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第1話
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その日、たまたま図書室にいったのは借りたまま返却し忘れていた本を返却するように連絡が来たのがきっかけだった。
大体一か月くらい借りていた。学校の決まりでは貸出期間は二週間。
返却が大幅に遅れていた事を連絡が来た事でやっと認識した俺は図書室で借りていた本を返却しに来た。返却を終えた後は少しだけ、と思い図書室を見て回った。そこで、俺はある物を見つけた。
「……ん?」
視界の端っこにたくさんの積み重なった紙が床に落ちるのが見えた。俺はその紙が落ちていく様子を目で追う。……一体何が落ちたんだろうか。俺は視線の先にあるその落ちた紙束の方まで歩いて拾い上げる。そこには
『君の瞳に映りたい』
最初に見えたのはマス目で区切られた中にそんな文章が書きこまれていた。つまり、これは原稿用紙という事で、更にはこの文から一行程開けた後に、文字が書き込まれていた。俺は少しだけその書き込まれた原稿用紙を読んだ。
「……これは」
少し読み込んだだけでわかる。やたら愛を強調するような文章、そして過剰にやたら甘く書かれた痴話喧嘩のシーン――その痴話喧嘩の内容はちょっと距離が近いか云々で、少し二人がもめるが最終的にはやっぱり近くにいたい、という結論になる……――そして、頬を赤らめる。大好き。といった言葉が多用されまくる文。
正直、頭が痛くなってくるぐらい甘々だが……はっきりとラブコメとして書かれたであろうことがわかる内容だった。とりあえず、元々置いていたであろう場所にこの原稿用紙置こうと思ったのだが……。
「ちょ……ちょっと!!」
急に近くでキーンと響く高い声が。それはある意味悲鳴の様な……そんなある意味悲痛さが伝わってくるような声が本来は静かでなくてはいけない図書室に響く。
「あんた、何勝手に!!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……?」
俺はその声のした方へと向くと、そこには女子が。……しかも、普通の女子ではない。校則違反にならない様に僅かに手入れをしたであろう、という肌や少しだけ明るめの髪。そして少しだけラフな形に着崩した制服。そう、所謂ギャルとかに近いタイプの女子が俺の持っているこのラブコメ小説が書かれた原稿用紙に反応している。しかも、その女子は。
「い、一之瀬? まさかこのラブコメ小説って」
俺のクラスメイトの、一之瀬早月だった。彼女はクラスの中でも比較的目立つ方で、行事などでも主体的に行動する方である。
「……は? いや、ちょっと待って。色々頭の中が混乱してきたんだけど!」
「……」
彼女はそう話すが、俺自身も混乱していて、何も言う事ができなかった。
このラブコメ小説の原稿用紙に反応したのが一之瀬という事があまりにも現実的じゃなさすぎた。彼女のイメージとあまりにもかけ離れていると、俺は感じたからだ。
*
朝早く登校した俺は特に何をするまでもなく、ただ何となく今日使う教科書の適当に開いたページを眺めながら昨日の事を思い返す。割とすぐに落ち着いた俺たちは、割とすぐに図書室にやってきた一之瀬の友人が現れた事で有耶無耶なまま話は終わった。
友人に連れられて図書室を出る際、彼女は少し俺の方をちらりと見てきた。……もちろん、それは気があるから等といった話ではなく、あの原稿用紙の事について話したい事があったからだろう。
あの時に友人に分厚い紙を見られた一之瀬はその事について訊かれた際「これ落とし物かも。私が届けるし、大丈夫大丈夫!」と答えていたのだ。多分、彼女は原稿用紙に書かれたラブコメ小説の事について触れられたくないのだろうと考えた。
あの時の反応と原稿用紙に書かれていた名前から考えると、あのラブコメ小説は一之瀬が書いたものだろう。そして、彼女はそのラブコメ小説をなんとか隠したがっていると考えた。……全部想像上の話ではあるが。
