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咽び泣く
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◆◆◆◆◆
左衛門は散花を抱き寄せたまま、ゆっくりと菊乃の事を語り始めた。
「菊乃の実家は平家の落人という出自を誇りにしていたが、周りから見ればただの貧農だ。豪農と貧農では家格が違う。縁を結ぶことは、嫁ぎ先にとっては恥ずべきこと。その為に、菊乃は嫁ぎ先でひどい扱いを受けたそうだ。」
「そんな!姉さんは夫となる人に望まれて嫁いだ。持参金だって持っていったのに、どうしてひどい扱いを受けなあかんの?」
反論しようとした散花の唇に、若旦那の人差し指があてがわれる。思わず黙り込む散花は、左衛門の瞳を見つめた。
「私の話を聞いて欲しい。君にとっては辛い話だろうが、その持参金が仇になった。嫁ぎ先は『身一つで』嫁ぐようにと君の実家に伝えていた。だが、菊乃のご両親は見栄をはり、菊乃を着飾り持参金を持たせて嫁がせた。その持参金の出処が花嫁の弟を売って得たものと知った嫁ぎ先は、祝い事が穢れたと激怒したそうだ。」
「っ!」
散花は目を見開く。自分が売られたことが穢れとされた‥‥そう知ることは、散花にとって何よりも辛かった。
「望んで売られた訳じゃない。姉の祝言が穢れたのが私の責任だなんて‥‥あんまりや。そんなのは‥‥‥っ、」
再び左衛門の指先が散花の唇を閉じる。
「その通りだ。散花にはなんの責任もない。散花は皆を恨んでいいし、憎んでいい。世間を両親を、そして菊乃の事も」
散花の脳裏に家族の顔が浮かび上がっては消えて、最後に双子の姉の顔が浮かぶ。散花は再び涙を零す。
「菊乃は無事に嫁ぎはしたが、食事も満足に与えられなかったらしい。子を孕んでも待遇は変わらず流産してね。その内に夫に新しい女ができて子ができて‥‥菊乃は子を為せない事を理由に離縁された。後は転落の一途。実家に帰されるもそこに居場所はなく、果てには人買いに遊女として売られてしまった」
左衛門の指先が陰間の唇から離れると、散花は嗚咽を漏らして泣き出していた。若旦那は散花を抱き寄せたまま、言葉を続ける。
「菊乃はいつも弟の事を気にかけていた。自由を失った遊女の身では、君を探す事もままならなかった様だが。そして、私と出逢った菊乃は懇願した。弟を探し出して救ってくれるなら身請けを受けるとね。」
「姉さんが‥‥私を探していた?」
「君は菊乃に愛されていた」
「愛されて‥‥」
「そう、散花は愛されていたんだ」
「本当に?」
「私が君に嫉妬を覚えるほどに、双子の弟を愛して求めたいた。」
「姉さん‥‥‥‥」
左衛門の言葉に散花は言葉を震わせる。そして、若旦那に抱きつくと、散花は姉を想い左衛門の胸の中で咽び泣いた。
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左衛門は散花を抱き寄せたまま、ゆっくりと菊乃の事を語り始めた。
「菊乃の実家は平家の落人という出自を誇りにしていたが、周りから見ればただの貧農だ。豪農と貧農では家格が違う。縁を結ぶことは、嫁ぎ先にとっては恥ずべきこと。その為に、菊乃は嫁ぎ先でひどい扱いを受けたそうだ。」
「そんな!姉さんは夫となる人に望まれて嫁いだ。持参金だって持っていったのに、どうしてひどい扱いを受けなあかんの?」
反論しようとした散花の唇に、若旦那の人差し指があてがわれる。思わず黙り込む散花は、左衛門の瞳を見つめた。
「私の話を聞いて欲しい。君にとっては辛い話だろうが、その持参金が仇になった。嫁ぎ先は『身一つで』嫁ぐようにと君の実家に伝えていた。だが、菊乃のご両親は見栄をはり、菊乃を着飾り持参金を持たせて嫁がせた。その持参金の出処が花嫁の弟を売って得たものと知った嫁ぎ先は、祝い事が穢れたと激怒したそうだ。」
「っ!」
散花は目を見開く。自分が売られたことが穢れとされた‥‥そう知ることは、散花にとって何よりも辛かった。
「望んで売られた訳じゃない。姉の祝言が穢れたのが私の責任だなんて‥‥あんまりや。そんなのは‥‥‥っ、」
再び左衛門の指先が散花の唇を閉じる。
「その通りだ。散花にはなんの責任もない。散花は皆を恨んでいいし、憎んでいい。世間を両親を、そして菊乃の事も」
散花の脳裏に家族の顔が浮かび上がっては消えて、最後に双子の姉の顔が浮かぶ。散花は再び涙を零す。
「菊乃は無事に嫁ぎはしたが、食事も満足に与えられなかったらしい。子を孕んでも待遇は変わらず流産してね。その内に夫に新しい女ができて子ができて‥‥菊乃は子を為せない事を理由に離縁された。後は転落の一途。実家に帰されるもそこに居場所はなく、果てには人買いに遊女として売られてしまった」
左衛門の指先が陰間の唇から離れると、散花は嗚咽を漏らして泣き出していた。若旦那は散花を抱き寄せたまま、言葉を続ける。
「菊乃はいつも弟の事を気にかけていた。自由を失った遊女の身では、君を探す事もままならなかった様だが。そして、私と出逢った菊乃は懇願した。弟を探し出して救ってくれるなら身請けを受けるとね。」
「姉さんが‥‥私を探していた?」
「君は菊乃に愛されていた」
「愛されて‥‥」
「そう、散花は愛されていたんだ」
「本当に?」
「私が君に嫉妬を覚えるほどに、双子の弟を愛して求めたいた。」
「姉さん‥‥‥‥」
左衛門の言葉に散花は言葉を震わせる。そして、若旦那に抱きつくと、散花は姉を想い左衛門の胸の中で咽び泣いた。
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