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第2話
しおりを挟む……そう、思っていたのだが。そのまま平行線で何事もなく終わらせてくれなかった。
その日の放課後。俺は図書室に行って適当な本を取って流し読みをしていた。話す友達もあまりいない俺のルーティンみたいなものだったが、なんだかんだで文章は入ってくる。今読んでいる本は簡単に言えばサスペンスもの。三巻程の巻数で一つの事件を追う長編タイトルだ。
今は二巻の大体中盤辺り――二巻のページ数は336ページ程で、現在開いているページの端には174の数字が見える――を読み進めている最中である。少しずつ、提示されていた謎が解けようとしている。
気になる展開になっている事が肌身で感じられる。
俺は、ゆっくりと次のページを開こうとして――
「いたああぁぁっーー!」
「わぁぁああ!?」
急な大声に俺はビックリして椅子ごと後ろから倒れる。視界が一瞬大きな衝撃で揺れる。
「いててて……」
後頭部をガッツリと床に直撃しなかったものの、勢いよく後ろから倒れたためズキズキと痛む。その次に聞こえるのは「大丈夫?!」と言いながら、こちらに駆け寄ってくる足音――と、もう一つ何も言わずに同じ様に駆け寄ってくる様な音が聞こえる。
*
「急に大声だすなよ! ビックリしただろ!」
「ご、ごめん……」
ほとんど人通りの少ない廊下で俺は急に大声を張り上げてこちらに駆け寄ってきた彼女――一之瀬は申し訳なさそうに恐縮している。
この場所にいる理由は単純明快。目の前の彼女の行動がきっかけ。
幸い勢いよく後ろから倒れたものの頭を打つことはギリギリ回避できた。色々と騒動を大きくなるのを誤魔化すために急いで図書室から出ていった……一之瀬も後ろから付いてきた訳だが。
大けがをしかけた俺は当然の如く彼女に対して怒っている訳だけど……そういえば急に一之瀬が話しかけてきたという事は。
「……そういえば、お前何の用で来たんだよ」
「そりゃ……あの事しかないでしょうが! その……原稿……用紙」
やっぱり、反応的にはその事だよな……。
先日、俺がたまたま見てしまったあのラブコメ小説が書かれた原稿用紙……。その時は一之瀬が即奪って逃げていったから有耶無耶に終わってしまった訳だが、彼女が俺に用があるといえばこの事ぐらいしか思い浮かばない。そして、その内容は言わなくても伝わるだろう。
「……あの事まだ誰にも言いふらしてないでしょうね?!」
「言いふらす訳ねーだろ、そんな話をネタにできる相手もそんないないから」
もちろん、一之瀬が実はラブコメ小説を書いているという話を内緒にしてくれという事だ。同じクラスの一之瀬はクラス内ではそういった趣味とは無縁な体を装っている事を知っているから、そういう事を知られるのは本当に駄目なのだろう。
「まじ? あんたそんな友達いないの? ぼっち?」
「うるせーな」
「……ま、いいっしょ。それなら私の秘密知られるリスクはないだろうし」
こいつ……好き放題にいいやがる!
「……ところで、内容はどうだって思った?」
「……は?」
急にラブコメ小説の……内容について聞いて、俺は一瞬戸惑った。こいつ、一体何を言い出してるんだ?
「……! すぐ、答え出てこないならいいし! また聞く」
「は?! ちょ、待てよ!」
そう吐き捨てるように言った一之瀬はそのまま歩き去ってしまった。何だったんだホント……。
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