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〈第2章 夏、悩んだ日々〉
第7話
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日が強く照らされている。そして、部室ではクーラーが部屋の中を冷やすためにガンガンと稼働していた。
そういえば、もうすぐ夏休みが始まるんだと僕はぼんやりと考えていた。入部した日からはそこまで色々あったわけではない日々を過ごしていた。
けれど、何もしていないかといえば嘘にはなる。
「……それじゃあ来月はこの様な内容で行くけれどこれでいい?」
ホワイトボードが音が出ないくらいの勢いで弱く叩かれる。ホワイトボードには先ほどまでの話し合いで決まった内容が書き込まれていた。これは全部金住先輩が書いたもので、文はとても綺麗で見やすいものだった。
ホワイトボードに書き込まれた文芸冊子の内容の再確認に対し、異論を言う人はだれもいなかった。
「これで大丈夫だと思うよ」
と、母野先輩が言った。それに続いて行村先輩も「俺も異論なし」と答える。金住先輩が僕に目配せしてきた。
「あ……僕も大丈夫だと思います」
「よし。それでは来月分はこのような内容で行きます」
こうして、毎日の様に行っていた来月分の文芸冊子の内容決めは終わった。しかし、終わったと言ってもすぐに新たな文芸冊子の制作のための話し合いが始まるのだ。毎月出すという事もあり、中々休み期間は取れない。
「ああ。あと北村先生からお知らせで夏休み高校生文学コンクールのイベントがあるって話だ。誰か参加したい人がいたら北村先生に申請するように」
最後に金住先輩からイベントの話が出された。この間の話で聞いたのだが、時々学生向けの文学イベントの連絡が学校にやってくるそうで、今回のイベントもその一つなのだろう。
けれど、僕は彼女から最優先で取り組んでほしいと言われたものがある。
金住先輩の一言によって、一旦話し合いが終わった。金住先輩はちょっと席を外すと言って、行村先輩はちょっと用事があるから一旦部室を出ると言って部室を出て行った。
今この場には母野先輩と僕だけがいた。これは良いタイミングかもしれないと思って、母野先輩に気になっていたことを訊ねる事にした。
「そういえば母野先輩」
なに~、とのんびりとした口調で母野先輩は僕の呼びかけに返してきた。振り返ってきた時、彼女はおとなしめのウェーブのかかった髪を微かになびかせる。穏やかな性格な彼女にはとても似合う。
「その……文芸冊子に掲載している先輩の小説ってどんな内容なんですか?」
「ああ、そういえば神代くんにはまだどんな話か見せてなかったわね」
いつもやすみにしか見せていないから一応どんな内容なのか伝えているのを忘れていたわ、と付け加えられた。まあ、僕からも積極的にどんな内容か確認したいですという動きもなかったので忘れていても仕方ないかもしれない。
というか、
「……その口ぶりだと行村先輩もどんな内容か知らない……?」
「ええ。行村くんも詳しい内容は知らないわ。あの人、文芸冊子に出す本の感想文とか特定の物事に対する軽めの論文とかを書いている方に時間を割りたいみたいで」
毎月出す文芸冊子にそんな熱を持って制作に取り掛かっているのか……。僕とは見ている世界が全然違う、とそんな話を聞いただけで直観的に思った。
「まあ、どんな内容かは大まかには伝えているから話し合いには参加できているし、主導はやすみだからね……でも、神代くんに伝えてなかったのは素直に謝らなきゃ」
「ああ、いや。そこまでしなくてもいいですよ?」
そう? と母野先輩は眉を下げて心配そうな面持ちを見せる。彼女は穏やかな性格で、しっかりと配慮できる人なのだ。
「まあ、神代くんが大丈夫ならいいけれど……私が書いているのは二つ、あるの?」
「え?」
てっきり一つだと思っていた。母野先輩は僕の反応から察したようで、付け加えるように言った。
「確かに文芸冊子には二つ掲載しているけれど、片方は隔月……つまり二か月に一度しか掲載していないの。だからこそ私のペースで二つも同じところに掲載できているのだけどね」
