11 / 38
第11話
しおりを挟む「もう、入ちゃん悪気はないんだけど……困っちゃうよね」
困り顔で、凛は話す。学校を出て、和也は凛に連れられる様に街中を歩いて行った。
「いや、俺は別に……って感じだけど。和多利さんに助けられている所はあるし」
「高野くんからみたら、そうかも」
学校を出る直前の和多利とのやり取りを、凛は気にしている様子でその上少し顔は真っ赤な様子だった。風邪なのか? と和也が聞くと「さっきのからかわれて恥ずかしかっただけ!」と否定された。
恥ずかしい……そういえば。
『デートのために部室に呼ぶなんて』
凄くニヤリとした顔で、和多利がそんな事を言っていた様子がハッキリとフラッシュバックしてきて、和也もなんだか恥ずかしくなった様な、そんな気持ちになっていた。
そんな会話をしながら、和也と凛は二人で街中を歩いていた。凛に一緒に来て欲しい場所がある、と言われて一緒に来ているだけではあるが……確かに男女二人で来ているが、明らかにカップルという関係の空気ではない様にも見える。
どちらかといえば、用事でたまたま一緒に行動している、という感じに見えるかもしれない。実際に、そうなのだけど。
そういう風に和也は先ほどの会話に引っ張られるように考えている中、凛が伝える。
「着いたよ」
つまり、目的地に着いたという事だ。和也は周囲を見渡して見ると。
「……神社?」
和也が見えたものは鳥居……と思われる建造物の奥に階段があり、その階段の先には明らかに何かの建物がある。和也はこういう場所に詳しくないので、入り口前の建造物が鳥居かどうか、確信する自信は無かったのだが、凛が一緒に来て欲しいと言っていた場所は神社……なのだろう。
「この神社って市でも特に有名な所で。私もたまに……来ているんだ」
「そう、なんだ……」
たまに、の後に少し間が空いた事は気になる。
けれど、和也はそれ以上に彼女の言う『有名な所』という部分に着目する。市で有名な所というと、この神社は潟ケ谷に住んでいる人なら大体は知っている潟ケ谷神社という事になる……。
「もしかしてここが潟ケ谷神社?」
「そ、そうそう! でも、もしかしてって高野くんは来た事ないの?」
「そうな……」
そう言いかけた所で、少し引っ掛かりが生まれる。何となく、ここに来たような事がある気がしたような……そんな気がしたのだが。
「……高野くん?」
「あ……いや、別になんでもないよ。それで、ここに来たのって」
凛に心配をかけないように話題を変える。
「そうそう。ここに来たのは、文化祭で手芸部の展示が成功する様にって祈願しに来たの!」
「え、この神社ってそういうのも大丈夫なのか?」
「うん! この神社ってまさに、その人にとって大事な事が上手くいくようにっていう願いが元になっているって話だし、大丈夫!」
少し曖昧な気もするが……確かに、祈願をしに行きたいとなるなら神社へ向かうのは納得な、訳だ。そこで和也には一つの疑問が生まれる。
「それって、一緒に行くの俺で良かったのか? ほら、和多利さんとか……」
「確かに、部活のメンバーの子で行きたかったとは思うんだけど……ほら、この間の作品の進捗状況を話したでしょ? それで皆手を開ける事ができなくて……」
「あっ……」
和也が手伝いをしている大きな理由となっていた作品の制作状況が芳しくない、という話。それで、凛は和也を誘って祈願をしにいこうってなったのだろうか。
「まあね、そういう事だから高野くん呼んできたわけなの! それじゃ行こ!」
そう言って、凛は神社の方へと歩いていく。鳥居……の前で一度礼をした後に、端を歩いていく様子が見えた。もしかすると、今彼女がやった事は参拝におけるマナーだったりするのだろうか……?
少し、不安を覚えたが和也はとりあえず神社へと歩いていく事にした。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる