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第18話 許してくれ
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◆◆◆◆◆
「ひぃ、ゆ、許してくれ!痛いっ」
佐々木に両腕を掴まれた八木が悲鳴を上げた。脇腹を刺された男は、床を血で濡らしながら引き摺られていく。
「五号監房‥処刑台。五号監房‥‥」
佐々木はブツブツと呟くだけで、八木の叫びを歯牙にもかけない。監房から引き摺り出された八木はそれでも叫ぶ事を止めなかった。
「俺が悪かった、か、金田さん!謝るから、許してくれ。謝るから」
名を呼ばれた金田だが、八木に視線を向ける事はなかった。返事をするつもりもないらしい。俺は八木の様子が気になり、廊下を引き摺られていく男に視線を向けた。
不意に八木と視線が絡む。
「秋山、なんとかしてくれ。俺は死にたくない。俺には家族がいる。こんなところで死ねない。ぐぁ、痛いっ!死ぬ。死にたくない。病院に連れて行ってくれたら、ここでの事は黙ってる。誰にも喋らないから。頼む!頼むから、救急車を呼んでくれ!秋山!頼む!」
「八木‥‥」
俺が返事に困り黙り込むと、金田が代わりに言葉を発する。
「秋山君を酷い目に遭わせたくせに、よく助けを求められるね?『俺には家族がいる』って、それ本気で言ってるの?人を使って調べさせたけど‥‥妻と子供にDVして離婚調停中だよね?生きて帰るより、ここで死ぬ方が家族の為だと思うよ、八木」
「家族にまで暴力を‥‥」
俺が思わず呟くと金田はゆっくりと頷いた。そして、静かに呟く。
「八木は昔と変らない。いじめっ子のまま大人になった。監獄に入れても暴力性はそのままで、秋山くんに酷いことをした。だから僕は決断したんだ。看守役として八木を処刑する。」
「‥‥‥。」
金田の強い意志に圧倒されて言葉が出てこない。俺が黙っていると金田は佐々木に視線を向けて命じる。
「佐々木、その男を連れて行け。」
「わかった」
「嫌だ!待ってくれ。痛いっ、引っ張るな。嫌だ、死にたくない‥死ぬのは‥‥‥助けてくれ、助けて‥‥‥」
八木が引き摺られていく。すぐに監房内からは見えなくなり、悲鳴だけが地下監獄に響いていた。
「顔色が悪いね、秋山君?」
声が震えそうで俺が黙っていると、金田が心配そうに顔を近づけてきた。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「そうだね。」
「‥‥本気で殺すつもりなのか?」
「もう答えは出たから」
「‥‥‥。」
俺が何を言っても金田の気持ちは変わらないだろう。それに‥‥俺自身がそれを望んでいる気もする。
八木は昔と変わらず怖かった。
あいつの前では俺は奴隷で『公衆便所』のままだった。怖くて‥‥消えて欲しいと望んだ。
それでも、手を汚したくない。
卑怯でもそれが本音。
「俺は‥‥手伝えない」
俺の言葉に金田は目を丸くした。ジロジロとこちらを見たあとに、ピエロ看守は薄っすらと笑う。
「手伝ってなんて頼まないよ。それより、秋山君は先にエレベーターで地上に上がっていてくれる?処理に時間が掛かりそうだから、先に寝てくれていいよ」
「わかった‥‥。」
八木が変わっていなかったように、俺も学生時代から変われていない。
流されるままに生きている。
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「ひぃ、ゆ、許してくれ!痛いっ」
佐々木に両腕を掴まれた八木が悲鳴を上げた。脇腹を刺された男は、床を血で濡らしながら引き摺られていく。
「五号監房‥処刑台。五号監房‥‥」
佐々木はブツブツと呟くだけで、八木の叫びを歯牙にもかけない。監房から引き摺り出された八木はそれでも叫ぶ事を止めなかった。
「俺が悪かった、か、金田さん!謝るから、許してくれ。謝るから」
名を呼ばれた金田だが、八木に視線を向ける事はなかった。返事をするつもりもないらしい。俺は八木の様子が気になり、廊下を引き摺られていく男に視線を向けた。
不意に八木と視線が絡む。
「秋山、なんとかしてくれ。俺は死にたくない。俺には家族がいる。こんなところで死ねない。ぐぁ、痛いっ!死ぬ。死にたくない。病院に連れて行ってくれたら、ここでの事は黙ってる。誰にも喋らないから。頼む!頼むから、救急車を呼んでくれ!秋山!頼む!」
「八木‥‥」
俺が返事に困り黙り込むと、金田が代わりに言葉を発する。
「秋山君を酷い目に遭わせたくせに、よく助けを求められるね?『俺には家族がいる』って、それ本気で言ってるの?人を使って調べさせたけど‥‥妻と子供にDVして離婚調停中だよね?生きて帰るより、ここで死ぬ方が家族の為だと思うよ、八木」
「家族にまで暴力を‥‥」
俺が思わず呟くと金田はゆっくりと頷いた。そして、静かに呟く。
「八木は昔と変らない。いじめっ子のまま大人になった。監獄に入れても暴力性はそのままで、秋山くんに酷いことをした。だから僕は決断したんだ。看守役として八木を処刑する。」
「‥‥‥。」
金田の強い意志に圧倒されて言葉が出てこない。俺が黙っていると金田は佐々木に視線を向けて命じる。
「佐々木、その男を連れて行け。」
「わかった」
「嫌だ!待ってくれ。痛いっ、引っ張るな。嫌だ、死にたくない‥死ぬのは‥‥‥助けてくれ、助けて‥‥‥」
八木が引き摺られていく。すぐに監房内からは見えなくなり、悲鳴だけが地下監獄に響いていた。
「顔色が悪いね、秋山君?」
声が震えそうで俺が黙っていると、金田が心配そうに顔を近づけてきた。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「そうだね。」
「‥‥本気で殺すつもりなのか?」
「もう答えは出たから」
「‥‥‥。」
俺が何を言っても金田の気持ちは変わらないだろう。それに‥‥俺自身がそれを望んでいる気もする。
八木は昔と変わらず怖かった。
あいつの前では俺は奴隷で『公衆便所』のままだった。怖くて‥‥消えて欲しいと望んだ。
それでも、手を汚したくない。
卑怯でもそれが本音。
「俺は‥‥手伝えない」
俺の言葉に金田は目を丸くした。ジロジロとこちらを見たあとに、ピエロ看守は薄っすらと笑う。
「手伝ってなんて頼まないよ。それより、秋山君は先にエレベーターで地上に上がっていてくれる?処理に時間が掛かりそうだから、先に寝てくれていいよ」
「わかった‥‥。」
八木が変わっていなかったように、俺も学生時代から変われていない。
流されるままに生きている。
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