「へえ……」
そして、彼女は続けてこの二つの小説の内容について話してくれた。毎月掲載している方の小説は高校生の探偵が事件の謎を解くミステリーもので、これが三か月分で一つの話になるように書いているらしい。
ちなみに今は第五話の中盤部分を次の文芸冊子に掲載するとのこと。ややこしい言い方になっているがなるべくわかりやすく言い直すと、第五部の第二話目ということだ。
「えっと……その小説、初めて掲載したのは去年の五月に?」
そうよ、と肯定の返事が返ってくる。
「私、去年の四月にやすみと一緒に入ったのよ。行村くんはそのちょっと後に入ったの」
去年は私たちが入るまでその年の三年生の先輩二人が文芸部をまわしていたみたい、と母野先輩は懐かしむ様につぶやく。
「確か、やすみがこんな小説を書いてみないか? って言われて書いた短編が今連載しているミステリーの原案だったのよね……」
「それ、金住先輩が原案者って事になるんじゃ」
確かに、彼女が原案者になるんだけどとちょっとはっきりとしない言い回しをしてから母野先輩はその理由を話す。
「やすみは自分はアイデアを出しただけだから原案のこととかはあまり掲載しなくていいし、それ以降は自分で考えてやってほしいって言ってたわ」
「……はあ」
やはり金住先輩は変わっているな、と思った。よく考えたらそれは出会ってからずっとだ。
「そういえば、」
「はい」
母野先輩は少し心配な面持ちを見せてくる。急な雰囲気の代わり方で内心驚きを隠せない。
「入部した日、神代くんはやすみに連れていかれていたけど、どんな話をしていたの?」
「あ……あの時の話ですか」
金住先輩があの二人のどちらかがこのことを話すまで自分から話さないようにって言われていたので、他の先輩方には言っていなかった話だ。
「たぶん、変なこと言われたんでしょう」
「ま、まあそんなところですね」
「具体的に、どんな内容だったの?」
やはり、ずっと気になっているようだ。僕だって一体二人で何の話をしていたかは気になるものだ。
なので、僕はあの時の話をすることにした。
「ちょっと、長くなるんですけどね……」
日が強く照らされている。そして、部室ではクーラーが部屋の中を冷やすためにガンガンと稼働していた。
そういえば、もうすぐ夏休みが始まるんだと僕はぼんやりと考えていた。入部した日からはそこまで色々あったわけではない日々を過ごしていた。
けれど、何もしていないかといえば嘘にはなる。
「……それじゃあ来月はこの様な内容で行くけれどこれでいい?」
ホワイトボードが音が出ないくらいの勢いで弱く叩かれる。ホワイトボードには先ほどまでの話し合いで決まった内容が書き込まれていた。これは全部金住先輩が書いたもので、文はとても綺麗で見やすいものだった。
ホワイトボードに書き込まれた文芸冊子の内容の再確認に対し、異論を言う人はだれもいなかった。
「これで大丈夫だと思うよ」
と、母野先輩が言った。それに続いて行村先輩も「俺も異論なし」と答える。金住先輩が僕に目配せしてきた。
「あ……僕も大丈夫だと思います」
「よし。それでは来月分はこのような内容で行きます」
こうして、毎日の様に行っていた来月分の文芸冊子の内容決めは終わった。しかし、終わったと言ってもすぐに新たな文芸冊子の制作のための話し合いが始まるのだ。毎月出すという事もあり、中々休み期間は取れない。
「ああ。あと北村先生からお知らせで夏休み高校生文学コンクールのイベントがあるって話だ。誰か参加したい人がいたら北村先生に申請するように」
最後に金住先輩からイベントの話が出された。この間の話で聞いたのだが、時々学生向けの文学イベントの連絡が学校にやってくるそうで、今回のイベントもその一つなのだろう。
けれど、僕は彼女から最優先で取り組んでほしいと言われたものがある。
金住先輩の一言によって、一旦話し合いが終わった。金住先輩はちょっと席を外すと言って、行村先輩はちょっと用事があるから一旦部室を出ると言って部室を出て行った。
今この場には母野先輩と僕だけがいた。これは良いタイミングかもしれないと思って、母野先輩に気になっていたことを訊ねる事にした。
