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第4章
第41話
しおりを挟む「東谷ーッ!」
私は今、夕方の校舎にまた戻っていた。人影も少なくなっていた校舎の階段を必死に駆け上がった私は、やはり屋上にいた彼の名字をめいいっぱい叫ぶように呼びかける。
「ん? 北野さん、来たんだ……という事は?」
「うん、私決めた! これから東谷と一緒にこの大問題、解決させるよっ!」
私は東谷にそう、伝える。それを聞いた彼の表情は少し目を見開いた様子だった。
「……凄い、晴れやかにそう言い切れるんだね? でも、良いのかい?」
「え?」
意外な質問が飛んでくる。
「僕が提示した解決法は事実上の再演……つまりは君がその前に決めた選択をまたやり直すという事になる。それで装置の影響をリセットさせようという事な訳だ」
「うん、そうだね」
確かに東谷からそう説明された。あの絵本……パラレルワールド生成装置の暴走を止めるならリセットの必要があり、それは結論から言うと絵本の影響下にある出来事をもう一度リセットしてやり直す必要があるのだと。
つまり、事実上の再演という事。
「つまりは一度でも失敗すれば装置の暴走はより激しい物になるし、君が選んだ事も全てがリセットされる。中々に重い選択だと思うよ。僕がこれが最も実現しやすい方法だとは言ったけどね」
「うん、それもわかってる」
けれど私はあの伝言を聞いた時、これからこの事態を私はどうすればいいのか決心ができた。
「でも、他の手段よりは確実に事態を収められるやり方だって東谷は言ってたし、私がちゃんとやればもう問題なし、なんでしょ? なら私はそれを選択するし……それに」
「……それに?」
東谷は、続く言葉に引っ掛かりを覚えたのか私の最後の言葉をオウム返ししてきた。
「そっちの方が何だか青春してるって感じが凄いじゃん! 凄く映画っぽい!」
「……ッ」
東谷は私の返答に対して言葉が詰まっている様子に思えた。
「あ、でもこんな軽いノリでって思うし、思われてもしょうがないなあとは思うんだけど。それでも私はやっぱりこういう時だからこそ青春してるって思える。だから、私は東谷を助けるためにこの大問題を解決させるっ! だって、やり直しをする事がこの問題の解決で一番実現できるって事なんでしょ!?」
私は出来るだけ本心を東谷に堂々と宣告した。どうしよう……東谷はこんな返答をしてどう思ったんだろ。
「……ハハッ」
少し経って、東谷から出たのは……笑い声だった。
「ッハハハハッ、アハハハハッ!」
そして間を置かず東谷はなんと笑い始めた。それも大声で。
「ちょっと! 割とこれ、真面目な返答だったんだけどっ?!」
「ハハッ……ごめんごめん、まさか返ってきた答えがこんなのだとは思わなくて」
「ちょっと! それどう言う意味?!」
確かに、ここでこういう返答するなんて思っても見ない事かもしれないけど、ちょっと笑い過ぎかも……!
「ハァー……でも、確かに北野さんがそれだけの決心が出来る事があったって事だよね」
「……うん、そういう事っ」
東谷の表情は一気に緊張を張り詰めた様な……でも何処かいつもの様な読めないものに戻っていた。
「よし、これから僕たちでこの事態の解決へ行くか。北野さん、いますぐに準備を終わらせるから、ちょっと待っててくれるかい?」
「わかった。すぐにでも、この事態を解決させよう!」
そして、私たちはこれから始める。
ある意味一大決心の誰にも知られない世界の大問題を解決へ動き出す、この世界の何処かにある私たちだけの世界を救う大活躍を。
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