斬り掛かった。
次も無効化される・・・かのように思えた。
「なに!?」
どうやらジェイルは無効化に関する結界を自分の周りに張っていたようだ。
だがその結界は、パリン、と音と共に大和の攻撃によって破壊された。
「よし!これならいける!壊転冷脚!」
大和はそのままの勢いで攻撃を続けるのに対しジェイルは即座に迎撃に入る。
「大岩掌底!!」
ジェイルは岩のように硬い土属性の掌底を大和の回し蹴りに打ち込んだ。
2人の攻撃がぶつかり合った瞬間、ものすごい衝撃音と共に2人の周りに冷たい土埃が舞った。
大和は土埃の中でジェイルを見失い、帝王眼を発動させてジェイルを探そうとした。
「どこにいった!?」
「ここだよ」
土埃の中、ジェイルを探す大和の背後に突然人の気配が現れた。
その気配の正体はジェイルで、ジェイルら大和の頭に光属性魔法を纏わせた剣を突きつける。
その様子を見た審判は、2人に近づき判定を出す。
「勝負そこまで!この勝負、王室特殊兵団副団長兼3番隊隊ジェイル・フラストの勝ちとする!」
審判の声と共に大和とジェイルは剣を鞘に納め、お互いに握手する。
「いやー、ジェイル隊長は強かったですね。
完敗です」
「いやいや、大和もなかなかだよ。
組手をやった中で俺のあの結界を破ったのはグラントルと君だけだよ」
ジェイルは大和の実力を自分の体で感じることが出来て満足していた。
「恐縮です。まさか光属性変換の結界と光属性無効の結界を重ねて張るなんて思いもしなかったですよ」
大和は帝王眼で分析した結果が正解か不正解かを確かめるかのようにジェイルに話す。
「はは!まさか仕組みまでバレてたとはね!
もしかしたら次は俺が負けるかも」
大和の読みはどうやら正解だったようだ。
大和は帝王眼を少し使いこなせるようになって自分的には負けはしたものの満足していた。
だが、さすがに次はジェイルに絶対に勝てる自信まではなかった。
「いやいや、まだわかりませんよ。
ですがいい経験になりました。また機会があればお願いします」
「おう!」
大和にそう言われると、ジェイルは少し嬉しそうに返事を返した。
大和は今回の戦いで、結界魔法について興味を持ったので残った時間を使って図書館で調べることにした。
「では、俺は失礼します。ジェイル隊長はこれから任務ですか?」
「ああそうだよ。大和は図書館に行くんだろ?魔法の研究頑張れよ」
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高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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