「そういえば母野先輩」
なに~、とのんびりとした口調で母野先輩は僕の呼びかけに返してきた。振り返ってきた時、彼女はおとなしめのウェーブのかかった髪を微かになびかせる。穏やかな性格な彼女にはとても似合う。
「その……文芸冊子に掲載している先輩の小説ってどんな内容なんですか?」
「ああ、そういえば神代くんにはまだどんな話か見せてなかったわね」
いつもやすみにしか見せていないから一応どんな内容なのか伝えているのを忘れていたわ、と付け加えられた。まあ、僕からも積極的にどんな内容か確認したいですという動きもなかったので忘れていても仕方ないかもしれない。
というか、
「……その口ぶりだと行村先輩もどんな内容か知らない……?」
「ええ。行村くんも詳しい内容は知らないわ。あの人、文芸冊子に出す本の感想文とか特定の物事に対する軽めの論文とかを書いている方に時間を割りたいみたいで」
毎月出す文芸冊子にそんな熱を持って制作に取り掛かっているのか……。僕とは見ている世界が全然違う、とそんな話を聞いただけで直観的に思った。
「まあ、どんな内容かは大まかには伝えているから話し合いには参加できているし、主導はやすみだからね……でも、神代くんに伝えてなかったのは素直に謝らなきゃ」
「ああ、いや。そこまでしなくてもいいですよ?」
そう? と母野先輩は眉を下げて心配そうな面持ちを見せる。彼女は穏やかな性格で、しっかりと配慮できる人なのだ。
「まあ、神代くんが大丈夫ならいいけれど……私が書いているのは二つ、あるの?」
「え?」
てっきり一つだと思っていた。母野先輩は僕の反応から察したようで、付け加えるように言った。
「確かに文芸冊子には二つ掲載しているけれど、片方は隔月……つまり二か月に一度しか掲載していないの。だからこそ私のペースで二つも同じところに掲載できているのだけどね」
「へえ……」
そして、彼女は続けてこの二つの小説の内容について話してくれた。毎月掲載している方の小説は高校生の探偵が事件の謎を解くミステリーもので、これが三か月分で一つの話になるように書いているらしい。
ちなみに今は第五話の中盤部分を次の文芸冊子に掲載するとのこと。ややこしい言い方になっているがなるべくわかりやすく言い直すと、第五部の第二話目ということだ。
「えっと……その小説、初めて掲載したのは去年の五月に?」
そうよ、と肯定の返事が返ってくる。
「私、去年の四月にやすみと一緒に入ったのよ。行村くんはそのちょっと後に入ったの」
去年は私たちが入るまでその年の三年生の先輩二人が文芸部をまわしていたみたい、と母野先輩は懐かしむ様につぶやく。
「確か、やすみがこんな小説を書いてみないか? って言われて書いた短編が今連載しているミステリーの原案だったのよね……」
「それ、金住先輩が原案者って事になるんじゃ」
確かに、彼女が原案者になるんだけどとちょっとはっきりとしない言い回しをしてから母野先輩はその理由を話す。
「やすみは自分はアイデアを出しただけだから原案のこととかはあまり掲載しなくていいし、それ以降は自分で考えてやってほしいって言ってたわ」
「……はあ」
やはり金住先輩は変わっているな、と思った。よく考えたらそれは出会ってからずっとだ。
「そういえば、」
「はい」
母野先輩は少し心配な面持ちを見せてくる。急な雰囲気の代わり方で内心驚きを隠せない。
「入部した日、神代くんはやすみに連れていかれていたけど、どんな話をしていたの?」
「あ……あの時の話ですか」
金住先輩があの二人のどちらかがこのことを話すまで自分から話さないようにって言われていたので、他の先輩方には言っていなかった話だ。
「たぶん、変なこと言われたんでしょう」
「ま、まあそんなところですね」
「具体的に、どんな内容だったの?」
やはり、ずっと気になっているようだ。僕だって一体二人で何の話をしていたかは気になるものだ。
なので、僕はあの時の話をすることにした。
「ちょっと、長くなるんですけどね……」
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