とにかく、今の所は彼女の方から動きがない。あの時の事は起きてなかったという事にしていこう……。
大体一か月くらい借りていた。学校の決まりでは貸出期間は二週間。
返却が大幅に遅れていた事を連絡が来た事でやっと認識した俺は図書室で借りていた本を返却しに来た。返却を終えた後は少しだけ、と思い図書室を見て回った。そこで、俺はある物を見つけた。
「……ん?」
視界の端っこにたくさんの積み重なった紙が床に落ちるのが見えた。俺はその紙が落ちていく様子を目で追う。……一体何が落ちたんだろうか。俺は視線の先にあるその落ちた紙束の方まで歩いて拾い上げる。そこには
『君の瞳に映りたい』
最初に見えたのはマス目で区切られた中にそんな文章が書きこまれていた。つまり、これは原稿用紙という事で、更にはこの文から一行程開けた後に、文字が書き込まれていた。俺は少しだけその書き込まれた原稿用紙を読んだ。
「……これは」
少し読み込んだだけでわかる。やたら愛を強調するような文章、そして過剰にやたら甘く書かれた痴話喧嘩のシーン――その痴話喧嘩の内容はちょっと距離が近いか云々で、少し二人がもめるが最終的にはやっぱり近くにいたい、という結論になる……――そして、頬を赤らめる。大好き。といった言葉が多用されまくる文。
正直、頭が痛くなってくるぐらい甘々だが……はっきりとラブコメとして書かれたであろうことがわかる内容だった。とりあえず、元々置いていたであろう場所にこの原稿用紙置こうと思ったのだが……。
「ちょ……ちょっと!!」
急に近くでキーンと響く高い声が。それはある意味悲鳴の様な……そんなある意味悲痛さが伝わってくるような声が本来は静かでなくてはいけない図書室に響く。
「あんた、何勝手に!!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……?」
俺はその声のした方へと向くと、そこには女子が。……しかも、普通の女子ではない。校則違反にならない様に僅かに手入れをしたであろう、という肌や少しだけ明るめの髪。そして少しだけラフな形に着崩した制服。そう、所謂ギャルとかに近いタイプの女子が俺の持っているこのラブコメ小説が書かれた原稿用紙に反応している。しかも、その女子は。
「い、一之瀬? まさかこのラブコメ小説って」
俺のクラスメイトの、一之瀬早月だった。彼女はクラスの中でも比較的目立つ方で、行事などでも主体的に行動する方である。
「……は? いや、ちょっと待って。色々頭の中が混乱してきたんだけど!」
「……」
彼女はそう話すが、俺自身も混乱していて、何も言う事ができなかった。
このラブコメ小説の原稿用紙に反応したのが一之瀬という事があまりにも現実的じゃなさすぎた。彼女のイメージとあまりにもかけ離れていると、俺は感じたからだ。
*
朝早く登校した俺は特に何をするまでもなく、ただ何となく今日使う教科書の適当に開いたページを眺めながら昨日の事を思い返す。割とすぐに落ち着いた俺たちは、割とすぐに図書室にやってきた一之瀬の友人が現れた事で有耶無耶なまま話は終わった。
友人に連れられて図書室を出る際、彼女は少し俺の方をちらりと見てきた。……もちろん、それは気があるから等といった話ではなく、あの原稿用紙の事について話したい事があったからだろう。
あの時に友人に分厚い紙を見られた一之瀬はその事について訊かれた際「これ落とし物かも。私が届けるし、大丈夫大丈夫!」と答えていたのだ。多分、彼女は原稿用紙に書かれたラブコメ小説の事について触れられたくないのだろうと考えた。
あの時の反応と原稿用紙に書かれていた名前から考えると、あのラブコメ小説は一之瀬が書いたものだろう。そして、彼女はそのラブコメ小説をなんとか隠したがっていると考えた。……全部想像上の話ではあるが。
とにかく、今の所は彼女の方から動きがない。あの時の事は起きてなかったという事にしていこう……。
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